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肋骨骨折の治療

2015.10.06 カテゴリー|骨折・捻挫の治療

 胸や背中をぶつけたりひねったりして肋骨に痛みが出て当院を受診する患者さんがたくさんいます。皆さん一様に肋骨が折れていないかどうか心配しますが、肋骨は折れていても折れていなくても治療法も治る期間もほとんど同じです。

 

 患者さんが来たらまず、痛みがある部位を聞いて、押していたいところを探して、そこにクリップを貼ってマーキングをしてから肋骨のレントゲンを撮ります。肋骨は片方だけで12本もありまた細長くて湾曲している骨なので、マーキングをしないと折れているところを探すのが大変です。

 

 レントゲンを診て、骨折の有無を確認しますが、3本以内の転位のない骨折だったら折れていても折れていなくても同じ治療をします。

 

 痛みが強ければ肋骨バンドを巻きます。(肋骨バンドはシグマックス社のリブバンドが丈夫でゴムの弾力もあり肋骨全体を固定できるので効果的です。A社の肋骨バンドは、ゴムの弾力が弱すぎて使い物になりません。)肋骨バンドは痛いところに巻くのではなく、なるべく上の方、男性なら脇の下のすぐ下。女性なら、女性用のリブバンドを乳房のすぐ下に巻きます。きつく巻いた方が痛みが楽になります。

 

 肋骨バンドを巻いても痛みが強い場合は、圧痛部にトリガーポイント注射をします。トリガーポイント注射が劇的に効くことがよくあります。

 

 それから痛み止めの飲み薬と湿布を1週間分処方して、次のように説明します。

 

「肋骨をぶつけると、折れていても折れてなくても2週間くらいは痛みます。その間は痛みが出るような動作はなるべく避けてください。注意してほしいのは、肋骨が痛いと痛みが気になるものだから、ついつい痛いところを指で押して探してみたくなりますが、これをやると骨がずれたり、折れてない骨にヒビが入ったりして余計痛くなりますから絶対にやらないように気をつけてください。1週間たってもまだ痛みがあるときはまた来てください。」

 

 痛みが続いている場合のみ再診時にレントゲンを撮り、骨折が転位していないか、血胸や気胸が発生していないかどうか確認します。痛みが取れている場合は、あまり意味がないのでレントゲンは撮りません。

 

 息苦しさや呼吸苦がある場合は胸部レントゲンも撮り、血胸(骨折部からの出血が肺の中に貯まる状態)や気胸(肺に穴が開いて肺の外に空気が漏れる状態)の有無を確認します。軽度の気胸や血胸は、自然と治るので数日おきにレントゲンを撮って経過を見ますが、ひどい気胸や血胸は外科的処置が必要なので、呼吸器外科のある大きな病院に紹介します。

 

 レントゲンでわからない程度の転位のない骨折だったら、折れていても折れていなくても治療法も治る期間もほとんど一緒なので、CTをとってまで肋骨骨折を探すことはあまり意味がなく医療費の無駄だと思います。

意外と多い大人の発達障害

2015.10.01 カテゴリー|その他

今日はこのエントリーの紹介

意外と多い大人の発達障害

http://blogos.com/article/136640/

 

 これを読んで、二人の先輩が思い浮かびました。

 一人は研修医時代にお世話になったF先生です。F先生は非常に優秀な先生でキャンベル手術書という数千ページもある手術書の、何ページに何の手術について書いてあるか暗記していました。手術も診察も指導も丁寧で非常に尊敬できる先生でした。しかしF先生は時間の計算がものすごく苦手でした。たとえば、車で片道1時間かかる場所の会合に出席するためにわたしと一緒に出発しようとしたときに、急患が入りました。F先生はその会合にどうしても出なければならなかったので、少し診察をしてから救急担当医師にこう言いました。

