2012.11.05 カテゴリー|湿潤療法
76歳男性
狭心症があり、ワーファリン、ニトロールなど薬を8種類内服中
飼い犬に右手をかまれて受傷しました。
手の甲の皮膚が、逆フラップ状にはがれていました。
壊死する可能性が高いことを説明し、創内にドレーンを入れて、テープで皮膚を固定し、湿潤療法を行いました。
1週間後 、予想通り皮膚の一部が壊死しました。(創の中央の黒い部分が壊死組織です。)
壊死組織は無理にはがさず、そのまま湿潤療法(プラスモイストトップ+ガーゼ)を続けて自然と溶けるのを待ちました。
2週間後、壊死組織はきれいに溶けてなくなりました。
この患者さんはワーファリンを飲んでいるので、壊死組織を無理にはがした場合、出血して止まらなくなった可能性があります。
そのまま湿潤療法(プラスモイストV)を続けて、5週間後には皮膚がほぼ再生されました。
犬などの動物に咬まれた創は、そのまま縫合してしまうと、かなり高い確率で感染を起こします。
無理に縫合しなくても湿潤療法を行えば、キズはきれいに治ります。
2012.8.28 カテゴリー|湿潤療法
10歳の少女
おばあちゃんの家に遊びに行っていて、きゅうすをひっくり返してしまい、右太ももの前面部に大きな火傷を負ってしまいました。
救急病院で、応急処置を受け、翌日、家の近くの総合病院の皮膚科を受診して、軟膏とガーゼによる治療を受けました。
しかし、お母さんが、湿潤療法について既に知っていて、この治療ではダメだと判断し、ネットで調べて、当院を受診しました。
上の写真が、初診時の水泡膜を除去した後の写真です。
穴あきポリ袋とペットシートによる湿潤療法のやり方をお母さんに覚えてもらい、自宅で処置をしてもらいました。
10日後には、きれいに皮膚が出来ました。
あとは、ワセリンを塗ってもらって、皮膚の乾燥を防ぎ、かつ日焼けをしないように注意してもらえば、ほとんどあとが残らずに治ると思います。
2012.8.20 カテゴリー|湿潤療法
13歳の少女
バイクの後ろに乗っていて、マフラーに触ってしまい、左ふくらはぎをヤケドしました。
近くの皮膚科を受診し、軟膏による治療を受けていましたが、浸出液が多いので乾燥させるために、熱傷に「でんぷん」をかけるようにと言われました。
「でんぷん」をかけると、ものすごく痛いため、母親がインターネットで調べて、当院を受診しました。
上の写真は、ガーゼを剥がした直後の写真です。熱傷の表面に「でんぷん」がこびりついています。
キシロカインゼリーで表面麻酔をしてから、「でんぷん」を可能な限り除去しました。
穴あきポリ袋とペットシートによる処置を自宅でしてもらいました。
3日後には、熱傷はかなりきれいになりました。しかし、痛みはまだ残っていました。おそらく、「でんぷん」をかけていた時の痛みがあまりにもひどかったため、痛みが皮膚に焼き付いてしまったのでしょう。
途中、浸出液が減ったためハイドロコロイドに切り替えました。
10日後には、ほぼきれいに上皮化しました。痛みも消えました。
以前にこのブログで紹介しましたが、強い痛みを我慢していると「痛みの悪循環」という現象がおきます。https://nishibori-seikei.com/blog/2012/03/post-23.html
熱傷の治療も、可能な限り痛くないように治療するのが、痛みを残さないために最も重要です。
2012.8.13 カテゴリー|湿潤療法
ちょっと古いネタですが・・・
8月2日の「新しい創傷治療」の「更新履歴」で、僕が送ったメールを取り上げてもらいました。
茨城県で湿潤治療といえばこの人,にしぼり整形外科の西堀先生ですが,またまた面白いメールをいただきました。
「プロテインを日常的に摂取している人は傷の治りが早い」というのは面白い観察ですが,私は残念ながらまだ経験したことがありません。どなたか,このような例を経験なさった方はいらっしゃいますか?
後半の「夏井真琴」ですが,私はテレビはニュース以外は見ていないので初めて知りました。恐れ多くも石原さとみ様が「なついまこと」とは!! 恐縮至極・恐悦至極にございます。もちろん,テレビ関係者にもドラマ関係者にも知り合いはいないので,たまたま偶然の一致ですね。
それにしても,可憐なヒロインに「夏井」という超マイナーで超ローカルな苗字(秋田県男鹿市の某地域は夏井だらけですが,秋田県以外には「夏井」はほとんど生息していないはずです。全国でも2,000軒とか3,000軒くらいのマイナー苗字です)をつけたんでしょうか? ほかならぬ「夏井一族」が困惑気味でございます。
プロテインと創傷治癒について、他の先生の意見が聞けたらブログに書こうと、様子を見ていたのですが、残念ながら誰も返答してくれませんでした。
こんど、プロテインを飲んでいる患者さんが来たらデジカメで記録して、報告したいと思います。
苗字ネットhttp://www.myoji-yurai.net/searchResult.htm?myojiKanji=%E5%A4%8F%E4%BA%95 によると「夏井」という姓は、東北に多いようですね。ドラマの「夏井真琴」さんは高知県の田舎の漁村出身という設定ですが、高知県に夏井さんは実在するのでしょうか?
ちなみに、「西堀」という苗字は、和歌山県や三重県に多いようです。http://www.myoji-yurai.net/searchResult.htm?myojiKanji=%E8%A5%BF%E5%A0%80 僕のひいじいちゃんは、滋賀県から茨城県の水海道市に引っ越してきたそうです。
2012.7.31 カテゴリー|湿潤療法
30代の男性
2か月前から左下腿に痒みが出現し、徐々に全身に痒みが広がっていきました。近所の皮膚科を受診して、「アトピー性皮膚炎」と診断され、治療を受けていましたが、症状が改善しないため、当院を受診しました。
上の写真は、初診時の左下腿の状態です。痂疲を伴う大きな湿疹が左下腿に拡がっています。一見して「トビヒ(伝染性膿痂疹)」によく似ていました。また、全身に痒みを伴う小丘疹が散在していました。
左下腿の湿疹は「膿痂疹」と診断し抗生剤の内服を開始し、痂疲をきれいに除去して、プラスモイストを貼りました。全身の小丘疹は左下腿の膿痂疹が原因の「自家感作性皮膚炎」と診断し、痒みに対しステロイドの外用と抗ヒスタミン薬の内服を開始しました。しかし、自家感作性皮膚炎は、その原因になっている左下腿の湿疹が治れば、自然と良くなるので、まず、左下腿の湿疹の治療に集中しました。
2日後の左下腿の状態です。痂疲はきれいになくなり、湿疹も大部分が上皮化し治っています。しかし、この時点では自家感作性皮膚炎は良くなっていませんでした。
膿痂疹は改善したが、湿疹が残っていると診断し、抗生剤の内服を止め、左下腿の湿疹に対してトレニゾンテープの外用を開始しました。
1週間後には左下腿の湿疹はかなり改善し、その結果、自家感作性皮膚炎もよくなり、全身のかゆみもかなり改善しました。
さらに1週間後の写真です。左下腿の湿疹はほぼ治っています。全身のかゆみもほとんどなくなりました。
自家感作性皮膚炎とはhttp://health.goo.ne.jp/medical/search/10O10700.html/