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2015.11.26 カテゴリー|湿潤療法
9ヶ月の男の子
炊飯器のお釜を触って受傷しました。総合病院の皮膚科でゲンタシン軟膏とメロリンガーゼによる処置を受けましたが、受傷後5日目からネットで調べて湿潤療法をしている○○整形外科でプラスモイストによる治療を始めました。受傷後14日目に急に人差し指が腫れてきましたが、医師からの説明も対応もないため、練馬光が丘病院の夏井先生にメールで相談したところ、当院を受診するように勧められ、受傷後15日目に当院を受診しました。
初診時、右示指が著しく腫れていて熱を持っていました。軽い悪臭も伴っていました。創部感染と診断し、抗生剤内服を開始しました。また、それまで創に密着するようにはってあったプラスモイストを、ミトン型のプラスモイストに変更しました。翌日には悪臭と局所の発熱は消えました。腫れも徐々に引いていきましたが、初診より5日後に過剰肉芽(創周囲より盛り上がった肉芽)をみとめたので、マイザー軟膏の塗布も開始しました。
以後、時間はかかりましたが、徐々に上皮化していきました。治療開始2ヶ月でほぼ上皮化しました。
屈曲拘縮の予防のためにお母さんにマッサージをして貰っていましたが、人差し指と中指は屈曲拘縮してしまったので、土浦協同病院の手の外科に紹介しました。
1歳未満の赤ちゃんの手のひらのやけどでは、湿潤療法でも屈曲拘縮を避けられません。
初診時
治療開始1週間後
治療開始2週間後
治療開始1ヶ月後
治療開始2ヶ月後
治療開始3ヶ月後
2015.11.18 カテゴリー|医療に関する迷信
今日はこちらの記事の紹介
とある病院が掲げていた「正しい医療のための10箇条」に賛否両論
とある病院が掲げていた「正しい医療のための10箇条」がネットで話題になっています。
ネット上では賛否両論のようですが、私はこの10箇条におおむね賛成です。特に「10.不調なときは、何かをするよりも何かをやめる方がうまくいくと知ること」に大賛成です。肥満や糖尿病を治すなら糖質摂取をやめればいい。ウォーキングのしすぎで膝が痛いならウォーキングをやめればいい。タバコが原因で掌蹠膿疱症になったらタバコをやめればいい。私が普段から主張していることとほぼ同じです。
同意しかねるのは「8.西洋医学は緊急疾患用の医療と知ること」です。ちょっとこれは言い過ぎです。慢性疾患に対しても西洋医学は有効だからです。むしろ伝統医学は急性疾患に対してあまり有効ではありません。こう言い換えればいいともいます。「緊急疾患は伝統医学では治せないので西洋医学にたよること」
2015.11.17 カテゴリー|トリガーポイント注射
69歳の女性
3ヶ月前から左前腕から親指と人差し指にかけてのしびれが出現しました。○○医院でMRIを撮り「頚椎椎間板ヘルニア」と診断され、お薬(リリカ、メチコバール、オパルモン、セレコックス)などが処方されましたが、しびれは変わりませんでした。
しびれが出てから3ヶ月後くらいに当院を受診しました。下図のごとく前腕にトリガーポイントを認めたのでトリガーポイント注射を行いました。
1回の注射で、しびれがいくらかとれました。
2回の注射で、しびれはほとんどとれて、畑仕事をした後に少ししびれるだけになりました。
手のしびれもトリガーポイントが原因で起こることがあります。
重い荷物をずっと持っていると、だんだん手がしびれてきますよね。それは、筋肉に疲労がたまって一時的にトリガーポイントが出来るからです。この場合、荷物を下ろせば筋肉の血行が回復してトリガーポイントが消えしびれも消えます。
この患者さんの場合、畑仕事のやり過ぎで出来たトリガーポイントがそのまま消えなくなってしまったのです。だからトリガーポイント注射で筋肉の緊張をとり血行をよくすることでしびれが良くなるのです。
2015.11.13 カテゴリー|医療に関する迷信
今日はこちらの記事の紹介
高齢者の骨粗鬆症にカルシウムが無効なことは、高齢者の骨粗鬆症の原因を考えれば当たり前の話です。高齢者の骨粗鬆症は骨を作る工場(造骨細胞)の働きがわるくなるからであって、原材料(カルシウム)が不足しているからではありません。原材料ばかり仕入れても工場が働いてないのだから、原材料が余ってしまい心筋梗塞や尿管結石症のリスクが高まります。
また、骨はタンパク質で出来た柱にカルシウムがくっついている構造です。タンパク質も一緒にとらないとカルシウムだけでは骨になりません。転倒予防のために運動をしても、タンパク質をとらなければ筋肉は増えません。ところが、骨粗鬆症のおばあちゃんにかぎって、肉を食べずに米と野菜ばっかり食っているので困ったものです。野菜は体にいい、肉は体に悪いという古い間違った説に洗脳されているのだと思います。
現在はテリパラチドやビスフォスフォネート製剤など骨粗鬆症の骨折予防に有効な薬があるので、カルシウムのサプリなんか飲まずに整形外科にかかりましょう。
2015.11.10 カテゴリー|湿潤療法
79歳のおばあちゃん
栗林でたき火をしていて、火がモンペに燃え移ってやけどしました。家にあった軟膏とガーゼで治療していたけど治らないので2日後に当院を受診しました。
右下腿前面に15×20センチくらいの2度の熱傷を認めました。(写真は撮り忘れました。)
穴あきポリ袋とペットシートによる湿潤療法を続けて、1週間後には一部を残してほとんど上皮化しました。我ながらうまく治せたなと思っていたのですが、このばあちゃん。
「なんだ、まだ治んねぇのげ」
なんて言ってきました。悪気はないのでしょうが、ちょっと悲しくなりました。
「あのねぇ。あんなに深いやけどが1週間くらいで治るのは、俺の治療がいいからだよ。よそにかかって、古い治療を受けていたら、今頃まだ痛くて、下手したら手術しないと治らないとか言われているよ」
と説明しましたら、
「なんで、やけどで手術なんかすんのげ?」
なんて言ってくるから、
「やけどがこんくらい深いときは、ももたあたりの皮膚を剝いで、やけどにはっつける手術をすんだよ」
て、説明したら、
「ああ、そうげ」
て、答えてたけど、全然ぴんと来てない感じだった。
ググって湿潤療法について調べて当院を受診したわけじゃなく、ただ近所っていうだけで当院を受診した患者さんには湿潤療法のありがたみはわかってもらえないみたい。
別にいいけどね。