2013.2.19 カテゴリー|その他の治療について
49歳男性
10年前以上から右頬に2㎝くらいの皮下腫瘍があり、10年前に皮膚科で粉瘤と診断されました。このまま放置していいのかどうかを確認するため当院を受診しました。
エコー検査では、皮下脂肪内に、全体的に黒く内部に斑状に少し白いところがある楕円形の腫瘍を認めました。「粉瘤」で間違いなさそうです。感染兆候は認めませんでした。
そこで、以下のように説明しました。
「悪性腫瘍ではないので、すぐに摘出手術をする必要はありません。感染していない状態で手術した場合、局所再発率が30%くらいあり、感染してから手術したほうが傷が小さくて済み、再発する可能性も低くなるので、感染するまで様子を見て、それから手術をしたほうがいいでしょう。」
この説明に納得していただけました。
2013.1.25 カテゴリー|湿潤療法
練馬光が丘病院の夏井睦先生のHP「新しい創傷治療」からの引用です。
http://www.wound-treatment.jp/title_new.htm
以前から問題にしているティファールの電気ポットによる小児のヤケドだが、本当に多い。昨年4月の開設以来,既に6人の患者が受診されていて,「電気ポットが倒れてお湯がかかって」という患者さんのほとんどはティファールか、そのパチモン電気ポットが原因である。その他の電気ポットでは発生していないのだから、いわば「電気ポットのヤケドと言えばティファールの独擅場」状態であり、「ティファールにのみ特異的にヤケドが発生している」状態である。
原因はもちろん、ティファールだけが唯一、倒れたらお湯が吹き出る(こぼれ出る)構造をしているためだ。伝聞では,ティファール側は「これはデザインであり、倒す方が悪い」と言っているらしく、倒れてもお湯が出ない形にする気はサラサラないようだ。と言うことは、ティファールによる小児のヤケドは増えこそすれ、当分、減ることはないということだろう。全くもって迷惑な話である。少なくとも,日本のメーカーでは絶対にない企業姿勢でだと思う。
消費者庁あたりが動いて改善勧告を出すか,販売停止にしてもらわないと,今後もティファールによるヤケドが増えていくはずだ。
そういうわけで,「乳幼児のいる家庭ではティファールの電気ポットは使わない」ということで対抗していくしか手がなさそうである。
日本のメーカーの電気ポッドは、子供が電気コードに引っかかった場合、ポッドから電気コードが外れて、ポット自体は倒れないようになっていますし、最悪倒れても、中のお湯が出てこないように安全対策をしてあります。しかし、ティファールにはそのような安全対策が全く施されていません。
先日はウォーターサーバーをいじっていてお湯が出てきて、ヤケドをした赤ちゃんが来ました。
https://nishibori-seikei.com/blog/2013/01/post-175.html
炊飯器の蒸気でヤケドした赤ちゃんもいました。アイロンでヤケドした赤ちゃんもいました。
赤ちゃんは好奇心旺盛なので、大人が思いもしないような行動をします。親は想像力を働かせて、子供の手が届くところに危険なものを置かないよう努力しなければいけません。
ティファールの電気ポッドは明らかに危険なものです。乳幼児のいる家庭では使用すべきでありません。
2013.1.16 カテゴリー|その他の治療について
当院に粉瘤の疑いがある患者さんが来た場合の診察と治療について説明します。
まず、超音波検査を行いガングリオンや脂肪腫などのその他の腫瘍と鑑別します。
(視診と触診で明らかに粉瘤と診断できる場合は除きます。)
上の図が、粉瘤の超音波検査の画像です。
皮下組織の中に全体的に黒くて内部に不均一に白い部分がある楕円形の腫瘤があります。
痛みがあり、周囲が赤く腫れて熱を持っている場合は、すでに感染を起こしているので、すぐに夏井先生の方法で手術をします。
