2013.11.21 カテゴリー|骨折・捻挫の治療
先月、川崎市在住の48歳の男性から、鎖骨遠位端骨折に対する治療についてのお問い合わせのメールが来ました。
西堀先生 はじめまして〇〇ともうします。先生の鎖骨の遠位の保存法の治療を受けたいとおもってのメールです。2年前に引き続き自転車転倒にて先週の土曜日に左肩の鎖骨の遠位を骨折しました。川崎市に在住ですが、S医大病院/新T病院ともに有無を言わず手術〜プレート治療を進められました。web検索していて先生の論文を見つけた次第です。現在は先生はどちらで治療されていらっしゃいますか?僕の場合も治療可能でしょうか?
それに対する私の返事
お問い合わせありがとうございます。レントゲンを見る限りでは鎖骨バンドと弾性包帯で治療できると思います。しかし、受傷から2週間以上経過していると、くっつかない可能性があります。また、最初の4週間は1週間に1回の通院が必要です。それが可能なら受診してください。
翌日、川崎から電車を2時間半乗り継いで当院を受診しました。
受診時のレントゲンです。
鎖骨の方に近いほう(鎖骨遠位端)が、バラバラに折れてずれています。
このタイプの骨折は、鎖骨の中心に近い部分は筋肉の力で上に跳ね上げられ、中心から遠い部分は腕の重さで下に引き下げられるので、手術で固定しないとくっつかないと言われています。だから、この患者さんも二つの病院で手術が勧められたのです。
で、10年以上前に、当時私の上司だった保原中央病院の佐藤伸一先生が、「だったら、骨が跳ね上がらないように上から圧迫したらいいんじゃね。」と考えて、考案したのが、通常の鎖骨骨折で使用される鎖骨バンドをしめて、肩を引き上げて、鎖骨バンドの下に弾性包帯を挿入して鎖骨を上から圧迫する方法です。
鎖骨ベルトと弾性包帯を着けて整復した後の写真です。
跳ね上がっていた骨が下に押し下げれれて、本来の位置に戻っています。
4週間後、弾性包帯を引き抜いた状態でレントゲンを撮っても、骨が跳ね上がらなかったので、弾性包帯を外しました。
5週間後、鎖骨バンドを外した状態でレントゲンを撮っても、骨が跳ね上がらなかったので、入浴時のみ鎖骨バンドを外してもいいことにしました。
6週間後のレントゲンです。
薄っすらとですが、新しい骨が出来て骨癒合が認められたので、鎖骨バンドを外しました。
わざわざ遠くから治療に通ってもらったので、うまく治せてホッとしました。
ちなみに、患者さんが見つけた僕の論文がこれです。
鎖骨骨折の治療 鎖骨遠位端骨折type IIに対する新しい保存療法