2015.11.17 カテゴリー|トリガーポイント注射
69歳の女性
3ヶ月前から左前腕から親指と人差し指にかけてのしびれが出現しました。○○医院でMRIを撮り「頚椎椎間板ヘルニア」と診断され、お薬(リリカ、メチコバール、オパルモン、セレコックス)などが処方されましたが、しびれは変わりませんでした。
しびれが出てから3ヶ月後くらいに当院を受診しました。下図のごとく前腕にトリガーポイントを認めたのでトリガーポイント注射を行いました。
1回の注射で、しびれがいくらかとれました。
2回の注射で、しびれはほとんどとれて、畑仕事をした後に少ししびれるだけになりました。
手のしびれもトリガーポイントが原因で起こることがあります。
重い荷物をずっと持っていると、だんだん手がしびれてきますよね。それは、筋肉に疲労がたまって一時的にトリガーポイントが出来るからです。この場合、荷物を下ろせば筋肉の血行が回復してトリガーポイントが消えしびれも消えます。
この患者さんの場合、畑仕事のやり過ぎで出来たトリガーポイントがそのまま消えなくなってしまったのです。だからトリガーポイント注射で筋肉の緊張をとり血行をよくすることでしびれが良くなるのです。
2015.11.02 カテゴリー|トリガーポイント注射
70代女性
5年以上前からめまいがあり、あちこちの病院で検査を受けましたが、どこにも異常が見つからず、めまい止めの薬をもらっていました。骨粗鬆症の治療のために当院を受診した際に相談されたので、触診してみると頸の横にある胸鎖乳突筋にトリガーポイントを見つけました。試しにトリガーポイント注射をしてみたら、めまいがかなり良くなったようです。
胸鎖乳突筋にトリガーポイントができると、めまいのほかに、頭痛や眼の奥の痛みなどの症状が出ます。原因不明のめまいや頭痛の多くが、胸鎖乳突筋のトリガーポイントが原因で起きているのではないかと思われます。
2015.10.27 カテゴリー|トリガーポイント注射
60代の女性
7年前から両膝痛があり、あちこちの医療機関を受診していました。1年前に某病院で人工関節手術をしないと治らない言われ、手術は怖いので娘のすすめで当院を受診しました。
初診時、両膝痛のため、杖をついてもよたよたとしか歩けず、左膝はごっつい装具で固定されていました。
両大腿内側広筋にトリガーポイントを認めたので、トリガーポイント注射を週1回行うようにしました。また、左膝の筋萎縮が顕著であったため、加圧トレーニングも始めました。
3ヶ月くらいで右膝の痛みはほとんどなくなりました。加圧トレーニングの効果で左膝の筋萎縮も改善し、装具をつけなくても杖なしで歩けるようになりました。
端から見たらだいぶ良くなったように見えるのですが、本人は診察にくるたびに「左膝が痛い。左膝の痛みはいつになっても治らない。」と訴えてきます。
慢性疼痛で、頭の中が痛みのことでいっぱいになっている患者さんの典型例です。
痛みが少し良くなったときに、「おかげさまで少しずつ良くなってきています。」と感謝できる人はその後だんだん良くなっていきます。心が前向きになることで痛みの悪循環から抜け出せるからです。
逆に、痛みが少し良くなっているのに「まだ痛みが残っている」と不満を言う人は、いつまでたっても治りません。心が後ろ向きで自ら痛みの悪循環に陥っているからです。
この患者さんには、次回受診するときは嘘でもいいから「おかげさまで少しずつ良くなってきています。」と言うように伝えました。前向きな発言をすることでだんだん心も前向きになって痛みの悪循環から抜け出すことが出来るからです。
治療する側としても、毎回不満を言いつのる患者さんより、感謝してくれる患者さんの方が一生懸命治療しようというやる気が出ます。
慢性疼痛で治療中の患者さんは、残った痛みのことではなく、良くなった痛みを探して「おかげさまで少しずつ良くなっています。」と口に出すようにしましょう。そうすることで痛みが早く楽になります
2015.10.06 カテゴリー|骨折・捻挫の治療
胸や背中をぶつけたりひねったりして肋骨に痛みが出て当院を受診する患者さんがたくさんいます。皆さん一様に肋骨が折れていないかどうか心配しますが、肋骨は折れていても折れていなくても治療法も治る期間もほとんど同じです。
患者さんが来たらまず、痛みがある部位を聞いて、押していたいところを探して、そこにクリップを貼ってマーキングをしてから肋骨のレントゲンを撮ります。肋骨は片方だけで12本もありまた細長くて湾曲している骨なので、マーキングをしないと折れているところを探すのが大変です。
