2014.10.07 カテゴリー|湿潤療法
30代の女性
お湯を左下肢にこぼしてしまいヤケドしました。某総合病院皮膚科を受診し、ヤケドをお風呂で赤ちゃん用石鹸で洗ってからアズノール軟膏をぬるように指示されました。お風呂で石鹸でヤケドを洗うときも、アズノール軟膏をぬった後も、ものすごく痛むので、ネットで調べて、受傷から5日後に当院を受診しました。
受診時の状態です。
太ももから下腿にかけて、水疱を伴う2度の熱傷を認めました。
水疱を除去して、穴あきポリ袋とペットシートで覆いました。痛みを我慢してまでお風呂に入る必要も創を洗う必要もないことを教え、1日1回ヤケドのまわりの皮膚を赤ちゃんのおしりふきでふいて、穴あきポリ袋とペットシートを交換してもらうだけで大丈夫だと伝えました。
処置のやり方を変えたとたんに痛みはなくなりました。
3日に1度くらい通院してもらい、浸出液の量が減ることにあわせて、穴あきポリ袋→プラスモイスト→ハイドロコイドと創傷被覆材を変更していきました。
初診から11日後の状態です。
皮膚がきれいに再生されました。
痛みを我慢させてまでヤケドの創を石鹸で洗わせる理由はなんでしょう?
石鹸は界面活性剤の仲間です。界面活性剤には本来混ざり合わない水と油を混ぜ合わせて汚れを落とす作用があります。つまり、普段の手洗いなどで石鹸を使用するのは、手についた油汚れを落とすためです。
ヤケドの創の表面は油で汚れているでしょうか、いえ汚れていません。だから、ヤケドの創を石鹸で洗ってもただ痛いだけで意味がないのです。
界面活性剤には、強力な組織傷害性があります。石鹸でヤケドの創を洗うと創の表面の細胞が殺されてしまいます。だからすごく痛いのです。
しかし、ヤケドの創の表面にいる細菌には細胞壁があるので、界面活性剤を浴びても死にません。つまり石鹸で創を洗っても細菌を殺して感染を予防する効果はないのです。
私には、痛みを我慢させてまでヤケドの創を石鹸で洗わせる理由が全然わかりません。