2017.11.30 カテゴリー|医療に関する迷信
40代の男性
8月に、野球でボールを投げると右肩が痛くなるということで、当院を受診しました。
レントゲン所見に異常なく、理学所見から右肩関節周囲炎(四十肩)と診断し、肩峰下滑液包内ブロックを行いました。
それからずっと通院がなく、3ヶ月以上すぎてから再来して、いきなり「痛みが取れないから、某総合病院に紹介して欲しい」と言われました。
『はああああ、何いってるの?治療してないんだから痛みとれないのは当たり前じゃないの?』と思いましたが、口には出さずに素直に紹介状を書いてあげました。
こういうよくわかってない系の患者さんとは議論をしても時間とエネルギーの浪費にしかならないことが多いからです。
この患者さんがなぜこのような行動に出たか推理してみました。
「四十肩」と診断された。→ 四十肩はほっとけば治ると誰かに言われた。→ ほっといたけど治らないから四十肩という診断は誤診でもっと違う重大な病気に違いない。→ 某総合病院で詳しく調べてもらわなきゃダメだ。→ 某総合病院にかかるには紹介状が必要だ。→ 誤診した医者に紹介状を書いてもらおう。
という流れじゃないかと思います。きっとそうだ。間違いない。
この流れでどこが間違っているかというと、「四十肩はほっとけば治る」というところです。
「四十肩(五十肩)はほっとけば治る」は迷信です。
四十肩はほっとくと肩周囲の筋肉や関節包が硬くなり動きが悪くなって痛みが慢性化してひどくなります。
早期にきちんと治療をして、慢性痛にならないようにするのが一番大事です。
関連ブログ 「五十肩はほっとけば治る」は迷信
2017.11.27 カテゴリー|医療に関する迷信
高血圧の新基準、最高140を130に 改善必要な「黄信号」 米ガイドライン
http://www.afpbb.com/articles/-/3150432
米国心臓協会(AHA)は13日、高血圧の診断基準について、これまでの140(最高血圧)/90(最低血圧)mmHgよりも低い130/80 mmHgとし、血圧がこの数値に達した時点で治療を開始すべきとの再定義を発表した。
従来の基準値では米国民の約3分の1に当たる32%が高血圧と見なされていたが、新たな基準値では国民の半数近い46%が高血圧と定義されることになる。
米国民の半数近くが高血圧って・・・・
半数の人がかかっているなら、もうそれは病気じゃなくて正常な状態なんじゃないの?
先日の講演会で林先生は「入院してきた高齢の患者さんの血圧の薬を中止すると、みんな元気になる。でも退院してまた血圧の薬を飲み始めるとまた元気がなくなる」とおっしゃっていました。
一般的に、血圧が高くなると動脈硬化が進んで、脳卒中などの危険が高くなるから血圧を下げなければいけないと考えられています。
でも、これもコレステロールの話と同じで原因と結果が逆になっているんじゃないでしょうか?
老化や喫煙、糖質のとりすぎ、肥満などが原因で血管が硬くなって、血管の通りが悪くなるから、脳や消化管、筋肉などの臓器に血液を届けるために心臓ががんばって働いて血圧を上げるのです。
それなのに、薬で血圧を下げちゃったら臓器に血液が行渡らなくなって元気もなくなりますよ。
老化はどうしようもありませんが、禁煙して糖質制限をして、加圧トレーニングをして肥満を解消すれば、動脈硬化を防ぐことができます。
私が医学生だった頃は最高血圧160以上で高血圧と診断されていました。
1993年から最高血圧140以上の人を境界型高血圧と診断されるようになりました。
2004年、日本高血圧学会は、診療指針を改定し、65歳以上の高齢者については、「降圧目標値」(下げるべき数値)を従来のグレーゾーンの「140~160」から「140未満」に引き下げました。ところが、奇妙なことに、この診療指針には「この目標値が妥当かどうか、現在のところエビデンス(証拠)がない」と書かれているそうです。
証拠がないのに基準を厳しくするとか怪しくね。
血圧の薬を売るために、製薬会社に対して学会の偉い先生が忖度してんじゃないの?
