2019.2.26 カテゴリー|医療に関する迷信
民放の健康番組は嘘ばっかりなのでほとんど見ませんが、昨日リビングのソファーでスマホをいじりながら、何となくテレビをかけていたら、これまた嘘ばかりの健康番組をやっていてました。
「名医のTHE太鼓判」https://www.tbs.co.jp/the-taikoban/archive/
番組に出ていた客員教授という先生が、「足の冷えはおしりのコリからきている」といっていました。
「おしりにある梨状筋が凝るとその隣にある坐骨神経が圧迫されて下肢の血流が悪くなり足が冷える」というのです。
つっこみ① 筋肉が凝ったくらいで神経が圧迫されることはないよ!筋肉がどんなに凝っても骨や靱帯みたいに固くなることはないから神経を圧迫することはありえません。本当に神経が圧迫されているなら、手根管症候群のように知覚障害や運動麻痺がおこるはずです。
つっこみ② 坐骨神経が圧迫されると下肢の血流が悪くなるという生理現象は存在しません。神経には2種類あります。脳の命令を筋肉に伝えたり痛みなどの情報を脳に伝える体性神経と、内臓や血管の働きを自動調節している自律神経です。坐骨神経は体性神経です。自律神経じゃないのでいくら圧迫されても足の血流障害をおこすことはありません。
番組でも、坐骨神経が圧迫されると下肢の血流が悪くなる理由については全く説明してませんでした。
それで、足の冷えを治すための治療として梨状筋をソフトボールでマッサージすることを勧めていました。
「あれれれ、それってトリガーポイントマッサージじゃないの?」
梨状筋じゃなくて小殿筋にトリガーポイントが出来ると下肢がしびれます。(なせそうなるかはわかっていません。)おしりをマッサージしたら小殿筋のトリガーポイントが良くなって、足のしびれが改善して冷えが良くなったように感じるのでしょう。
それにしても「足の冷えはおしりのコリからきている」は言い過ぎだよね。
足の冷えは、タバコによる動脈硬化や、糖尿病による末梢循環障害、運動不足による筋力低下、自律神経失調などいろんな理由でおこるのに、全部おしりのコリのせいにしちゃダメでしょ。
「足に冷えはおしりのコリが原因の場合があるかもしれない」くらいが医学的に正確な表現でしょう。
民放の健康番組は全部こんな感じです。嘘ばかりで馬鹿らしくて見てられません。
2019.2.22 カテゴリー|湿潤療法
50代の男性
ティファールの電気ケトルの電気コードが足に引っかかって、電気ケトルがひっくり返って熱湯が左上肢にかかってやけどをした患者さんです。
受傷当日は某病院の救急外来を受診して軟膏による処置を受け、翌日当院を受診しました。
左上腕の半分と左肘から手首の大部分に水疱が出来ていました。
水疱膜を可及的に除去して穴あきポリ袋とペットシートによる治療を開始しました。
初診時(水疱膜除去後)
治療3日後
治療10日後
治療17日後
無事に上皮化しました。
しばらくは乾燥を防ぐためにワセリンを塗ってもらうように指導して治療を終了しました。
ティファールの電気ケトルは非常に危険です。
日本製の電気ポットと違って、電気コードが本体から外れない構造になっているので、電気コードを引っ張ると本体がひっくり返って熱湯が飛び出してきます。
そもそもケトル(kettle)を日本語に訳すとヤカンです。
ヤカンが危険なものであることは小学生でも知ってます。
かっこつけて電気ケトルなんて呼ばずに、電気ヤカンと呼ぶようにすればみんなもう少し危険性に気づいてくれるかもです。
2019.2.21 カテゴリー|その他の治療について
昨日、ライオンズクラブの例会で急遽インフルエンザの予防法について聞かれて、そのときにアドリブで話した内容を書きたいと思います。
インフルエンザの予防と言えばワクチンです。でも今年はあまり効いてないようです。
ワクチンはその年にはやるであろうインフルエンザウイルスのタイプを予測して作られますが、今年はワクチンを打った人も軒並みインフルエンザにかかっているのでおそらく予測が外れたのだろうと思います。
ちなみに、私はインフルエンザにかかったことが一度もありません。
娘たちの誰かがインフルエンザにかかっても、家庭内で感染が広がることもありません。
それはインフルエンザを予防するコツを知っているからです。
インフルエンザは空気中に漂っているウイルスを吸い込むことによって感染すると思っている人が多いと思いますが、そんなことはありません。
ほとんどは接触感染でうつります。
インフルエンザ患者さんが咳をしたりくしゃみをしたりして飛び散った唾や鼻水がテーブルや椅子などにくっつきます。
その唾や鼻水にはインフルエンザウイルスがくっついているので、それを触ることで指先にインフルエンザウイルスがくっつきます。
その指で目や鼻の穴や口の中の粘膜を触るとそこからウイルスが侵入してインフルエンザウイルスに感染してしまいます。
なので感染予防には、目や鼻や口などの粘膜をなるべく触らないことが一番大事です。
指先についているウイルスは水やお湯で手洗いすればすぐに落ちます。薬用石ケンや消毒薬を使う必要はありません。
マスク自体にインフルエンザウイルスの侵入を防御する効果はありません。
しかし、マスクをすることで不用意に口や鼻を触ることが減るのでそういう意味では予防効果があるでしょう。
