2012.12.07 カテゴリー|湿潤療法
7歳の男の子
学校で遊んでいて、ふざけていた子に突き飛ばされて、床のカーペットに顔をこすりつけて受傷しました。
翌日、当院を受診しました。右瞼と頬に擦り傷が出来ていて、瘡蓋になっていました。
ハイドロコロイドによる湿潤療法を行いました。
3日後にはきれいに治りました。
2012.12.04 カテゴリー|医療に関する迷信
擦り傷や切り傷や、ヤケドなどの怪我をしたとき、化膿しないために赤チンなどで消毒している方が、今でもいるかもしれませんが、消毒しても化膿は防げません。それどころか、消毒はキズの治りを悪くするので、するべきではありません。
皮膚に傷があると、そこに化膿の原因になるばい菌(黄色ブドウ球菌など)が繁殖します。キズを消毒すると、一時的にばい菌が減りますが、1時間もすると元に数に戻ってしまいます。つまり、消毒してもばい菌の数を減らすことは出来ないので、化膿を防ぐことは出来ないのです。
消毒液は、ばい菌を殺す作用がありますが、それ以上に正常な皮膚の細胞を殺す作用があります。なので、消毒をするとキズの治りは悪くなります。場合によっては消毒することによって、キズがより深くなってしまうこともあります。消毒はするべきではありません。
では、どうすれば創の化膿を防ぐことができるのでしょうか?そもそも、キズが化膿するとはどういうことでしょう?
化膿とは、皮膚の下にばい菌が入り込んで大量に繁殖している状態です。
瘡蓋や壊死組織や皮膚の奥に血腫があると、それを餌にして、ばい菌が大量に繁殖します。なので、瘡蓋や壊死組織を除去し、また、皮膚の下にたまった血腫(血の塊)にはドレーンを入れて、血腫を除去すれば、化膿を防ぐことができます。
逆に言えば、瘡蓋や壊死組織や血腫をそのままにして、その上からいくら消毒をしても、化膿を防ぐことは出来ません。
「キズは消毒しないと化膿する」というのは迷信です。
消毒液と化膿の関係についてもっと詳しく知りたい方は、こちらのHPをご覧ください。
新しい創傷治療「消毒について」
2012.11.19 カテゴリー|湿潤療法
11か月の女の子
炊飯器の蒸気でヤケドをしました。お母さんがすぐにネットで検索して、湿潤療法の第一人者夏井先生が3月までいた石岡第〇病院を受診しました。最初に当直で診てくれた外科医に、穴あきポリ袋で湿潤療法してもらいました。次に診てくれた非常勤の形成外科医に転院を勧められ、阿見町の某医療センターに通院することになりましたが、そこで受けた治療が、湿潤療法ではなく、従来の消毒とガーゼを使う治療であり、日に日にヤケドが悪化していくので、不安になり、湿潤療法をやっている某クリニックを受診しました。そこで穴あきポリ袋による湿潤療法を受けましたが、それでも、ヤケドが悪化していき、ヤケドの周辺も腫れてきたため、当院を受診しました。
受診時、右手は穴あきポリ袋とペットシートで覆われていました。ただ、穴あきポリ袋を二重に巻いていたため、浸出液がドレナージされておらず、周囲の皮膚は白くふやけていて、ヤケドの表面には膿苔びっちりくっついていて、ヤケドの周りが腫れて熱を持っていました。
過湿潤状態なので、被覆材を、プラスモイストDCに変更して、抗生剤の内服を始めました。上の写真が、その翌日の写真です、1日でキズの状態がかなり良くなったため、お母さんも安心しました。
そのままプラスモイストDCによる治療を続け、2週間で皮膚がきれいにできました。
今後は、ワセリンで皮膚の乾燥を防ぎながら、お風呂でストレッチをしてもらって、屈曲拘縮の予防をしてもらいます。
湿潤療法をするにあたっては、創部を適切な湿潤環境に保つことが一番大切で、創部の状態に応じて被覆材を変更する必要があります。そこが意外と難しくて、経験が必要です。
2012.11.15 カテゴリー|ビオチン療法
32歳の女性
6月ごろから、右手のひらと右足底に皮疹が出来ました。某総合病院に通院してステロイド外用による治療を受けていましたが、皮疹は徐々に悪化して、8月ごろに掌蹠膿疱症と言われました。9月に別の皮膚科を受診して、クラリス(抗生剤)の内服と、オキサロール(角化症・乾癬治療薬)の外用による治療を受けましたが、よくなりませんでした。6月ごろには、前胸部の痛み(胸鎖関節炎の症状)もあったようです。
10月に当院を受診しました。掌蹠膿疱症と診断し、ビオチン療法を開始、皮膚炎にはワセリンを塗ってもらうことにしました。
ビオチン療法 https://nishibori-seikei.com/biotin/index.html
1か月後に再診した際には、まだ皮疹はよくなっておらず、特に右足の皮疹はひどく、痛みのためビッコをひいている状態でした。右手足以外に乾癬を疑われる皮膚炎も認めました。
そこで、皮膚炎に対してステロイド軟こうを塗ってもらい、右足は穴あきポリ袋で覆い、その上に靴下をはくようにしてもらいました。
2週間後の写真です。右足底は劇的に良くなっています。その他の部位の皮膚炎もよくなりました。
前々医の治療で、ステロイド外用だけでは良くならなかったので、ステロイドだけではなく、穴あきポリ袋とビオチンが効果的だったのだと思います。
2012.11.06 カテゴリー|湿潤療法
80歳の近所の元気なおばあちゃん
両変形性膝関節症による両ひざ痛と、頸椎症脊髄症による歩行時のふらつきで、5年前から当院に通院していました。
ある日、友達に勧められ、鍼灸院を受診しました。
しかし、鍼灸院で右下腿に温熱療法を受けていて、低温やけどになってしまいました。
このおばあちゃんは、頸髄症脊髄症による軽い知覚低下があるため、熱さがよくわからなかったようです。
鍼灸院の先生には「すぐに医者にかかるように」と言われたそうですが、内緒で鍼灸院にかかったことが、申し訳なくて、当院を受診できませんでした。
自分で、オキシドールと、オロナイン軟膏で治療していましたが、1か月経っても、全然よくならないばかりか、かえって悪化してくるので、覚悟を決めて当院を受診しました。
上の写真が、受診時の状況です。創の周囲には厚い瘡蓋が出来ていて、中央部はぶよぶよした不良肉芽になっています。ずっとお風呂に入っていなかったので、周辺皮膚は垢だらけです。
ワセリンとプラスモイストで、まず瘡蓋を溶かしました。
翌日の写真です。瘡蓋も溶けてにくげもきれいになっています。
1か月間、湿潤療法を続けて、きれいに治りました。
この患者さんは、頸椎症脊髄症があります。頸椎症脊髄症は手術をしなければ治らない疾患ですが、この患者さんの場合、高齢であり、またふらつきはあってもグランドゴルフなどもできるので、歩行障害の進行を遅らせるために加圧トレーニングをしてもらっていました。
僕は鍼灸の先生の中に、トリガーポイントに鍼灸治療を行い、整形外科医より上手に痛みの治療をしている先生がいることを知っているので、鍼灸治療に対しては肯定的に考えています。
でも、頸椎症脊髄症や糖尿病性神経障害などで、知覚が低下していて、熱さがわかりにくくなっている方は、このおばあちゃんのようにやけどをしてしまうことがあるので、鍼灸治療を受ける際は、主治医と相談してからのほうがいいでしょう。