「会合に出なければいけないから、少し離れるけど1時間後には戻るから」

・・・・・・・・いやいや、それ絶対無理だから、往復だけで2時間かかるから。しかも実際に会合にいくと、てっきり挨拶だけでとんぼ返りするかと思いきや、座り込んで談笑を始めました。30分待っても1時間待っても腰を上げません。業を煮やしてわたしが声をかけたら、「もうそんな時間?」なんてとぼけたことを言ってました。結局、戻るまで3時間以上かかりましたが、病院の関係者はF先生のそんな行動には慣れっこなので、何も問題は起きませんでした。

 そんな時間の計算ができないF先生は、外来の診察でも一人に対して1時間でも2時間でも行います。だから1日30人くらいの予約外来が終わるのが、いつも夜中の9時頃でした。そんなF先生を慕って県内中からたくさん患者さんが集まっていました。

 当時は、優秀なF先生がなぜ時間の計算だけこんなにもできないのか不思議でしたが、軽い発達障害があったのだとしたら納得です。そんなF先生はその後出世して病院長になりましたが、管理職になってからはいろいろとご苦労をされたようです。

 

 もう一人は、ライオンズクラブの先輩です。この人はある分野の研究者としてはある程度の実績を残した人だったのですが、空気が読めず、相手の気持ちを思いやることができない人でした。友達を作るためにライオンズクラブに入ったらしいのですが、トラブルばかり起こしていました。わたしもライオンズクラブパーティーで理不尽な批判を大声でされ、ひどく傷ついたことがあります。何でこの人はわたしより20歳も年上なのに、こんなごじゃっぺで意地悪なんだろうと思っていましたが、あとからこの人が未治療のアスペルガー症候群でなんじゃないかと気がついて納得しました。この人は数年前にライオンズクラブをやめたので、今は一切つきあいがなくなったからもうどうでもいいけどね。

 

 患者さんの中にも、この人は大人の発達障害なんじゃないかと思われる人がいますが、精神科医でもないわたしがそれを指摘していいのかどうか難しいところです。

タバコによる死亡者 年間600万人

2015.9.30 カテゴリー|その他の治療について

喫煙の健康影響は深刻 年間600万人が死亡 世界禁煙デー
http://tokuteikenshin-hokensidou.jp/news/2013/002887.php
 
 2年前、WHOはタバコが原因で死亡する人が年間600万人を超えると発表しました。600万人という数はすごい数です。広島の原爆による死亡者数の約60倍です。ある意味、タバコは核兵器より危険なものといえます。タバコの煙に毒が含まれていることは、喫煙者の方でも否定はしないと思います。
 
 もう7年前になりますが、中国製の餃子にメタミドホスという農薬が含まれていたために大騒ぎになりました。幸い一人の死亡者も出なかったのですが、農薬が入っているかもしれない、という理由で中国製の冷凍食品を誰も買わなくなってしまいました。それなのに100%毒物が入っているタバコは、年間600万人も殺しているのにほとんど何の抵抗もなく買われ続けています。メタミドホスは摂取した人にしか被害は出ませんが、タバコは周りにいる人にも被害が出ます。どちらがより有害なものかは明らかなのに、不思議な話です。
 
 最近の生命保険は非喫煙者というだけで、保険料が30~50%割引になるものもあります。タバコを吸っていない人は、それだけ保険期間内に死亡する確率が低いのだから、当然と言えば当然の割引です。ところが健康保険は、喫煙者も非喫煙者も関係なく収入に応じて同じ額を負担させられています。タバコを吸っている人のほうが病気になる確率がずっと高いのだから、非喫煙者にとっては非常に不公平な負担といえます。これを是正するためには、タバコ税をもっと上げてヨーロッパ並みの1箱1,000円くらいにして、その税収を医療費に回すようにすればよいと思います。医療費などの社会保障費が不足しているため、消費税をさらに上げることがほぼ決まっていますが、その前にタバコ税をあげるべきです。そのほうが公平です。
 