とりあえず、血圧が160以下で特に症状もなければ血圧の薬を飲まなくてもいいと思うよ。
2017.10.12 カテゴリー|その他の治療について
70代の女性、以前から骨粗鬆症で当院に通院していました。
6月に受診した際に、2ヶ月前から両手のしびれが出て10日前から両足のしびれが出現したと訴えました。
しびれの部位は末梢神経障害によくあるグローブ・ストッキング型でしたが、念ため頚椎症性脊髄症も疑い、診察と検査を行いました。
巧緻障害と歩行障害なし、深部腱反射は正常、病的反射なし、頚椎レントゲンでも異常なし。
やはり末梢神経障害のようです。
末梢神経障害といえば一番多いのは糖尿病性神経障害ですが、糖尿病はありません。
その代わり、高脂血症があり、数ヶ月前からスタチン系抗コレステロール薬が処方されていました。
その薬の副作用だろうと診断し、内服を止めてもらいました。
2ヶ月後に再診したときにはしびれは消失していました。
やはり、スタチン系抗コレステロール薬の副作用だったようです。
以前にも書きましたが、コレステロールは薬を使ってまで下げる必要はありません。
コレステロールが高いと血管が詰まると考えている人が多いようですが、それは原因と結果をはき違えています。
まず、老化や喫煙(受動喫煙も含む)や糖質のとりすぎによる高血糖などが原因で血管の内壁が傷つきます。
内壁が傷つくと血管が破れてしまうので、コレステロールがその穴を塞ぎます。
血管損傷がひどいと、コレステロールがたくさん必要になり、肝臓がコレステロールを大量生産するため、高コレステロール血症になります。
つまり、コレステロールが高いから血管が詰まるのではなく、血管が傷ついているからコレステロールが高くなるのです。
血管損傷を火事だとすると、コレステロールは消防士です。
薬でコレステロールを下げるということは、
「火事が多いところに消防士がたくさんいるから、消防士が火事の原因だろう。消防士を減らせば火事が減るに違いない。」
といっているのと同じことです。
バカげた話です。
難治性の慢性疼痛患者さんの中には、このスタチン系抗コレステロール薬を飲んでいる人がたくさんいます。
本当は飲むのを止めてもらいたいのですが、痛みの原因はそればかりじゃないし、内科の先生ともめるのも嫌なのでなかなか言い出せません。
2017.7.19 カテゴリー|トリガーポイント注射
50代の女性
3ヶ月前に首を寝違えました。
その3日後くらいから左の首から背中から腕の痛みがひどくなり、近所の整形外科を受診しました。
MRIを撮って首に2カ所ヘルニアがあるといわれました。
痛いところに局所注射をするとその日だけは眠れるけど、週に1回しかしてくれないのでロキソニンと睡眠薬を飲んでいました。
痛みが取れないため、1ヶ月前に当院を受診しました。
長く続く痛みのため暗い表情で診察室に入ってきました。
下図のごとくトリガーポイントを認めました。
寝違えが原因の筋痛症で、ヘルニアは痛みと関係ないことを説明してトリガーポイント注射を行いました。
症状の経過や年齢からサインバルタの良い適応であると考え、サインバルタを処方しようとしましたが、
「以前に腰痛でかかった病院から、サインバルタやトラムセット、リリカなどが処方されたけど、すべて副作用がひどくて飲めなかった」
と言われたので、とりあえず、ロキソニンテープのみ処方し、痛みが取れなければ毎日注射に来てくださいと説明しました。
1回目の注射で少し良くなりましたが、その後はあまり良くならなかったようなので、睡眠薬を止めてリボトリールを出しましたが、良くなりませんでした。
やはりサインバルタの良い適応であると確信し、患者さんに次のように説明しました。
痛みは神経経路を伝って上行性に脳に伝えられますが、それとは別に下行抑制系という痛みを和らげる働きもつを神経径路もあります。
慢性痛の人は下行抑制系の働きが悪くなっているため、痛みに対して過敏になり少しの痛みをすごくつらく感じるようになります。
サインバルタはこの下行抑制系の働きを改善する作用があるので、いまの○○さんにはぴったりのお薬です。
神経に働く薬なので、吐き気や眠気などの副作用が出ますが、3日くらいで耐性ができて副作用が出なくなります。
副作用が出ても3日くらいは我慢して飲んでください、きっと良くなります。
サインバルタを飲んで、最初は頭がボーッとしたり、食欲が低下したりなどの副作用が出ましたが、1週間後には痛みが改善して、表情も明るくなり、それまでずっと休んでいた仕事に復帰できました。
サインバルタとハサミは使いようです。
ちなみに、日曜日は忙しくてこんな丁寧な説明できませんよ。
なるべく平日の空いている時間に受診してくださいね。
2017.3.17 カテゴリー|その他の治療について
20代の女性
1ヶ月くらい前から、右手背の手首の近くにしこりが出来ました。
ネットで調べて、自分自身でガングリオンだろうと診断して、確認のために当院を受診しました。
エコーで検査しました。
皮下脂肪の下で骨膜の上に直径6ミリくらいの球状の低エコーの腫瘤を認めました。
典型的なガングリオンの画像です。
サイズも小さいし、痛みやしびれもないので、暇なときに指で押してつぶすように説明しました。
サイズが大きくて、患者さんが希望する場合18Gの針で穿刺してゼリー状の内容物を吸引します。
ガングリオンが神経を圧迫していて、しびれや麻痺が出ている場合は手術が必要なので、土浦協同病院の手の外科に紹介します。