2012.4.02 カテゴリー|糖質制限
今日は、高尾病院理事長 江部康二先生の著書「主食をやめると健康になる 糖質制限で体質が変わる!」をもとに、糖尿病治療やダイエットに効果をあげている糖質制限食について紹介いたします。
現在、糖尿病専門医の間では、食後高血糖が大きな問題として注目されています。従来は空腹時血糖をコントロールしてきたのですが、それだけでは不十分で、食後血糖をできるだけ低く抑えることが大切だというのです。その理由は、食後高血糖が心筋梗塞や脳梗塞などの合併症を引き起こす危険因子として確立されたからです。
ところが、日本で常識とされている糖尿病の食事療法は、こうした実態に応えられるものになっていません。カロリー制限を重視した炭水化物(糖質)中心の糖尿病食というのは、血糖値をおさえるどころか、むしろ上昇させてしまうからです。
米国糖尿病協会によれば、食べ物が消化・吸収されたあと、脂質とたんぱく質は血糖に変わりませんが、糖質は100%血糖に変わります。また糖質は、摂取後から血糖値を急上昇させて、2時間以内にほとんどすべてが体内に吸収されてしまいます。これらは食べ物に含まれるカロリーとは無関係の生理学的な特質です。
このように、糖質・脂質・たんぱく質の3大栄養素のうち、血糖値を上げるのは糖質だけなのです。
糖質を摂ると、血液中のブドウ糖(血糖)をエネルギーに変えようとして、インスリンが大量に追加分泌されます。インスリンは生きていくのに欠かせない大切なものですが、別名「肥満ホルモン」と呼ばれるように、多く出すぎると体に悪い影響を与えてしまいます。
そして実は、正常な人においても、この糖質の摂取がもたらす食後血糖上昇とインスリン大量追加分泌の繰り返しが、糖尿病・肥満・メタボ、さらには様々な生活習慣病の根本的原因になっている可能性が高いのです。
糖質制限食の基本的な考え方は、このような生理学的な特質をもとに、出来るだけ糖質の摂取をおさえて、食後血糖上昇とインスリンの過剰分泌を防ぐというものです。
簡単にいえば、主食を抜いておかずばかり食べるというイメージになります。抜く必要がある主食とは、米飯・パン・めん類などの米・麦製品や、ジャガイモ・サツマイモ・里イモなどのイモ類など、糖質が主成分のものです。もちろん糖質制限ですから、甘いお菓子やジュースもNGです。それさえ注意すれば、肉や魚はお腹いっぱい食べられます。焼酎やウイスキーなどの蒸留酒なら、お酒を飲んでも構いません。
糖質制限食には3つのやり方があります。1つめは「スーパー糖質制限食」で、朝・昼・夜とも主食なしです。2つめは「スタンダード糖質制限食」で、1日3食のうち1回だけは主食を摂り、残りの2回については主食を抜きます。3つめの「プチ糖質制限食」は、夕食だけ糖質の多い食品を避けます。一番のお勧めは効果抜群の「スーパー糖質制限食」ですが、病気や症状によって使い分けるのが望ましいです。
ものは試しと、私(院長)もスーパー糖質制限食を始めてみました。結果、2ヶ月で体重が4kg、腹囲が3cm減りました。中性脂肪やLDLコレステロール、γ-GTPや尿酸値、ヘモグロビンA1Cなどのメタボリックシンドロームで上昇する血液データも(もともと正常値でしたが)すべて下がりました。
私にとって最もうれしい効果は、機能性低血糖をおこさなくなったことです。機能性低血糖とは、食事により急上昇した血糖値が、急降下することにより、相対的に低血糖状態になり、強い空腹感とイライラ感、冷汗、めまいなどの症状が出現することです。糖質制限を始める前は、10時半ごろや4時ごろに機能性低血糖をおこして、慌ててジュースやお菓子を摂取したりしていました。
糖質制限食をはじめる場合にいくつか注意点があります。今まで普通に食事をしていた人がいきなりスーパー糖質制限食を始めると、体調を崩す可能性がありますので、プチから始めて慣れたらスタンダード→スーパーと上げていったほうがいいでしょう。糖尿病で血糖値を下げる薬を飲んでいる方は、糖質制限で低血糖発作を起こす危険性があるので、必ず主治医と相談してから始めてください。また、痩せすぎの方が糖質制限をすると体重が増えることがあります。