2014.1.26 カテゴリー|骨折・捻挫の治療
肘内障とは、幼稚園程度の年齢の子どもによく起こりますが、手を強く引っ張られたときに、腕がだらっとして、まるで「ひじが抜けた」状態になることをいいます。これは脱臼ではなく、ひじの関節の細い輪状の靭帯がずれた状態です。骨と骨とを輪のようにつないでいる靭帯が未発達なために起こるもので、靭帯が十分に発達する7才以降にはほとんど見られません。
8歳の男の子がサッカー中に転倒して左手をついてから左肘が痛くて動かなくなったと受診しました。一緒についてきたお母さんは「6歳ごろまでは何度も肘が抜けているので、また肘が抜けたのではないか?」と心配していました。しかし、8歳になると靭帯が十分発達するので肘内障になることはめったにありません。受傷した時の様子などから、肘の骨折の可能性も高かったので、念のためにレントゲンを撮りましたが骨折は認めませんでした。ではやはり肘内障なのだろうと診断し、肘内障の整復動作をするとポキッという音とともに靭帯が整復され痛みも消えました。
肘内障の整復法 手のひらを上に向けて肘を伸ばした状態で肘の内側の橈骨頭の部分を親指で押さえながら、肘をゆっくりと深く曲げて、手首を内側にひねるとポキッと音がして靭帯が整復されます。中には、何度整復操作をしても整復されない場合があります。その場合は1日だけ上腕から前腕までシーネ固定をすると、その間に自然と整復されます。
整形外科医になって20年、肘内障の子供をたくさん整復してきましたが、8歳の子の肘内障を整復したのは初めてでした。体の成長は人それぞれなので、頭から決めつけないで柔軟に対応しなければいけないなぁとあらためて思いました。
ちなみに肘内障を整復すると今まで痛がっていた子供が一瞬で痛みが消えて笑顔になるので、ご両親にとても感謝されます。整形外科医としての幸せを感じる瞬間ですね。