HOME > 院長BLOG > 2017年7月

院長BLOG

上腕骨外科頚骨折~こんなにずれていてもくっつくもんだなぁ~

2017.7.28 カテゴリー|骨折・捻挫の治療

 80代の女性

 認知症があり施設に入所中

 椅子から転落して受傷しました。

 初診時のレントゲンで左上腕骨外科頚骨折を認めました。

16416a.jpg

 転位も軽かったので、手つり固定だけで保存的に治療することにしました。

 しかし、認知症があるため、手つり固定はすぐに外してしまったようです。

 2週間後のレントゲンで骨折は大きく転位してしまいました。

16416b.jpg

 ここまでずれちゃうと普通はもうくっつかないので、手術の適応ですが、以下のように家族に説明して納得してもらいました。

 「ここまでずれちゃうと骨はくっつかないので普通は手術が必要です。しかし、高齢だし、認知症があるので手術は危険です。骨がくっつかないと腕は上がらなくなりますが、時間が経てば折れた骨の角が丸くなって痛みは無くなります。なのでこのまま様子をみましょう。」

 さらに2週間後、再診してもらいました。

 施設の職員の話では、ほとんど痛がらなくなったというのです。

 レントゲンを撮ると、なんと仮骨ができて骨がくっついていました。

16416c.jpg

 びっくりです!

 曲がってくっついたので、左肩は70度くらいまでしか上がりませんが、元々食事や着替えは全介助だったので特に支障はないようです。

 

 でも、若くて元気な人は手術しなきゃダメですよ。

 

筋痛症(MPS)を知ってると診察と治療が早くて安いよ

2017.7.27 カテゴリー|トリガーポイント注射

 50代の女性

 10日前から左背部の痛みと左腕のしびれが出現して当院を受診しました。

 話を聞いただけで肩甲骨周囲の筋痛症と診断できたので、触診をすると思った通り下図の部位にトリガーポイントを認めました。

14960.jpg

 この患者さんのお父さんが、当院でいつもトリガーポイント注射を受けているので、

 「肩甲骨周囲の筋肉が攣ったための痛みとしびれです。注射をすれば良くなります。」

 と言う説明にすぐに納得してくれたので、すかさずトリガーポイント注射を打ちました。

 診察室に入って出るまで2分もかかっていないと思います。

 初診料とあわせても自己負担は1510円です。

 

 筋痛症について知る前だったら、症状を聞いて頚椎ヘルニアを疑いました。

 10分以上かけて頚椎の理学所見と神経所見をとりレントゲンを撮ったでしょう。

 レントゲンに異常がなければ、後日MRIをとったと思います。

 MRIにも異常がなければ原因不明なので、ロキソニンとメチコバールと湿布を出して誤魔化すか、精神科に紹介していたでしょう。

 MRIで頚椎ヘルニアが見つかったら、(本当は筋痛症だから症状と関係ないのに)手術を勧めていたでしょう。

 

 診断がつくまで何日もかかるし、治療費も10倍以上かかったと思います。手術したらその数倍かかりますね。

 時間とお金をかけても診断がつかなければ、あるいは誤診されていれば、治療もうまくいかず、患者さんにとっては踏んだり蹴ったりです。

 

 もちろん、トリガーポイント注射を打っても良くならないこともあります。

 経過を見る中で、レッドサイン(悪性腫瘍、感染症、骨折、内科的疾患)の可能性を疑った場合は、レントゲン検査や血液検査、MRIも必要になります。

 でも、そういうケースはごく稀です。

 筋痛症(MPS)を知っていると診察と診療は早く安くできます。

大学教授が湿潤療法を紹介する時代になりました

2017.7.21 カテゴリー|湿潤療法

 昨日、水戸プラザホテルで行われた特別講演を聴いてきました。

 日本の手外科の重鎮であられる琉球大学整形外科教授 金谷文則先生が講師でした。

 演題は「四肢外傷の治療ー最近のトピックス」でした。

 

 その講演の一番最初に、金谷先生から湿潤療法の紹介がありました。

 「すべて夏井先生の本に書いてあることですが・・」と前置きしてから湿潤療法のやり方やなぜ創が早く治るかについて説明してくれました。

 

