丁寧な説明が「呪いのことば」になってしまう悲劇
2019.8.16 カテゴリー|トリガーポイント注射
40代の男性
3日前から右膝が痛くなり当院を受診しました。
念のためレントゲンを撮りましたが、右膝の骨には全く異常はありませんでした。
触診すると右大腿四頭筋内側広筋にトリガーポイントを認めたました。
それより何より、右大腿四頭筋の著しい萎縮を認めました。
話を良くを聞いてみると、5年前に足首を骨折して、某病院で手術を受け、そのときに「(骨折で足首が変形したから)将来、膝も痛くなるでしょう。」と言われたそうです。
それでずっと膝をかばって生活していたようです。
「それは、『将来、膝も痛くなることもあるかもしれない。』程度の話です。よけいな心配して、膝をかばっていたから、こんなに筋肉が萎縮してしまったのです。どんどん動かさないと、かえって痛みがひどくなってしまいますよ。」
と説明したけど、通じたかな?
トリガーポイント注射も受けていかなかったし、呪いは解けなかった可能性が高そう。
30年くらい前からインフォームド・コンセントという言葉がでてきて、手術前に患者さんには起こりえる合併症や副作用について十分な情報提供をして、納得してもらって同意を得てから手術をするということが病院で行われるようになりました。
これは、はっきり言って医療訴訟対策です。
後から訴えられないように、前もって細かく説明するのです。真面目な医師ほど細かく説明します。
でも、心配性な患者さんは、滅多に発生しないような合併症についても、必ず発生するのではないかと不安になってしまいます。
心配性の患者さんには、ドラマの女医のように「私、失敗しないので!」と言ってあげるのが一番安心してもらえるのですが、さすがにそれは無理です。医学は何が起こるかわからないので。
私なんかは、ざっくりと「手術は温泉治療と違って、いろんなことが起こる可能性があるけど、そのときは全力で対応します。」と説明していました。
おかげさまで一度も訴えられたことはありません。運が良かっただけですけどね。
丁寧な説明が、患者さんの受け止め方次第では「呪いのことば」になってしまうこともある。
ということです。やはり医学は何が起こるかわからない。