http://www.wound-treatment.jp/next/case/954.htm
感染を起こしていない場合は、
「悪性腫瘍ではなく、感染していない状態で手術した場合、再発率が30%くらいあり、感染してから手術したほうが傷が小さくて済み、再発する可能性も低くなるので、感染するまで様子を見て、それから手術をしたほうがいいでしょう。」
と説明します。
それでも手術を希望する場合は、後日に手術を行います。
手術をした場合は、数日間、創の処置のために通院してもらう必要があります。
2013.1.16 カテゴリー|湿潤療法
湿潤療法の第一人者である夏井先生のホームページの「筆者(夏井先生)と同じ方法で粉瘤の治療をしている医師リスト」に当院も載せてもらいました。
http://www.wound-treatment.jp/dr/atheroma.htm
夏井先生の粉瘤の治療法はこちら↓
http://www.wound-treatment.jp/next/case/954.htm
粉瘤はできもの一種ですが、中央に小さな穴があり、そこを押すと臭くて白い粥状の物が出るのが特徴です。この粥状の物はよく脂肪のカタマリと言われますが、実は垢のカタマリです。外傷や何らかの原因で表皮細胞(皮膚の一番表の細胞。最終的には垢になって剥がれ落ちます)が皮膚の深いところ(真皮)に入り込んでしまうためにできるものです。真皮層に入り込んだ表皮細胞は袋状の壁を形成します。本来なら垢となってはがれ落ちてなくなるはずが、袋の外に出られずにどんどん蓄積され、少しずつ大きくなってシコリとして触れるようになります。
粉瘤はすべてに穴が開いているわけではありません。毛根や脂腺・汗腺などにある表皮細胞が袋を作るもととなった場合は、穴を生じません。
粉瘤で問題となるのは、主に粉瘤が次第に大きくなることと、化膿して赤く腫れ上がり強い痛みが生じることです。
2013.1.10 カテゴリー|医療に関する迷信
手あれに対して、ハンドクリームは使ってはいけないと思います。
理由は,クリームの成分が界面活性剤だからです。界面活性剤,つまり中性洗剤と本質的に同じです。こんなものを皮膚に塗る方が異常です。この点,乳液も同様に界面活性剤を含み,同等に危険な物質でしょう。
クリームは水と油が溶け合ったものです。皮膚に塗るとスベスベするし,ツルツルになります。しかし,クリームを洗い落とすとなぜか皮膚はゴワゴワ,シワシワになっていませんか? これは恐らく,クリームに含まれる界面活性剤が皮膚の油を分解してしまったためです。皮膚の油(皮脂)は人間を感染から守ってくれている皮膚常在菌の生存になくてはならない栄養源です。それを洗い落とすのはとんでもない愚行です。
クリームに含まれる界面活性剤の疎水基は細胞膜の蛋白質に結合し,細胞膜を破壊します。皮膚科の教科書に「クリーム製剤は健常の皮膚にのみ用いること」と明記されているのは,健常の皮膚は角化層で守られているからクリームを塗っても大丈夫だよ,という意味でしょう。逆に言えば,角化層が正常でない皮膚(傷ついている皮膚,乾燥肌,アトピーの創部など)にクリームを塗ると,そこに含まれる界面活性剤が牙をむいて傷口に襲い掛かるわけです。
女性に手あれが多い理由は、女性が食器洗いや洗濯などで、男性より多く界面活性剤を含む洗剤を使う機会が多いからです。界面活性剤のせいで、手あれになったのに、同じ界面活性剤であるクリームで治療するなんて、火に油を注ぐのと同じことです。
ハンドクリームがどのくらい強力な界面活性剤かを、簡単に実験する方法があります。
手に油性ペンで落書きをしてください。油性ペンの落書きは石鹸やハンドソープではなかなか消えません。そこにハンドクリームを塗ってみてください。魔法のように油性ペンの落書きが消えてしまいます。ハンドクリームは石鹸や油性ペンより強力な界面活性剤なのです。こんな恐ろしいものを塗ってはいけません。
「手あれにはハンドクリームがきく」というのは迷信です。