椎間板ヘルニアは腰痛の原因ではない
2016.10.03 カテゴリー|トリガーポイント注射
腰の骨の間に椎間板という軟骨があります。椎間板はわかりやすくいうとクッションです。そのクッションの中身(髄核)がはみ出てきて、神経を圧迫して腰痛や下肢痛を起こす病気が椎間板ヘルニアです。そこでそのはみ出た髄核を手術で取り除く治療などが行われてきました。しかし、この診断と治療にはいくつもの矛盾点があります。
髄核が神経を圧迫しているのが原因ならば、手術をして髄核を取り除かない限り痛みが取れないはずです。ところが実際は椎間板ヘルニア患者のほとんどの人が手術をしなくても痛みがよくなります。逆に手術をして髄核をきれいに取り除いても痛みが取れない人もいます。
大規模な臨床試験でも手術した人としなかった人で半年後に痛みが残っている確率は同じでした。
またMRIの普及により椎間板ヘルニアがあるのに痛みがない人がたくさんいることがわかりました。別の臨床試験では、腰痛や下肢痛がある人と、何も症状がない人のMRIを比べたところ、腰椎椎間板ヘルニアがある確率は同じであることがわかりました。つまり、腰痛や下肢痛の有無と椎間板ヘルニアの有無には、相関関係が全くないということです。
神経生理学的にも矛盾があります。例えば指を包丁で切ってしまったとき、指の皮膚にある痛みを感じるセンサーが電気信号を発します。その電気信号が神経を伝わり脳に送られ、脳は指を切って痛みが発生したことを認識します。神経とはセンサーの電気信号を脳に伝える電線なのです。神経は電線であって、センサーではないので髄核が神経を圧迫しても痛みの電気信号は発生しません。
つまり、椎間板ヘルニアがあって神経を圧迫しても痛みは発生しないはずなのです。
では、腰痛や下肢痛の原因は何でしょうか?それはずばり、トリガーポイントです。転倒や事故、繰り返し同じ動作をする、などで筋肉に負担をかけると筋肉の一部が痙攣してトリガーポイントが出来ます。
トリガーポイントが出来ると筋肉内にある痛みのセンサーが電気信号を発して、脳に痛みの情報を伝えます。脳が痛みを感じると不安になるため、交感神経が興奮して筋肉の痙攣をよりひどくします。こうして痛みがどんどんひどくなっているのです。これを「痛みの悪循環」といいます。
こんな時に医師から「椎間板ヘルニアによる痛みです。手術したほうがいいです。」などと言われたらどうでしょう?余計に不安になり、痛みも余計にひどくなってしまうでしょう。
逆に「この痛みは筋肉の痙攣が原因なので、治療すれば数日でよくなります。」といわれたら、それだけで安心して、痛みが改善します。
腰痛は椎間板ヘルニアなどの構造的な異常から原因ではなく、筋肉の機能的な異常から発生しているのです。
筋肉の痙攣による痛みに対して、最も有効なのがトリガーポイント注射です。トリガーポイント注射は注射で痙攣している筋肉に直接局所麻酔薬を打つ方法です。この注射をすると筋肉の痙攣が鎮まり痛みが軽減します。局所麻酔を筋肉内に打つだけなので非常に安全ですし、何度でも行えます。
慢性的な痛みで普通の痛み止めが効かない場合は、抗うつ薬や抗てんかん薬を飲むことで、脳のストレスや不安を軽減し自律神経の異常を改善させ痛みを楽に出来ます。
椎間板ヘルニアは手術でもよくなりますが、実はこれは手術時に行った全身麻酔で筋肉の痙攣が消失したことでよくなるのではないかと考えられます。
また加圧トレーニングには自律神経の調子を整える効果、ストレスを軽減する効果、筋肉の血流を改善する効果があるのでトリガーポイントによる痛みにも非常に有効です。