2012.11.13 カテゴリー|医療に関する迷信
高級化粧品にはコラーゲンやヒアルロン酸がたくさん含まれています。しかし、高級化粧品を、いくら塗ったところで、コラーゲンやヒアルロン酸が皮膚に吸収されることはありません。
コラーゲンやヒアルロン酸は、糖やアミノ酸がいくつもつながって出来ている高分子の物質です。高分子の物質は、角質を通り抜けられないので、皮膚の細胞や皮下組織に吸収されることはありえません。
皮膚にある毛穴や汗腺から吸収されると説明している場合もありますが、これもインチキです。毛穴や汗腺は、皮脂や汗を排泄(分泌)する器管です。消化管でいえば、口ではなく肛門です。高分子の物質を吸収するような働きはありません。
ヒアルロン酸は親水性が非常に高いので、塗った直後は皮膚の表面に水分を保持する効果があります。しかし、その水分が角質を通って皮膚に潤いを与えるという話は眉唾です。親水性が高いということは、ヒアルロン酸が水分子と結合しやすいということです。むしろ、角質の中の水分をヒアルロン酸が奪い取ってしまう可能性のほうが高いでしょう。
基礎化粧品として、お勧めなのが、ワセリンです。お風呂上りや洗顔後に、ワセリンを薄く塗り、角質をコーティングすることで、皮膚や角質から水分が逃げていくことを防ぎ、皮膚の潤いを保つことが出来ます。
「コラーゲンやヒアルロン酸を皮膚に塗ると肌の張りがよくなる」とういうのは迷信です。
2012.11.13 カテゴリー|医療に関する迷信
ヒトも皮膚呼吸をすると思っている方がたくさんいるようですが、ヒトは皮膚呼吸をしません。
呼吸とは、外気中の酸素と、体内の二酸化炭素を交換することです。皮膚呼吸とは、「体表を用いて行われる外呼吸」のことです。分かりやすくいえば、皮膚で酸素と二酸化炭素の交換をするということです。
ミミズやヒルなどの環形動物は、肺やエラを持たず、皮膚呼吸のみで呼吸しています。脊椎動物では、カエルなどの両生類や爬虫類が、肺やエラによる呼吸と併せて、皮膚呼吸も行っていますが、鳥類や哺乳類はほとんど皮膚呼吸を行っていません。
肺では、酸素を多く含む外気と、二酸化炭素を多く含む血液が流れている毛細血管が接触することで、濃度勾配に従って、酸素と二酸化炭素の交換が行われます。
しかし、人間の体は皮膚で覆われていて、皮膚の外側は更に角質で覆われています。角質は外敵の進入を防ぐためのバリアーで、血液は流れていません。血液が流れていないので、酸素と二酸化炭素の交換はできません。だから、人間は皮膚呼吸できないのです。
美容や発毛の分野で、「皮膚呼吸を促して、美肌や発毛の効果がアップする」みたいな、宣伝文句をよく耳にしますが、ヒトは皮膚呼吸をしないので、これらの宣伝文句はインチキです。だまされないようにしましょう。
「ヒトも皮膚呼吸をする」というのは迷信です。
2012.11.12 カテゴリー|トリガーポイント注射
82歳女性
骨の変形がかなり進行した両変形性膝関節症があり、30年前から某総合病院に通院していました。しかし、レントゲン上の変形のわりに、痛みはたいしたことなく、畑仕事もできていたので、湿布を貰っていただけでした。
3週間ほど前に転倒してから、痛みのため左膝が伸ばせなくなり、歩けなくなりました。痛みのため夜も眠れないほどなので、近所の接骨院を受診しました。そこで、膝が伸びないのは膝が脱臼しているからではないか?と言われ、当院を紹介されました。
すぐにレントゲンを撮りました。上がそのレントゲンです。骨折や脱臼はなく、高度の変形性膝関節症を認めるだけでした。触診をすると、左腓腹筋が腫れて緊張していて、圧痛を認めました。
腓腹筋の外傷性筋筋膜性疼痛症候群と診断し、圧痛部にトリガーポイント注射を行いました。
1回の注射で、夜眠れるようになりました。
5回の注射で、圧痛部を押さえれば歩けるようになりました。
