2012.11.08 カテゴリー|医療に関する迷信
上のグラフは、平成22年4月から平成24年10月までの31か月間に、当院に交通事故による怪我の診察や治療のために通院して、治癒または治療を終了した患者さんの治療期間を示したものです。
グラフからわかることは、
要するに、「交通事故による怪我は意外とすぐ治る。」ということです。
「交通事故の治療は長くかかる」というのは迷信です。
2012.11.07 カテゴリー|その他の治療について
58歳男性
1年くらい前から小指にしびれが出現し、半年前に当院を受診しました。
知覚障害はなく、深部反射の異常もありませんでした。
左肘のレントゲンで肘部管内に遊離骨を認めたので、軽い肘部管症候群と診断しビタミンB12製剤を処方しました。
肘部管症候群 http://www.joa.or.jp/jp/public/sick/condition/cubital_tunnel_syndrome.html
2週間後再診した際、痺れが全くよくなっていなかったので、尺骨神経の神経伝導速度測定を行いましたが、肘部管における神経伝導速度の低下は認めず、肘部管症候群は否定的になりました。
そこで、MPS(筋筋膜性疼痛症候群)によるしびれを疑い、棘下筋や尺骨手根伸筋などにトリガーポイント注射を行いましたが、痺れは全く取れませんでした。
MPS(筋筋膜性疼痛症候群)http://www.jmps.jp/general/whatsmps
原因不明の痺れということで、リボトリールやリリカを処方して、4か月間様子を見ましたが、やはり痺れはとれませんでした。
2か月くらい前から両手に力が入りにくくなりました。神経学的所見には異状ありませんでしたが、頸椎症脊髄症を疑い、頸椎のMRIを撮りましたが、脊髄に対する圧迫所見は認めませんでした。
頸椎症脊髄症http://www.joa.or.jp/jp/public/sick/condition/cervical_spondylotic_myelopathy.html
そこで、もう一度よく手のひらを診察してみました。すると、両方の中指と小指の手のひら側の付け根に圧痛を認めました。
もしかしたら腱鞘炎(ばね指)による症状なのではないかと考え、それぞれの圧痛部にケナコルトで腱鞘内注射を行いました。
腱鞘炎(ばね指)http://www.joa.or.jp/jp/public/sick/condition/snapping_finger.html
1週間後に再診した時には、両手の力が入るようになり、あれほど治らなかった小指の痺れもなくなっていました。
小指の痺れも、腱鞘炎が原因だったのです。腱鞘炎の患者さんは、たいてい痛みや引っ掛かり感を訴えてきます。この患者さんは何度聞いても痛みはなくしびれだけだと訴えていたので、腱鞘炎という診断になかなかたどり着けませんでした。腱鞘炎によるこわばった感じを痺れと訴えていたのだと思います。
びりびりした感覚の異常のほかに、関節のこわばり、筋力の低下なども「しびれ」と表現する患者さんがいることを、もう一度、頭にしっかり叩き込まなければいけないと反省しました。
2012.11.06 カテゴリー|トリガーポイント注射
38歳の女性
2年前から肩こりがあり、1年前からうめまいが出現するようになりました。
めまいについて、数件の総合病院で診察と検査を受けましたが、どこにいっても原因不明と言われていました。
1か月前に当院を受診しました。
両方の胸鎖乳突筋と僧帽筋にトリガーポイントを見つけ、トリガーポイント注射を行いました。
注射したその日からめまいが軽快しました。
2日後くらいに、再びめまいが出現しましたが、再度トリガーポイント注射を行ったら軽快しました。
首の両脇にある、胸鎖乳突筋にトリガーポイントができると、めまいのほかに、頭痛などの症状が出ます。
原因不明のめまいや頭痛の多くが、胸鎖乳突筋のトリガーポイントが原因で起きているのではないかと思われます。
2012.11.06 カテゴリー|湿潤療法
80歳の近所の元気なおばあちゃん
両変形性膝関節症による両ひざ痛と、頸椎症脊髄症による歩行時のふらつきで、5年前から当院に通院していました。
ある日、友達に勧められ、鍼灸院を受診しました。
しかし、鍼灸院で右下腿に温熱療法を受けていて、低温やけどになってしまいました。
このおばあちゃんは、頸髄症脊髄症による軽い知覚低下があるため、熱さがよくわからなかったようです。
鍼灸院の先生には「すぐに医者にかかるように」と言われたそうですが、内緒で鍼灸院にかかったことが、申し訳なくて、当院を受診できませんでした。
自分で、オキシドールと、オロナイン軟膏で治療していましたが、1か月経っても、全然よくならないばかりか、かえって悪化してくるので、覚悟を決めて当院を受診しました。
上の写真が、受診時の状況です。創の周囲には厚い瘡蓋が出来ていて、中央部はぶよぶよした不良肉芽になっています。ずっとお風呂に入っていなかったので、周辺皮膚は垢だらけです。
ワセリンとプラスモイストで、まず瘡蓋を溶かしました。
翌日の写真です。瘡蓋も溶けてにくげもきれいになっています。
1か月間、湿潤療法を続けて、きれいに治りました。
この患者さんは、頸椎症脊髄症があります。頸椎症脊髄症は手術をしなければ治らない疾患ですが、この患者さんの場合、高齢であり、またふらつきはあってもグランドゴルフなどもできるので、歩行障害の進行を遅らせるために加圧トレーニングをしてもらっていました。
僕は鍼灸の先生の中に、トリガーポイントに鍼灸治療を行い、整形外科医より上手に痛みの治療をしている先生がいることを知っているので、鍼灸治療に対しては肯定的に考えています。
でも、頸椎症脊髄症や糖尿病性神経障害などで、知覚が低下していて、熱さがわかりにくくなっている方は、このおばあちゃんのようにやけどをしてしまうことがあるので、鍼灸治療を受ける際は、主治医と相談してからのほうがいいでしょう。
2012.11.05 カテゴリー|トリガーポイント注射
74歳男性
10年前から左膝痛が出現し、鍼灸院や接骨院に通院していました。
レントゲン上、左膝関節が、ものすごく変形しています。
でも、痛いのは、膝の裏側だけです。
ちなみに、右膝も同じくらい変形していますが、こちらは全然痛くないそうです。
左膝の膝窩筋にトリガーポイント注射をしたら、痛みは改善しました。
この方のように、膝がものすごく変形していても、あまり痛くない人もいれば、レントゲンやMRIで異常所見がなくても、ものすごく痛い人もいます。
骨の変形と痛みは比例しません。なぜなら、痛いのは骨ではなく、関節の周りの筋肉だからです。