2013.6.27 カテゴリー|医療に関する迷信
プラセボ(偽薬)とは、有効成分が全く入っていない乳糖や澱粉で作られた薬理作用のない偽のお薬です。
このプラセボを、「これは痛みによく効くよ」と言って、患者さんに飲ませると3~7割の人の痛みが楽になります。
痛みはストレスや不安などの心理的な影響を受け易いので、たとえ薬理学的に効果がない薬であっても、飲む側が「これでよくなる」という安心感を持つことにより、痛みが緩和されるのです。これがプラセボ効果です。
コンドロイチン酸やグルコサミンやヒアルロン酸などの薬理作用がほとんどないサプリメントや医学的にはインチキとしかいえないような健康機具で痛みが楽になる人がいるのも、このプラセボ効果です。
数年前に米国でプラセボについて面白い研究報告があったので紹介します。
被検者82人を無作為に分けて、同じプラセボを飲ませました。
片方のグループには「この薬は最近開発されたばかりで1錠2万5千円します。」と説明して飲ませました。
もう一方のグループには「最近値下げされた10円の薬です。」と説明して飲ませました。
その結果、高い薬だと説明されたグループでは85%で鎮痛効果が認められたのに、安い薬だと説明されたグループでは61%しか効果がありませんでした。
「高価な薬の方が効く」という思い込みによる暗示で薬のプラセボ効果がアップしたのです。
このことから考えると、サプリメントや健康機具も高価なほどプラセボ効果があがりよく効くことになります。
たとえ医学的に根拠のない治療でもプラセボ効果で患者さんが楽になるなら、それはそれで良いと思いますが、「健康になりたい」という弱みに付け込んで、原価の何十倍もの法外な値段でサプリメントや健康機具を売りつけるのは倫理的にかなり問題があると思います。
また、サプリメントの中には有害物質を含んでいるものや、摂り過ぎによりかえって健康被害を起こすものもありますので注意が必要です。
2013.6.26 カテゴリー|糖質制限
早いもので、私が糖質制限をはじめて1年半になりました。
当初は順調に体重が減っていき、半年で6㎏以上のダイエットに成功しました。
しかし、10か月を過ぎたころから少しずつリバウンドし始めて、2㎏位戻ってしまいました。
そのころ、毎朝チェックしている「かくちゃん先生」のブログで、EPA・DHAには鬱や認知症、心筋梗塞の予防など、健康にいい効果がたくさんあることを知りました。
4か月くらい前から健康のためにロトリガ(EPA・DHA製剤)を飲み始めたら、また少しずつ体重が減り始めました。
EPA・DHAを飲めば、誰でもやせるのかどうかわかりませんが、私のように糖質制限中でリバウンドしたような方、体重の減少が停滞してる方にはダイエット効果があるかもしれません。
2013.6.25 カテゴリー|トリガーポイント注射
60代の男性
ゴルフが大好きなおじさんです。
また、体力づくりとダイエットのため、毎日ウォーキングを6㎞していました。
6年前、ゴルフ中に急に右臀部に激痛が出現しました。
テレビでトリガーポイント注射の特集を見て、当院を受診しました。
右臀部にトリガーポイントを認めたため、トリガーポイント注射をして、すぐに良くなりました。
1年半くらい前に、左臀部にも痛みが出現しました。トリガーポイント注射を2回打った後、治療に来なくなりました。
半年後に、再び、当院を受診しました。
前回受診した後、知人の勧めもあり某総合病院整形外科を受診し、そこで腰部脊柱管狭窄症と診断され、手術を受けたそうです。
手術後、痛みは改善し、一時ゴルフもできるようになりましたが、田植えの準備を手伝った後から、再び右臀部痛が出現しました。
手術医の診察を受けましたが、骨には問題がないと言われ、痛み止めと湿布を貰ったが、全然よくならなかったようです。
トリガーポイント注射を行い、一度はゴルフができるところまで回復しましたが、2か月後にまた痛みが悪化して、それ以後、再び治療に来なくなりました。
風のうわさで聞くところでは、
その後、あちこちの病院を受診して、様々な治療を受けたようですが、症状はよくならなかったようです。
そして、先月、某大学病院で2度目の手術を受けたそうです。
でも、手術後もあまり痛みはとれていないそうです。
この方の様に、腰の手術を何度も受けてもよくならない患者さんをMOB(multiply operated back)と呼びます。
MOBの患者さんは他にもたくさんいます。
なぜ、何度も手術をしても治らないのでしょう。
それは、そもそも必要のない手術をしているからです。
この患者さんは、ゴルフやウォーキングのやりすぎによる筋筋膜性疼痛症候群(MPS)でした。
トリガーポイント注射で症状が改善していたことからも、それは明らかです。
腰部脊柱管狭窄症ではなかったのです。
手術による儀式的効果と手術時の全身麻酔による筋弛緩効果で一時的に症状は改善しても、その効果が切れると再び痛くなってしまいます。
むしろ、不必要な手術を受けたことにより筋肉が損傷され、MPSは手術以前より悪化してしまいます。
痛みが悪化したのは、前回の手術が不完全だったからだろうと誤診され、また手術をうけます。
すると、MPSはさらに悪化して、どんどん悪くなっていきます。
これがMOBの正体です。
この患者さんも、ドクターショッピング(紹介状もなく勝手に複数の医師の診察を受けること)をせずに、ずっとトリガーポイント注射を続けていれば、今でもゴルフを続けていられた可能性があるのではないかと思います。
関連ブログ
筋筋膜性疼痛症候群(MPS)とは?
2013.6.24 カテゴリー|その他
私は漫画が大好きです。
医療漫画もたくさん読みました。
「コウノドリ」は産科医師が主人公です。
ブラックジャックやDrコトーやスパードクターKみたいな、神の手を持つ天才医師ではありません。
(ジャズピアニストという裏の顔を持ちますが)普通の産科医です。
でも、赤ちゃんやお母さんを救うために最善を尽くそうと努力しています。
「出産はさ、結果だから。
仮に僕らの判断が間違いだったとしても、母子ともに無事で何の問題もなければ、誰にも責められることはない。
逆に、僕らの判断に何も落ち度がなくても、母子のどちらかにでも問題が生じた場合、
患者との信頼関係なんてすぐに崩れてしまうよ。」
この主人公の言葉を読んで、大野病院事件のことを思い出しました。
地域医療に懸命に尽くしていた若い産科医が、手術ミスで患者を殺したとして逮捕された事件です。
裁判では、産科医に落ち度がなかったことが認められ、無罪となりました。
産科医は常に、訴訟の危険にさらされています。
でも産科医がいなければ、危険にさらされるのは赤ちゃんとお母さんです。
この漫画をたくさんの人に読んでもらって、産科医に対する共感と理解を深めてもらえればいいなと思います。
福島県立大野病院産科医逮捕事件
2013.6.24 カテゴリー|その他
当院は敷地内全面禁煙です。
なので、駐車場にも灰皿等は置いていません。
たまに、タバコの吸い殻をポイ捨てしていく人がいます。
今日も一つ落ちてました。
私が拾って、ごみ箱に捨てました。
喫煙者の中には、マナーがない人が、けっこういますよね。
タバコを吸って、それが原因で病気になって、苦しんで早死にしても、それは自己責任だから、別にかまいませんが、他人に迷惑をかけるのだけは止めて欲しいものです。