 農薬入り餃子を輸入していたのは、奇しくもJT(日本たばこ産業)でした。良い機会なので、食の安全と共にタバコの毒についてもよく考えてみてください。
 

美肌は菌で作られる

2015.9.30 カテゴリー|医療に関する迷信

 某大学の教授が論文にこんなことを書いていました。
 
「ほとんどお風呂に入らないような地域にはアトピー性皮膚炎の子供はいない、赤ちゃん用石鹸を発売中止にすれば、アトピー性皮膚炎はなくなる。」
 
 世間の常識とかけ離れている意見なので驚いた方もいるかと思いますが、私もこの意見は正しいと思います。その理由を説明します。
 目には見えませんが、人間の皮膚の上には、皮膚常在菌という善玉菌がびっしりと繁殖しています。この皮膚常在菌がいることによって、皮膚や人体に害を与える悪玉菌が進入できなくなっているのです。皮膚を健康に保つには、この常在菌を上手に育ててあげる必要があります。常在菌を育てるために必要なのは、皮膚の脂である皮脂です。皮脂は常在菌の栄養になり、また皮膚の乾燥を防ぐことで常在菌が住みやすい環境を作ります。また、皮脂に含まれる脂肪酸は常在菌以外の菌には毒となるので、悪玉菌の繁殖を防ぐ効果もあります。皮膚の健康を守るためには皮脂と常在菌がとても大切なのです。
 
 生まれた直後の赤ちゃんの皮膚には常在菌がいません。お母さんの子宮の中は無菌状態だからです。赤ちゃんはお母さんとスキンシップを取ることにより、お母さんの常在菌を移してもらうのです。常在菌は皮脂を栄養として徐々に繁殖をしていきます。赤ちゃんは常在菌の繁殖がまだ十分でないので、大人に比べて皮膚の病気になりやすいと考えられます。赤ちゃんにとっては皮脂や常在菌は大人以上にとても大切なものなのです。ところが、日本のほとんどのお母さんは、「赤ちゃんにバイ菌がついたら大変だ。」と、毎日、殺菌剤入りの薬用石けんで赤ちゃんの体を丁寧に洗っています。すると、赤ちゃんの皮膚からは皮脂も常在菌も無くなってしまいます。その結果、黄色ぶどう球菌などの悪玉菌にとって居心地のいい皮膚になり、乾燥し、肌があれ、湿疹を起こしアトピー性皮膚炎になりやすくなります。肌に優しいといわれている弱酸性のボディーソープで洗っても、皮脂がなくなってしまうのは同じです。赤ちゃんの肌にいい石鹸などないのです。
 
 では、どうしたらいいのでしょう。簡単です。石鹸を使わずお湯だけでやさしく洗ってあげればいいのです。出来ればお母さんも裸になって抱っこして一緒にお風呂に入れば、お母さんの常在菌を赤ちゃんに分けてあげることが出来るのでより効果的です。汗や垢による汚れは水溶性なので、お湯だけで十分に落とすことが出来ます。もともと石鹸は機械油などの水では落ちない汚れを落とすために発明されたものであって、汗や垢を落とすためのものではないのです。大人の場合も、においの元になるアポクリン汗腺の多い部分、陰部、わきの下、手のひら、足の裏などは石鹸で洗ったほうがいいかもしれませんが、その他の部位については、お湯で流してタオルで拭くだけで十分だと思います。私も実際に実行しています。おかげで冬でも乾燥することなく、つやつやの玉肌を保っています。また、我が家の末っ子は軽いアトピー性皮膚炎だったのですが、石鹸を使わなくなってから、肌の乾燥がなくなりすっかり良くなりました。
 
 肌が乾燥しやすく、汗もあまりかかない冬の間だけでも試してみてはいかがでしょうか。
 

スポーク外傷の男の子

2015.9.25 カテゴリー|湿潤療法

4歳の男の子

おじいちゃんの自転車の後ろの荷台に乗っていて、後輪に左足を巻き込まれて受傷しました。翌日に当院を受診しました。

歩けないほど痛がっていたので、まずレントゲンを撮り骨に異常がないことを確認しました。

初診時の創の状態です。

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お母さんがきれいに洗ってくれたので創はきれいです。そのままプラスモイストDCをあてて、翌日また来てもらいました。創の状態に問題ないことを確認し、以後は自宅でプラスモイスト交換をしてもらい週1回くらい通院してもらいました。

11日後の状態です。きれいに治りました。

13387b.jpg

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