 夏井先生が「新しい創傷治療」のサイトを立ち上げてから約15年

 最初は私のような新しい物好きの変わり者しかやってなかった湿潤療法を、とうとう影響力のある大学教授が紹介する時代になりました。

 つまり、パラダイムシフトが起きて湿潤療法が標準治療になったということです。

 いまだに消毒してガーゼを当てている医者は、勉強不足の藪医者ということです。

 

サインバルタとハサミは使いよう

2017.7.19 カテゴリー|トリガーポイント注射

 50代の女性

 3ヶ月前に首を寝違えました。

 その3日後くらいから左の首から背中から腕の痛みがひどくなり、近所の整形外科を受診しました。

 MRIを撮って首に2カ所ヘルニアがあるといわれました。

 痛いところに局所注射をするとその日だけは眠れるけど、週に1回しかしてくれないのでロキソニンと睡眠薬を飲んでいました。

 痛みが取れないため、1ヶ月前に当院を受診しました。

 長く続く痛みのため暗い表情で診察室に入ってきました。

 下図のごとくトリガーポイントを認めました。

16385.jpg

 寝違えが原因の筋痛症で、ヘルニアは痛みと関係ないことを説明してトリガーポイント注射を行いました。

 症状の経過や年齢からサインバルタの良い適応であると考え、サインバルタを処方しようとしましたが、

「以前に腰痛でかかった病院から、サインバルタやトラムセット、リリカなどが処方されたけど、すべて副作用がひどくて飲めなかった」

 と言われたので、とりあえず、ロキソニンテープのみ処方し、痛みが取れなければ毎日注射に来てくださいと説明しました。

 1回目の注射で少し良くなりましたが、その後はあまり良くならなかったようなので、睡眠薬を止めてリボトリールを出しましたが、良くなりませんでした。

 やはりサインバルタの良い適応であると確信し、患者さんに次のように説明しました。

 

 痛みは神経経路を伝って上行性に脳に伝えられますが、それとは別に下行抑制系という痛みを和らげる働きもつを神経径路もあります。

 慢性痛の人は下行抑制系の働きが悪くなっているため、痛みに対して過敏になり少しの痛みをすごくつらく感じるようになります。

 サインバルタはこの下行抑制系の働きを改善する作用があるので、いまの○○さんにはぴったりのお薬です。

 神経に働く薬なので、吐き気や眠気などの副作用が出ますが、3日くらいで耐性ができて副作用が出なくなります。

 副作用が出ても3日くらいは我慢して飲んでください、きっと良くなります。

 

 サインバルタを飲んで、最初は頭がボーッとしたり、食欲が低下したりなどの副作用が出ましたが、1週間後には痛みが改善して、表情も明るくなり、それまでずっと休んでいた仕事に復帰できました。

 

 サインバルタとハサミは使いようです。

 

 ちなみに、日曜日は忙しくてこんな丁寧な説明できませんよ。

 なるべく平日の空いている時間に受診してくださいね。

健診医による呪いの言葉

2017.7.14 カテゴリー|トリガーポイント注射

 70代の男性

 8年前、健康診断で、腹部レントゲンを診た健診医から

 「腰の骨が変形しているから、そのうち腰が痛くなるでしょう。」

 と言われました。

 その3年後から、草刈りをすると腰が痛むようになりました。

 先日当院を受診しました。

 そのときのレントゲンです。

16575.jpg

 確かに変形しているし、曲がっています。

 でも70歳にもなれば、ほとんどの人が腰の骨に多少の変形があります。

 骨が変形が腰痛の原因ならば、70歳以上の人のほとんどが常に腰痛を訴えていなければいけないはずです。

 でもそんなことはありません。

 実際に、この患者さんも草刈りをした後以外は腰痛はありません。

 草刈りで痛くなるのは腰の周りの筋肉です。骨じゃありません。

 「腰の骨の変形は痛みとは関係ありません。草刈りをすると痛くなるのは腰の筋肉が疲れて硬くなるからです。草刈りをする前に痛み止めを飲んで、終わったら湿布を貼ってください。」

 と説明しました。

 

 健診医をしているのはたいてい内科が専門の先生です。

 腰痛のことはたいして勉強もしてないでしょう。

 よく知らないなら、余計なことを言って患者さんに呪いをかけないで欲しいです。

最近の記事

カテゴリー

月別アーカイブ