2015.3.27 カテゴリー|その他
20代のシングルマザー
3ヶ月前から左手の親指から中指にしびれが出現して、1ヶ月くらい前からしびれがひどくなったため、某総合病院の整形外科を受診しました。そこで、若手医師の診察を受け、「手根管症候群だから、手術をしなければ治りません。パチンコ屋の仕事もやめないと治らない。」と言われたそうです。
幼子を抱えているので、手術のために入院することも、仕事をやめることも不可能なので、困ってしまい。普段からお世話になっている調剤薬局の薬剤師さんに相談したところ、当院を受診するように勧められました。
診察した結果、典型的な手根管症候群でした。某総合病院の若手医師の診断は間違っていませんでした。でも「手術しなければ治らない」なんてことはないです。
症状が軽ければ、ビタミンB12を飲んでもらうだけで治ります。症状がかなりひどくても、手根管内にケナコルト注射をすればほとんどの場合しびれが改善します。
何度注射しても良くならず、かつ母指球筋の筋萎縮が認められるよう場合に初めて手術を検討します。
この患者さんの場合、まず手根管内注射と内服薬で治療することにしました。おそらく、これだけで日常生活に困らない程度には回復すると思います。
某総合病院の若手医師は、なぜ「手術しないと治らない」と説明したのでしょう?これは私の推測ですがが、経験不足が原因だと思います。某総合病院のような大病院には、手術をしなければ治らないような重症な患者さんが集まります。そのため、この若手医師は手術以外の方法で手根管症候群の治療した経験がないのでしょう。だから手術以外に治療の選択肢が思いつかなかったのではないかと思います。
某総合病院のような大病院に紹介状もなし受診した患者さんはたいてい若手医師が診察を受け持ちます。なぜなら、部長クラスのベテランの医師はすでにたくさんの患者さんを受け持っていて、新患の患者さんをみる余裕がないからです。
若手医師の練習台になりたいって思うなら、いきなり大病院を受診してもいいですけどね。でもね、紹介状なしで大病院にかかると約5,000円くらいの選定療養費という健康保険やマル福が効かない特別料金をとられます。救急車で運ばれるような重症な場合は除き、まずは近くの開業医を受診した方がいいですよ。開業医のほとんどは経験豊富なベテラン医師ですから。
2015.3.26 カテゴリー|湿潤療法
10ヶ月の女の子
ロースターを触ってしまい左手の平にヤケドを負いました。近所の皮膚科を受診した際に医師から「必ずケロイドになる」と告げられました。ご両親はその言葉にすごく不安になり、ネットで調べて夏井先生に相談し、当院を受診するように勧められ、受傷3日後に当院を受診しました。
受診時の画像です。
手のひらと親指から薬指に2度の熱傷を認めました。
「屈曲拘縮になる可能性は」ありますが、ケロイドにはなりません。屈曲拘縮を起こしてもあとから手術をすれば治ります。」と説明して、ご両親を安心させてから、プラスモイストをミトンのような形に加工して左手にはめてもらい、湿潤療法を開始しました。
自宅でご両親に1日1回プラスモイストを交換してもらって、当院には週2回程度通院してもらいました。経過は良好で、1ヶ月後には治癒しました。
現時点では指の可動域制限はなく屈曲拘縮は起きていません。もちろんケロイドになんてなっていません。
もしかしたら、ゲーベンクリームを使った従来の熱傷治療だと、このくらいのヤケドでも必ずケロイドになるのかな。恐ろしい。
2015.3.23 カテゴリー|トリガーポイント注射
40代の神奈川県在住の男性
昨年の夏、車から降りたとたんに右ふくらはぎに激痛が走り、踵がつけなくなりました。右ふくらはぎの肉離れだろうと考え、整形外科を受診しましたが、腰から来る神経痛だと診断されました。その後、右ふくらはぎだけではなく、右臀部や太もも後面にも痛みが出るようになり、あちこちの病院にかかり、腰椎だけではなく、頚椎や胸椎のMRIを行いましたが、どこにも異常が見つかりませんでした。
そんなとき、加茂先生の著書「腰痛はトリガーポイント注射で治る」と出会い、自分は筋筋膜性疼痛症候群じゃないかと考えました。しかし、どこの病院に行っても、筋筋膜性疼痛症候群ではないと言われました。困り果てて、当院を受診しました。