喉が乾燥すると免疫力が落ちてウイルス感染をおこしやすくなるので、部屋の中を加湿することが大切です。マスクをしていると吸気が加湿されるので、パーソナルな加湿器としての効果はあると思います。
家庭内での感染を予防するには、タオルやコップなど唾や鼻水がつくものを共用しないことが重要です。
うがいはほとんど効果がありません。粘膜についたウイルスは数秒で粘膜内に入ってしまうからです。5秒に1回くらいうがいをするなら効果あるかもしれませんが(笑)。
ここで、「テレビで緑茶や紅茶を飲むとインフルエンザの予防が出来ると言っていたが本当か?」という質問を受けました。
お茶に含まれるカテキンやビタミンCがインフルエンザを予防するということなのでしょうが、そんなに効果があるなら予防薬として健康保険が使える製剤になっているはずです。なのでそれは嘘です。
そもそも、テレビでやっている医療情報の9割は嘘です。あてになるのはNHKの「今日の健康」と「ドクターG」くらいです。
特に民放の健康番組でやっている内容はほとんど嘘です。だいたいテレビに出ている医者は暇だからテレビに出てられるのであって、まともな医者じゃありません。テレビ局の要望通りのコメントをいうタレント医者なので信じちゃいけません。
アドリブにしてはなかなかうまくしゃべれました。
2019.2.18 カテゴリー|骨折・捻挫の治療
6歳の女の子
遊具から落ちて受傷して、すぐに当院を受診しました。
初診時の右肘のレントゲン(正面像)
初診時の右肘のレントゲン(側面像)
肘関節の少し上(上腕骨顆上部)で骨折していて、後ろ側と内側にずれています。
「肘の骨が折れていてずれています。このままだと曲がってくっついちゃって支障を残すので、局所麻酔をかけてから整復します。うまく整復できないときや、整復してもすぐにずれてしまうときは手術が必要なので、そのときは県立中央病院に紹介します。」と説明しました。
血腫内麻酔をしてから、テレビレントゲンをみながら骨折を整復しました。肘を深く曲げるといい位置に整復できたのでそのままシーネで固定しました。
子供の肘の骨折の合併症に、フォルクマン阻血性拘縮があります。
フォルクマン阻血性拘縮とは、骨折部から出た出血が前腕の筋肉の中に溜まって、筋肉の血の巡りが悪くなり筋肉が壊死してしまう恐ろしい合併症です。
フォルクマン阻血性拘縮のなり始めには前腕の筋肉にものすごい痛みが出ます。
なので、「後から、痛み止めを飲んでも大泣きするぐらい痛がったら救急車を呼んでください。」と説明しました。
幸い、痛みが出ることもなく、再転位することもなく順調に経過しました。
4週間後のレントゲンです。正常な位置でくっつきました。肘の動きもほとんど問題ありません。
上腕骨顆上骨折は少し曲がってくっついただけでも、深刻な変形と後遺症を残すことがあるので、うまく治せて良かったです。
2019.2.13 カテゴリー|その他の治療について
整形外科の手術にはいろいろあります。
やんないほうがいい手術もやったほうがいい手術もあります。
腰痛の手術は基本的にやらないほうがいいです。(骨折や腫瘍や感染は除きます。)
一般的に腰痛の原因は骨の変形や椎間板ヘルニアが神経を圧迫しているから痛いと説明されていますが、その考えが間違っているからです。
だから、腰の手術を受けた直後はプラセボ効果でしばらく痛みが取れてもまたしばらくいすると痛くなってしまう人がたくさんいるのです。
中には手術をした後で余計に痛くなってしまった人もけっこういますね。
腰痛の原因は腰の周りの筋肉の痛みなので手術などしないでトリガーポイント注射やサインバルタの内服などで根気よく治療した方が結果的には良くなります。
やったほうがいい手術は、変形性膝関節症や変形性股関節症に対する人工膝関節置換術や人工股関節置換術です。
一般的に変形性膝関節症や変形性股関節症は、軟骨が減って変形した骨がぶつかるから痛いと説明されていますがその考えは間違いです。
膝や股関節の痛みも関節周囲の筋肉の痛みが原因です。
しかし、腰と違って、変形した関節を手術でもとの形にもどすことで筋肉にかかる負荷が減って、筋肉の痛みが取れるのです。
人工関節手術の成功率は十年前よりはるかに良くなっています。
それは医師の技術が進歩したからではなく科学技術が進歩したからです。
人工関節置換術は、変形した骨を切除して機械の関節を入れる手術です。
昔は、骨を切除する範囲も、人工関節を設置する場所も医師の経験とカンで行っていましたから、医師の腕の違いで手術成績にばらつきがありました。
しかし今は、科学技術の進歩でナビゲーションシステムが導入され、ある程度の経験がある医師なら正しい位置に人工関節を設置することが可能になりました。
また、人工関節そのものの素材や形状も進化したため、昔は10年で壊れるいわれた人工関節が30年以上もつようになりました。
電話が黒電話からスマートフォンに著しく進化したように、人工関節も著しく進化しているのです。
30年もつのだから、70歳で手術しても100歳までもちます。
80歳以上になって体力が低下してからではリハビリが大変なので、まだ体力がある70代くらいが手術のベストタイミングです。
「人工関節手術をいつやるの?今でしょ!」です。
もちろん私はもう手術をしてませんので、人工関節をしたほうがよい患者さんは、茨城県立中央病院の林宏先生など信用できる先生に紹介しています。