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2014.3.07 カテゴリー|トリガーポイント入門
さっそく各論に入ります。
今回は腰の真ん中の痛みについてです。
「腰の真ん中あたり(図のピンク色)が痛い。」と言っている患者さんのトリガーポイントは、ほとんどの場合大腰筋にあります。
大腰筋のトリガーポイントは腰椎棘突起からこぶしひとつ分くらい外側で、第12肋骨から2~3横指下の部分を横から押すような感じで親指で圧迫すると見つけることが出来ます。理由はわかりませんが右側のトリガーポイントは左側より1横指くらい下にあることが多いです。
慢性痛の場合は、ネオビタカインを1~2ml打ちます。ぎっくり腰などの急性の強い痛みの時は、即効性がある1%キシロカインも混ぜて5ml以上打ちます。
大腰筋の両方にトリガーポイントがあると上の図のように腰の真ん中に痛みを感じますが、片方だけにトリガーポイントがあると、トリガーポイントの周辺が痛くなるようです。不思議ですね。
2014.3.06 カテゴリー|トリガーポイント入門
前回のブログを書いていてトリガーポイント注射は整形外科よりむしろ内科医など専門外の医師を中心に広めていった方が普及が早まるのではないかと気が付きました。その後、ではどうすれば専門外の先生に広められるか考えていました。そして、誠に図々しいのですが、私のトリガーポイント注射のノウハウを簡単に分かりやすく紹介することが一番いいだろうと思いました。
トリガーポイント注射は圧痛のある筋肉のしこりに局所麻酔を打つだけです。危険性はほとんどありません。唯一あげるとすれば背部や胸部に打つ際の気胸に注意しなければいけないことくらいでしょうか。
トリガーポイントを見つける上での注意点は、患者さんが症状を訴えている部位とトリガーポイントが一致しないことが多いということです。その点については、今後症状別にトリガーポイントの見つけ方を書いていきたいと思います。でも、体中のあちこちに痛みがあるような方の場合、一個一個探していたら大変なので、そのような方には「押して痛いところに自分で印をつけてきてね」と言って、ある程度トリガーポイントの目星をつけてもらっています。
私がトリガーポイント注射に使用している局所麻酔薬はネオビタカインシリンジ5mlです。ネオビタカインは注入時の痛みが少ないのが特徴です。しかし、茨城県ではネオビタカインシリンジを1度に3本以上使用すると保険で減点対象とされてしまうので、10ml以上必要な場合は、1%キシロカインを混ぜています。1か所に0.5~2ml位注射します。注射の量は、場所や痛みの強さによって変更しています。ぎっくり腰などの急性の強い痛みの場合は、1か所に5ml以上打つこともあります。一度に30か所以上注射する場合もあれば、1か所しか打たない場合もあります。何か所打っても、保険点数は80点(800円)しかもらえません。消炎鎮痛処置35点も同時に算定できますが、外来管理加算(52点)は算定できなくなります。
針は首や背中など浅いところに打つ場合は26Gの皮内注射用の針で、腰や臀部、ふくらはぎなどのやや深いところに打つ場合は25Gの針で、太った方の臀部などかなり深い場所に打つときは23Gのカテラン針を使用しています。
トリガーポイント注射を始める前に少なくとも加茂淳先生の「トリガーポイントブロックで腰痛は治る」だけは読んでおきましょう。なぜトリガーポイント注射で様々な痛みがとれるかの理論的な部分がわかると思います。そんなわけで、ここではトリガーポイント注射の理論的な部分は説明しません。
2014.3.05 カテゴリー|トリガーポイント注射
埼玉県在住の方からメールで問い合わせがありました。
→初めまして。
加茂先生のページからトリガーポイント注射をしり、こちらにたどりつきました。私は埼玉に住んでおり、明日にでも診察を受けに行ける距離ではありませんが、先生の人柄にひかれ、お問い合わせした次第です。35歳、子ども5人いる主婦です。
腰椎にヘルニアがあります。半月板損傷もしています。2年前から左臀部からふくらはぎに鈍痛があります。加茂先生いわく、左下肢の痛みはそれが原因ではないとのことなので、トリガーポイント注射で治療をはじめようと思っていたところですが、先月から日に日にひざのロッキングがひどく、2,3日前にロッキングしてからは、ひざに何か挟まった感じと、激痛で歩くのも困難です。それまでもロッキングしていましたが、痛みがどんどん伴うようになり、持続するようになりました。ロッキングも、内側広筋、外側広筋のトリガーポイントが原因では?と加茂先生はおっしゃいましたが、このひかかりが気になります。半月板のかけらがはさまっても、痛みはでないのでしょうか?ひどい痛みから手術へ逃げたい気持ちになります。膝の外転でロッキングします。スポーツ整形の先生にも、手術をすすめられました。痛みはひによってまちまちで、場所も広範囲です。坐骨神経痛と、ロッキングの痛みが混ざってるのでしょうか。
トリガーポイント注射で、このひかかりは取れますか?先生のご意見をお聞かせください。急ぎではありませんので。お忙しいところ恐縮ですが、よろしくお願いいたします。
お問合せありがとうございます。
診察してみないとわかりませんが、膝窩筋などの膝周囲の筋肉の筋痛症で、あたかも半月板のロッキングのような症状を起こす方がいます。また、半月板のロッキングは前十字靭帯断裂などで膝に不安定性がある人にしかあまり起こらないはずです。前十字靭帯断裂の既往がないのであれば筋痛症の可能性が高いので、一度診察にいらしてください。
