2012.3.23 カテゴリー|トリガーポイント注射
80歳の元気なおじいちゃんが、3か月前にウォーキング中に急に左臀部が痛くなり、それ以後100mくらいしか歩けなくなりました。
某総合病院の整形外科を受診し、腰部脊柱管狭窄症の疑いがあるといわれ腰椎MRIをとりましたが、MRIでは何も異常がなかったそうです。(80歳で腰椎MRIで何も異常がないということ自体ものすごく稀なことですが。)
MRIで異常がないので、ただの筋肉痛だから、自然と治るのを待ちましょうと言われ、何も治療をしてもらえなかったそうです。
様子を見ていても、痛みが引かないので当院を受診しました。触診の結果、左臀部の中臀筋に圧痛のあるしこり(トリガーポイント)を認めました。
筋筋膜性疼痛症候群と診断し、トリガーポイント注射を行いました。
この患者さんの場合、もしMRIで腰部脊柱管狭窄の所見があったらきっと手術を勧められていたことでしょう。よけいな手術を受けないで済んだことは患者さんにとっては幸いでした。
筋肉痛だから何も治療をしないというのは、運動器疾患の専門家としてどうかと思われるかもしれませんが、このことでこの整形外科医を責めることはできません。
なぜなら、ほとんどの整形外科医が筋肉痛の治療方法を知らないからです。
私自身も加茂淳先生の著書「腰痛はトリガーポイントブロックで治る」を読むまで、筋肉痛について何も知りませんでした。
今の整形外科の研修は、画像診断と画像診断で分かった構造的異常を手術で治すことに重きを置いていて、筋肉痛などのありふれた疾患については何も教えてくれません。
というか、研修医を教えている指導医自体が、慢性の筋肉痛の治療について何も知らないのです。
筋肉に出来たトリガーポイントが原因で、痛みやしびれなどの症状が出る筋筋膜性疼痛症候群という病気があること、整形外科を受診する患者さんの多くが実は筋筋膜性疼痛症候群であることを、ほとんどの整形外科医は知らないのです。