我慢をすると痛みはひどくなる!
2016.11.07 カテゴリー|トリガーポイント注射
「痛み止めはなるべく使わないほうがいいので、我慢できなくなってから使ったほうがいい」
「痛み止めは痛みを止めているだけなので、治療にはならない」
と思い込んでいる方が今でもたくさんいるようです。しかしこれらが完全に誤った迷信であることが、近年の医学研究でわかってきました。
痛みを我慢すればするほど、痛みはひどくなります。痛みとは体に異常があることを脳に知らせるためのサイレンです。痛みを我慢するということは、このサイレンを無視していることと同じことです。サイレンを無視された体は、交感神経を介してさらに痛みをひどくすることで、もっと大きなサイレンを脳に送ります。こうして我慢すれば我慢するほど痛みがひどくなる悪循環に陥ります。
痛みの情報は皮膚や筋肉にあるセンサーで感知されて電気信号として脳に送られますが、ある値より小さい痛みは痛みとして認識されません。この値を閾値(しきいち)といいます。痛みは発生後に時間とともに強くなっていきます。そして閾値を超えたときに初めて痛みとして認識されます。この時点で痛み止めの治療をすれば、痛みはすぐに閾値より下になるので、速やかに痛みが消えます。しかし、限界まで我慢した時点で痛みを治療した場合は、痛みは閾値より下にならないので痛みは消えません。そのため痛みの悪循環が止まらず痛みはさらにひどくなります。だから我慢した後では痛み止めが効かないのです。
痛みの原因は2種類に分けられます。ひとつは、切り傷や火傷、骨折や捻挫、あるいは癌や化膿など、体の組織の損傷に伴う痛みです。もうひとつは腰痛や肩こり、40肩、坐骨神経痛など体の損傷を伴わない痛みです。体の損傷を伴わない痛みの原因は筋肉の部分的な痙攣(トリガーポイント)です。
ストレスにより心の緊張状態が続くと、交感神経の働きが過剰になり、筋肉が痙攣して痛みが発生します。痛みが発生すると痛みに対する不安がストレスになり、さらに交感神経の働きが過剰になり筋肉をもっと痙攣させ痛みをひどくさせます。これが痛みの悪循環です。
なるべく早い時期に、痛み止めの治療を徹底的に行い、一時的にでも痛みを消してしまうことでこの悪循環が止まり痛みから解放することが出来ます。治療としては、痛み止めの薬や筋肉の痙攣をとめる薬の内服、筋肉の痙攣を止める注射(トリガーポイント注射)や関節内注射などがあげられます。特にトリガーポイント注射は速効性があり、有効性が高く、健康保険で週3回まで行うことが出来るのでお勧めです。これらの治療でよくならない場合、交感神経の働きを抑える目的で、抗うつ薬や抗てんかん薬を使用するときもあります。
高血圧のお薬(降圧薬)は血圧を下げているだけで、高血圧の原因を治しているわけではありません。糖尿病のお薬も血糖値を下げているだけで、糖尿病の原因を治しているわけではありません。だから基本的に死ぬまで飲まなければいけません。
でも痛み止めの薬は、痛みの原因である筋肉の部分的な痙攣(トリガーポイント)を治すことが出来ます。だから痛みがなくなったら飲まなくてもいいのです。
少し難しい話になってしまいましたが、要するに「痛みは我慢せず、すぐに薬や注射で治療したほうが早く治る」ということです。