2016.7.20 カテゴリー|トリガーポイント注射
50代の男性
畑仕事をした翌日から、左殿部から下肢の痛みとしびれと左足首の脱力感が出現しました。
5日後に8年前に腰椎椎間板ヘルニアの手術を受けた○○整形外科を受診。腰部脊柱管狭窄症と診断されリリカが処方されました。また左足首の筋力低下(運動麻痺)に対して、ステロイドが処方されました。
痛みが取れないため、2日後に別の医療機関を受診してトリガーポイント注射を受けましたが、説明も効果もいまいちだったので、その次の日に当院を受診しました。
当院受診時、左殿部と左下腿全面に強い痛みとしびれを認めました。またドロップフット(左足首に力が入らず、つま先を上に上げられない状態)を認めました。
下図の部位にトリガーポイントを認めました。
ドロップフットは下腿の前面(前脛骨筋)に出来たトリガーポイントが原因であると診断しました。
トリガーポイントが出来ると力を入れるたびに激痛が走るため、脳が勝手に力を入れないように命令するのです。
前医から処方されていたステロイドはトリガーポイントが原因のドロップフットには効果がないので、5日間かけて漸減して中止しました。
トリガーポイント注射を行ったら、左殿部痛は1回で完全に良くなりました。
こうなるとしめたもので、患者さんは私を全面的に信頼してくれますから、その後の治療は非常にうまくいきます。
最初の1ヶ月は週2回、その後は週1回、左下腿にトリガーポイント注射を行いました。
左下腿前面の痛みやしびれは徐々に改善していき、ドロップフットも2ヶ月後には治りました。
腰部脊柱管狭窄症で神経が圧迫されてドロップフットが起きることもあるかもしれませんが、その場合は、運動麻痺だけで痛みが出ることはありません。
たとえば、意識障害や泥酔などで、膝の外側にある腓骨神経を長時間圧迫していると、腓骨神経麻痺によるドロップフットが発生しますが、運動麻痺とと知覚低下だけで、痛みは出ません。
運動麻痺をしているということは脳から送られる電気信号を筋肉にうまく伝えられない状態であり、痛みとは痛みの電気信号を過剰に脳に伝えている状態です。神経生理学的に全く逆の現象が同時に起こるはずがありません。だから運動麻痺と痛みは同時に発生しないのです。