2016.11.01 カテゴリー|湿潤療法
30代の男性
東北地方の山奥で渓流釣りをしていて転倒し、右中指のPIP関節を開放性脱臼しました。開放性脱臼とは、関節が外れて、関節の骨が皮膚を突き破って外に飛び出している状態です。近くの病院に救急搬送され、靱帯再建術(?)と創外固定術を受けました。40日後に創外固定を外して退院しましたが、PIP関節が90度の状態で動かなくなっていました。
リハビリ目的で、現住所の近くの総合病院の整形外科に紹介されましたが、「リハビリでは動くようにはならない」と説明を受け、腱剥離術を受けました。その後、手術部の皮膚が壊死してきたため、再手術(植皮術?)が必要だと説明されたため、ネットで調べて練馬光が丘病院の夏井先生の外来を受診しました。「湿潤療法で治るでしょう。」と説明され、プラスモイストを患部に当ててもらい、自宅に近い当院に紹介されました。
初診時の画像です。
創の中央部に白色壊死を認め、その周囲の皮膚はただれてびらんになっていました。創周囲のただれは、消毒薬による接触性皮膚炎と診断し、マイザー軟膏を塗布してプラスモイストで指全体を覆いました。
4日後の画像です。
周囲のびらんは改善しました。抜糸をして白色壊死を溶かすために被覆材をハイドロコロイドにへんこうしました。
初診時より2週間後の画像です。
白色壊死は溶けて無くなり、屈筋腱が見える状態になりましたが、このままハイドロコロイドによる湿潤療法を続けました。また、同時にハンドインキュベータによる可動域訓練も開始しました。
初診時より4週間後の画像です。
初診時より7週間後の画像です。
初診時より10週間後の画像です。
屈筋腱も隠れて、上皮化したので湿潤療法を終りにしました。
現在もハンドインキュベーターでリハビリ中です。30度くらいは動くようになりましたが、元通りに戻るのは難しいと思われます。PIP関節の周囲は腱や靱帯が複雑かつ繊細に絡み合った構造をしているので、一度壊してしまうと元通りに戻すのはなかなか難しい場所なのです。
ハンドインキュベーターとは手のリハビリ用の機械です。空気圧をかけて、手の浮腫をとりながら自動運動をしてもらうので、外傷後の可動域制限の改善や、CRPSによる痛みや浮腫に非常に有効です。
ハンドインキュベーター
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