2020.2.14 カテゴリー|トリガーポイント入門
50代の男性
1年くらい前に肩から腕の痛みとしびれが出現しました。
あちこちで検査を受けましたが、特に異常は見つかりませんでした。
ペインクリニックを紹介され、定期的に星状神経節ブロックを受けていました。
ブロック後は一時的に症状が改善しますが、なかなか良くならないため、先月に当院を受診しました。
棘下筋にトリガーポイント注射をしたら、すぐに痛みもしびれも消えたそうです。
1ヶ月後に痛みが少し再発したため、もう一度トリガーポイント注射をしました。
その際に「なんでここに注射するとしびれと痛みが消えるの?」と聞かれました。
正直に「わかんないんだ。わかんないけど良くなるんだ。ツボみたいなものだと思ってちょうだい。」と答えました。
棘下筋にトリガーポイントがあると肩から手の痛みやしびれがでます。
小殿筋にトリガーポイントがあると太ももから脛の外側に痛みやしびれが出ます。
このようなトリガーポイントとは別のところにでる痛みやしびれを関連痛といいます。
どうして関連痛が出るかは、今のところわかっていません。
わかってないけど、トリガーポイント注射をすると良くなるのです。
ペインクリニックで行っていた星状神経節ブロックは、首の付け根の奥の方にある星状神経節という交換神経の塊に局所麻酔薬で麻酔をかける治療法です。
交感神経に麻酔をかけるので、副交感神経が優位になり血管が広がり一時的に血の巡りが良くなります。
私もやって出来ないことはありませんが、反回神経麻痺や腕神経叢麻痺、気胸や血管損傷などのリスクがあるので、あまりやりたくないです。
その点、トリガーポイント注射は上記のようなリスクがほとんど無いので、安心して出来ます。
特に、棘下筋のトリガーポイント注射は、肩甲骨の上を指でぐりぐりして、圧痛があるしこりを見つけて、そこに針を刺すだけなので簡単です。
深く刺しすぎても肩甲骨に当たるだけから、気胸になるリスクもないので安心です。
星状神経節ブロックする前に棘下筋へのトリガーポイント注射を試した方がいいと思うけどね。
みんな知らないんだよね。
医大や学会で教えてくれないからね。
2019.4.01 カテゴリー|トリガーポイント入門
30代の男性
1週間くらい前からだんだん背中が痛くなったと、2ヶ月くらい前に当院を受診しました。
右肩甲骨の内側に添って圧痛を認めたため、トリガーポイント注射を打ちました。
週1回ずつトリガーポイント注射を打っても良くならないので、1ヶ月後に念のためレントゲンを撮りました。
丸で囲んだあたりに痛みがあります。拡大してみると・・・・
肋骨が3本も折れてました。
仕事でだいぶ腕を使うようなので、それによる疲労骨折でした。
「使いすぎによる疲労骨折です。使いすぎが原因なのでしばらく安静にしましょう。」と説明しました。
その後、会社で負担が少ない職場に変えてもらって1ヶ月後には痛みが消えて、レントゲン上も骨癒合しました。
1ヶ月くらいトリガーポイント注射を打っても良くならないときはレントゲンを撮ったほうがいいですね。
2018.8.09 カテゴリー|トリガーポイント注射
眠っていて目が覚めたときに、首の後ろや首から肩にかけての痛みが出ることがあり、いわゆる「寝違え」と言います。首を動かすと痛みが出る時もありますし、痛みで首を動かせない時もあります。
首が動かなくなるので、首の筋肉を痛めたと思っている人が多いと思いますが、原因は首の筋肉ではありません。
寝ているときの姿勢が悪くて、肩甲骨の周りに筋肉を痛めてしますことが原因です。
特に棘下筋と肩甲挙筋が原因になることが多いです。
寝違えてきた人の肩甲骨の真ん中あたりを押すと、飛び上がるほど痛がります。
なので、圧痛部にトリガーポイント注射をするとすぐによくなります。
2018.3.08 カテゴリー|トリガーポイント入門
前回のブログで、痛みを我慢してから痛み止めを使っても、痛みが閾値より下にならないから痛みが取れないことを説明しました。
この痛みが取れない状態が長く続くと、だんだんと閾値が低くなっていきます。
その結果、普段は痛みを感じないような刺激でも痛みと感じるようになります。
この状態が慢性痛です。
慢性痛を治すにはどうしたらいいでしょう。
トリガーポイント注射などで一時的にでも痛みを消すことで、閾値が徐々に正常に戻っていきます。
また、慢性疼痛治療薬サインバルタには、下行抑制系の働きを改善することで閾値を正常に戻す作用があります。
痛みを我慢していると慢性痛になります。
慢性痛はなかなか治りません。
そうならないためには、痛みが出たらすぐに痛み止めを飲むことです。
それでも良くならなければトリガーポイント注射を受けましょう。
2018.3.08 カテゴリー|トリガーポイント入門
なぜ痛みは我慢しないほうがよいのかを患者さんに説明するとき、中枢感作とか下行抑制系とか難しい専門用語を使っても理解してもらうのは難しいと思います。
そこで、私は「痛みの閾値(しきいち)」を使ってなぜ痛みは我慢してはいけないのかを説明しています。
最初にメモ紙に横軸が時間、縦軸が痛みの強さを表すグラフを書きます。
痛みは時間とともに強くなっていきます。
しかし人間はすべての痛み刺激を痛みとして感じているわけではありません。
痛みには閾値(しきいち)があり、閾値より下の痛み刺激は痛みとして脳に伝わらないようになっているのです。
そうじゃないと痛み刺激のせいで脳がパンクしてしまうからです。
痛みを限界まで我慢してから痛み止めを使っても、痛みは閾値より下にならないので痛みは消えません。
逆に、痛みを我慢せず、痛くなったらすぐに痛み止めを使えば、痛みはすぐに閾値より下になるの痛みは消えます。
なので、痛みは我慢せず、痛くなったらすぐに痛み止め使ったほうが良く効くのです。
痛みを我慢し続けていると、慢性痛になってしまいます。
次回は痛みの閾値を使って慢性痛の仕組みについて説明します。