レントゲンを診て、骨折の有無を確認しますが、3本以内の転位のない骨折だったら折れていても折れていなくても同じ治療をします。
痛みが強ければ肋骨バンドを巻きます。(肋骨バンドはシグマックス社のリブバンドが丈夫でゴムの弾力もあり肋骨全体を固定できるので効果的です。A社の肋骨バンドは、ゴムの弾力が弱すぎて使い物になりません。)肋骨バンドは痛いところに巻くのではなく、なるべく上の方、男性なら脇の下のすぐ下。女性なら、女性用のリブバンドを乳房のすぐ下に巻きます。きつく巻いた方が痛みが楽になります。
肋骨バンドを巻いても痛みが強い場合は、圧痛部にトリガーポイント注射をします。トリガーポイント注射が劇的に効くことがよくあります。
それから痛み止めの飲み薬と湿布を1週間分処方して、次のように説明します。
「肋骨をぶつけると、折れていても折れてなくても2週間くらいは痛みます。その間は痛みが出るような動作はなるべく避けてください。注意してほしいのは、肋骨が痛いと痛みが気になるものだから、ついつい痛いところを指で押して探してみたくなりますが、これをやると骨がずれたり、折れてない骨にヒビが入ったりして余計痛くなりますから絶対にやらないように気をつけてください。1週間たってもまだ痛みがあるときはまた来てください。」
痛みが続いている場合のみ再診時にレントゲンを撮り、骨折が転位していないか、血胸や気胸が発生していないかどうか確認します。痛みが取れている場合は、あまり意味がないのでレントゲンは撮りません。
息苦しさや呼吸苦がある場合は胸部レントゲンも撮り、血胸(骨折部からの出血が肺の中に貯まる状態)や気胸(肺に穴が開いて肺の外に空気が漏れる状態)の有無を確認します。軽度の気胸や血胸は、自然と治るので数日おきにレントゲンを撮って経過を見ますが、ひどい気胸や血胸は外科的処置が必要なので、呼吸器外科のある大きな病院に紹介します。
レントゲンでわからない程度の転位のない骨折だったら、折れていても折れていなくても治療法も治る期間もほとんど一緒なので、CTをとってまで肋骨骨折を探すことはあまり意味がなく医療費の無駄だと思います。
2015.9.03 カテゴリー|トリガーポイント注射
60代の女性
右膝がすごく痛くなって歩けなくなったので、某総合病院の整形外科を受診しました。そこで若い医師の診察を受け、
「レントゲンとMRIで軟骨が減っているといるから、関節鏡の手術をやって、それでも痛みが取れなければ人工関節全置換術をやらなければ治らない。」
といわれました。そして、痛み止めの飲み薬どころか、湿布すら出してもらえなかったそうです。せめて痛み止めの飲み薬を出してほしいと頼んだら、
「痛み止めを2,3年も飲むと副作用が出るから出せない」
といわれました。仕方がないので1週間、安静にして様子をみていましたが、痛みは全くとれなかったので、再診した際に、何とか痛みだけとる方法はないかと聞いたら、
「痛みは年が若くならない限りよくならない」
といわれたそうです。
1ヶ月ほど通院しましたが痛みはひどくなる一方だったので、当院を受診しました。
初診時は右股関節から膝の痛みのため、歩行器がなければ歩けない状態でした。下図の位置にトリガーポイントを認めました。
トリガーポイント注射をして、痛み止めの飲み薬と湿布を処方しました
1回目の注射で膝周囲の痛みはだいぶ取れて、歩行器なしで歩けるようになりました。近所の方だったので毎日に注射に通ってもらって、2週間後には、すたすた歩けるようになるまで回復しました。
しかし、某総合病院の若い先生、歩けないほど痛がっている患者さんに痛み止めも出さないって、いったい何なんでしょうね。
整形外科は痛みの治療のプロフェッショナルのはずですが、この若い医師は痛みの生理学についての勉強が不足しています。痛みは骨や軟骨の変形が原因だから、手術してそれを治さなければ治らない、痛み止めなんか飲んでも無駄だと思っているのかもしれません。
まさか、痛みの生理学についてちゃんと知っているけど、手術がやりたいがために、あえて治療しなかったなんてことはないと思いますが・・・・
紹介状もなくいきなり大病院に行くと、こういう経験不足の若い医師の診察を受けることになります。
開業医のほとんどは、病院で部長や副部長を経験したベテラン医師です。診断と治療に関して若い医師より圧倒的に上手です。死ぬほどが具合が悪いとき以外はまず開業医を受診しましょう。いきなり大病院に行っちゃダメだよ。