下図のごとく、腰や右臀部、両ふくらはぎにトリガーポイントを認めました。
典型的な筋筋膜性疼痛症候群でした。
最初は、右ふくらはぎの筋肉の痙攣だったのでしょう。右ふくらはぎをかばっているうちに、右臀部や腰、左ふくらはぎにまでトリガーポイントができてしまったのだと思います。
何を根拠に筋筋膜性疼痛症候群じゃないと診断されたのか?さっぱりわかりません。
2015.3.13 カテゴリー|その他
自分でいうのもなんですが、私はけっこういいやつですし、たいていの人とはうまくやれます。
でも人間には相性があります。横柄な態度をとる人とか、何度も同じ質問をしてくる人とか、こっちがしゃべっているのに話をかぶせてくる人とか、聞いていることに対して明後日の方向から答える人とか、人の話を全然聞かないでわかったような口をきく人とか、苦手です。
で、こういう相性が悪い患者さんにも気に入ってもらおうとすると、ものすごく気を遣わなければいけないので、エネルギーと時間を大量に費やしてしまいます。そうすると、疲れ切っちゃって、残りの相性のいい患者さんに迷惑をかけてしまいます。
診断や治療においては、患者さんと医師の信頼関係が築けるかどうかが非常に重要です。
患者さんには医者を選ぶ権利があるので、私の治療や態度が気に入らなければ、他のもっと相性がいい先生に診てもらったほうがいいです。
私のことを「すごくいい先生だ」とほめてくれる患者さんはみんな患者さん本人もすごくいい人です。で、そういう患者さんから紹介されてくる患者さんも、たいていすごくいい人です。なので、今当院に通院している患者さんはほとんどみんなすごくいい人です。
だからそれでいいのです。
2015.3.13 カテゴリー|その他
いつから痛いのか?いつからできものがあるのか?いつから皮膚炎があるのか?とても重要です。だから、新患の患者さんにはその点をしつこく聞きます。
たとえば、腰痛の場合、10年前からいたいときと、10日前から痛いときと、10時間前から痛いときでは、診断と治療と予後が全然違います。10年前からなら、すでに慢性疼痛なので、完全に痛みを消すのはなかなか難しいです。10日前からなら、慢性疼痛にまだなっていない可能性が高いので、うまくいけば腰痛を完全に消すことが可能です。10時間前なら急性疼痛ですから、トリガーポイント注射などですみやかに痛みを取れば、慢性疼痛になる可能性はほとんどありません。
皮下腫瘍もいつからあるのか重要です。10年前からあってほとんど大きくなっていない腫瘍は悪性の可能性が低いですが、10日前からあって、どんどん大きくなっているような腫瘍は要注意です。
そんなわけで、いつから症状があるのかしつこく聞きます。
ところが、たいていの人は、「ずっと前からだ」とか「しばらく前からだ」とか「最近だ」とか返事をします。これではよくわかりません。「ずっと前」とか言っていたのに実際は3日前だったり、「最近だ」と言っていたのに実は3ヶ月前だったりすることが良くあるからです。
なので、「それは何日前ですか、それとも何ヶ月前ですか、それとも何年前ですか」としつこく聞きます。
あまりしつこく聞くので、怒って帰ってしまう患者さんが、ごく希にいますが、それは仕方ないと思っています。
先日もこんな患者さんがいました。
「今日はどうしましたが?」
「背中に異物があるんです」
「異物?????????」
「異物じゃなくてできものじゃないですか?」
「ああそうですか」
「いつからあるんですか?」
「震災前からです。」
「じゃあ4年くらい前からですね。じゃあ背中を診せてください。」
「手術した痕がありまね。いつどこで手術をしましたか」
「震災前に○○医院で手術しました。」
「?????、ちょっと待ってください、手術が震災前なら、できものができたのはいつですか?」
「震災前です。」
「全部震災前では、わからないので、何年前にできものができて、何年前に手術をしたのですか?」
「だから震災前。」
「それじゃ全然わからない。最初にできものに気がついたのは何年前?」
「じゃあもういいです!」
と突然切れて、診察室の引き戸をバタンと激しく閉めて帰ってしまいました。
うまく答えられないことを、しつこく聞いたから切れたんだと思いますが、仕方ないですよ。いつから悪いのか正確にわからないと診断も治療もうまくいきませんから。