7回の注射で、杖歩行ができるようになりました。
8回の注射で、膝が元通り伸ばせるようになりました。
レントゲンで骨がものすごく変形していると、痛みの原因をそこに求めたくなりますが、骨折や脱臼をしてなければ、骨が痛むことはありません。(正確には、骨折や脱臼で痛むのも骨ではなく、骨膜や筋肉などの周辺組織です。)
痛いのは骨ではなくて筋肉なのです。
2012.11.12 カテゴリー|骨折・捻挫の治療
9歳の少女
学校の鉄棒からおちて受傷しました。救急病院を受診して、骨折しているので三角巾固定され、整形外科を受診するように言われ、2日後に当院を受診しました。
上が、初診時のレントゲンです。上腕骨が上から6cm位のところで折れていて少し曲がっています。このままくっつけば、問題ないので、整復や手術をせず、このまま保存的に治療しました。三角巾はつっていると首が痛くなるのではずして、ストッキネットとスポンジで自作したスリングで固定しました。
10日後に再診した際、痛みはなく、レントゲン上も転位を認めなかったので、スリングを外して、右腕を自然に垂らしてもらい、自動拳上(自分の力で右腕を上げること)のみ禁止しました。また、自宅で振り子運動をするように指導しました。
振り子運動http://www.4050kata.net/ch4/iron.htm
5週間後のレントゲンで仮骨が十分に形成されていたので、自動拳上も許可しました。
7週間後のレントゲンで、骨癒合が十分であり、動きの制限もないことを確認し、治療を終了としました。
上腕骨に近位部骨折では、脱力して重力に逆らわずに腕を垂らしている状態が、骨折部に一番負担がかかりません。逆に、自分の力で腕を上げようとすると、てこの原理で骨折部に強い力が加わり、骨がずれてしまいます。なので、上腕骨骨折の治療においては、骨がつくまで腕を自分で上げないようにしてもらうことが大切です。そのかわり、力を抜いた状態でいられれば、ギプスや三角巾などで腕を長期間固定する必要はありません。
2012.11.12 カテゴリー|医療に関する迷信
交通事故にあって、痛みも痺れもないのに、「後から痛くなると困るから検査してください」と言って、受診する患者さんがけっこういます。
こういう患者さんが来ると、いつも困ってしまいます。どこも痛くない人の、何を調べらばいいのでしょう。全身のレントゲンでもとればいいのでしょうか?一応、事故の時に痛くなることが多い、首と腰の動きを調べて、痛みによる動きの制限がないことを確認して、「心配ないでしょう。交通事故の痛みが後から来るとというのは、迷信です。」と説明しています。
交通事故にあって、骨折や脱臼など、レントゲンで分かる怪我を負ったときは、事故直後から強い痛みがあるはずです。それ以外の、レントゲンやCTやMRIなどの画像所見で異常がない痛みは、事故による筋肉の痛み(筋筋膜性疼痛症候群)です。要するに筋肉痛です。
事故による筋肉痛には2種類あって、事故の衝撃で筋肉がのばされたことによる筋肉痛と、火事場の馬鹿力による筋肉痛です。通常、筋肉は最大筋力の30%くらいしか使えないようになっています。それ以上の筋力を使うと筋繊維が壊れてしまうからです。しかし、事故にあった場合などは、体を守るために100%の力を発揮します。これを、昔から火事場の馬鹿力とよんでいます。火事場の馬鹿力を出すことで筋繊維が壊れ筋肉痛を起こします。
子供の運動会などで、急に走ったとき、翌日や翌々日くらいに筋肉痛が出た経験がある方はたくさんいると思います。それと同様に、交通事故による筋肉痛も3日以内に出現します。そして、ほとんどの場合、運動会の筋肉痛と同様、1週間くらいで良くなります。
つまり、交通事故の痛みは、通常3日以内に発生します。それより後に出た痛みは、交通事故と関係がない痛みです。
「交通事故にあうと、後から痛くなる」というのは迷信です。