2025.05.20 カテゴリー|その他の治療について
先日来た患者さんのお話です。
30代の男性
階段から転落して後頭部を7㎝くらい切って、某救急外来を受診して研修医に、止血のために無麻酔で電気メスで創内部をジュージュー焼かれ、そのまま無麻酔でステープラで縫合を受けたそうです。
処置に2時間以上かかり、その間地獄のような痛みだったそうです。
1週間後、創から膿が出るし微熱が続いているので当院を受診しました。
ステープラは2㎜間隔で刺さっており抜鉤に時間がかかりました。
ステープラを外すと創がぱっくりと開き、中から膿と焦げた壊死組織が大量に出てきました。
局所麻酔をかけ、膿と壊死組織を除去しました。
壊死組織を除くとまた出血してきましたが、皮膚をナイロン糸でしっかりと真皮ごと縫合することで止血できました。
患者さんがなぜこんな目に遭ったかというと、「頭部裂創は無麻酔でステープラ縫合するものだ」という決めつけが研修医の頭にあったからです。
頭部の皮膚は血流がいいので頭部裂創はすごく出血します。
でも皮膚をきちんと縫えば出血は止まります。
局所麻酔をしないから痛みで血圧が上がり余計止血できなくなった。
あんなに深い創がステープラ縫合でくっつくわけない。
あんなに細かくステープラを刺したら血流が悪くなって余計くっつかなくなる。
研修医には経験も知識も無いから知らないのは仕方ないですが、そこは上級医がフォローしてあげないと患者さんがかわいそうです。
一番問題なのは、自分が縫った創のその後を研修医がみられないことです。
自分が縫った創がこんなことになっていたら、そうとうショックを受けて勉強し直すと思うのですが、縫いっぱなしじゃわからない。
こういうことがあるので、救急外来で皮膚縫合してもらったときは、念のため早めに外科や整形外科のクリニックを受診しましょう。