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急性腰痛にサインバルタを出しちゃダメでしょ。

2020.10.20 カテゴリー|トリガーポイント注射

 40代の男性

 1週間前に腰痛が出現しました。近くの整形外科でレントゲンを撮り骨には異常なしと言われてセレコックスを処方されました。痛みが取れないため1週間後、同院を再診しました。その際にサインバルタとボルタレン座薬を処方されました。トリガーポイント注射について院長に質問したら、「適応はない」と言われたそうです。

 ネットで調べて当院を受診しました。腰と臀部にトリガーポイントを見つけたのでトリガーポイント注射を打ちました。そして、「サインバルタは急性痛には全然効かないから飲むのを止めてください。痛い時は我慢しないで座薬を使ってください。」とアドバイスしました。

 

 慢性痛とは、痛みをずっと我慢していたせいで痛みの閾値(しきいち)が下がってしまい、たいしたことない痛みも激痛に感じるようになってしまっている状態です。サインバルタには下がってしまった閾値を元に戻す作用があります。なので慢性痛にサインバルタを処方すると劇的に効くことがしばしばあります。逆に言えば、慢性痛になっていない急性の痛みには全く効かないので有害無益な薬です。

 

 最近、精神科医がツイッターでサインバルタの安易な使用に注意を促すツイートをしました。サインバルタは元々は抗うつ薬なので整形外科医が処方したサインバルタにより双極性障害(昔の躁うつ病)の患者さんの症状が悪化することがけっこうあるそうです。

 私は精神科に通院中の患者さんにはサインバルタは出しませんし、また精神科に通院していない患者さんでも何度も診察して精神疾患の可能性がないと判断した場合にのみしかサインバルタを処方していません。

 

 痛みが長く続くと、痛みのせいでうつ状態になることがあります。「こんなに痛いなら死んだ方がましだ。」とか「死にたいと思うことがある。」などと訴えてくるうつ状態の明らかな患者さんには、安易にサインバルタを処方せずに、精神科(心療内科)に紹介しています。ほとんどの場合、精神科で「うつ状態、疼痛性障害」と診断され、精神科の治療が開始され、紹介以降当院に通院することはありません。

 

 サインバルタが効くのは精神疾患のない慢性痛の患者さんだけです。急性期の2回くらいしか診察してない患者さんに処方していい薬じゃありません。整形外科医なのに慢性痛と急性痛の区別もつかないのかねぇ。もうちょっと勉強した方がいいと思うよ。急性腰痛にサインバルタを出しちゃダメでしょ。

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