あのあと、近くのペインクリニックで、トリガーポイント注射をしてみようとお願いしに行きました。私の症状には適さないと、筋膜疼痛は全否定され、硬膜外ブロックをすすめられました。残念でした。ただ膝関節への注射はしてくれ、膝回りは少し痛みがひきました。
西堀先生のように理解ある医師が増えるといいのですが。ありがとうございました☆
→お礼
先日、左大腿部~膝の痛みでメールをさせていただき→先ほど半月板のことでメールをしました○○です。ご丁寧な回答ありがとうございます。
膝のロッキング、 ロッキングのあと広がる痛みに悩み、外側半月板損傷のためすぐ手術をいわれました。股関節も弾発股のため、ひどいなら手術。ヘルニアも手術。手術しかすすめられませんでした。加茂整形から、にしぼり先生を知り、しっか筋のMPSについて知り、勉強しまくりました。先生のコラムもすべて読ませてもらいました。しっか筋が硬直してひかかる場合があると知り、痛みもビンゴでした。まさに、私の症状でした。股関節も、大転子あたりのMPSです。近くのペインクリニックや整形では、「トリガーポイントでなおれば医師はいらない」と怒られました。「痛みはそんな簡単なもんじゃない」といって、触診なしで硬膜外ブロックをすすめました。「ヘルニアがあるから、お尻より腰」といって、小臀筋は無視でした。「医療関係者のような口をきくな」と怒られました。
そして、ようやく理解あるお医者さまをみつけました。小さな病院の内科の先生です。私の希望箇所にトリガーと鍼をしてくれました。何より話を聞いてくれました。痛みが減りました。勝った気持ちになりました。ここまでくるのが本当に長かったです。痛みと同じくらい医師探しが辛かったです。もしダメなら、にしぼり先生がいる。そう勝手に思わせていただいたことも、私の中では痛みに向かう力になりました。まずは、メールでご相談にのっていただいたこと、しっか筋へのアプローチを勧めていただいたことに感謝します。
MPSに対して、理解のある先生に出会えて本当に良かったですね。
専門家ほど新しい考えに拒絶反応を示します。自分のこれまでのやり方を否定することをプライドが許さないからです。
形成外科医は湿潤療法を受け入れられません。
糖尿病専門医は糖質制限を受け入れられません。
皮膚科医はビオチン療法を受け入れられません。
そして、整形外科医はトリガーポイント注射を受け入れられません。
そういえば、以前、内科の先生が当院にトリガーポイント注射の見学に来たことがありました。湿潤療法が形成外科医ではなく、内科や小児科医に広まっていったように、トリガーポイント注射も高齢者を見ることが多い内科医を中心に広げていった方がいいかもしれませんね。トリガーポイント注射なんて圧痛点に局所麻酔薬を打つだけだから、やろうと思えば医者ならだれでもできますからね。
そんなわけで、トリガーポイント注射を受けてみたいけど、当院も加茂整形外科も遠くて無理、という方は近所の内科の先生に頼んでみるといいかもしれません。整形外科医やペインクリニックの先生よりは余計な(間違った)知識を持っていない分、やってくれる可能性が高いと思います。
2014.3.05 カテゴリー|トリガーポイント注射
福島県中央部に在住の60代の男性
3か月ほど前から右臀部からふくらはぎにかけての強い痛みが出現しました。近所の整形外科でMRIを撮り、「軽いヘルニアがあるが手術するほどじゃない」と言われ、硬膜外ブロックや神経根ブロックを受けましたが、症状が改善しなかったため、ネットで調べ、MPSについて知り、車で3時間かけて当院を受診しました。
右臀部や右ふくらはぎに8か所のトリガーポイントを認めたため、トリガーポイントを認めたので、トリガーポイント注射を打ちました。その後週1~2回通院してもらいました。
1回目の注射で、痛みが10分の9に減りました。
2回目の注射で、痛みが10分の8に減りました。
3回目の注射で、痛みが10分の7に減りました。
「少しずつですが、確実に良くなっているので、根気よく治療をしましょう。」と声をかけたら、
「腹減ったとこに飯食ったみたくは治らねぇことは、わがってっから大丈夫だ」と答えられました。
福島県で診療していたころは、この「腹減ったとこに飯食ったみたくは治らない」という言い回しを、患者さんからよく聞きました。茨城県ではこういう言い方をする患者さんはあまりいません。福島県特有の言い回しなのかな?
2014.2.23 カテゴリー|トリガーポイント注射
60代の女性
3か月ほど前から、右臀部痛があり、昨日急に痛みがひどくなったため、当院を受診しました。診察の結果、右臀部の筋筋膜性疼痛症候群でしたので、いつもと同じように説明しました。
「右のお尻にある筋肉が、疲労などが原因で緊張しているための痛みです。緊張している筋肉に注射をして、筋肉の緊張を止めてしまうトリガーポイント注射が一番効きます。注射するほど痛くないというなら、お薬で様子を見て治らなかったら注射でもいいですよ。」
「注射、痛いんじゃないの?」
「いや、そんなに痛くはないですよ。」
「嘘つけ!」
ちょっとカチンときちゃいました。
「なんで、初めて会ったばかりのあんたに、嘘つき呼ばわりされなきゃならないんだ!俺があんたに嘘をついてまで注射して何の得があるというんだ!」
と怒鳴ってやりたい衝動に駆られましたが、ぐっとがまんして、
「嘘だと思うなら、注射はやりません。お薬だけで様子を見てください。」
と説明して、お帰りいただきました。
私自身、腰痛持ちなので、トリガーポイント注射を何度も受けていて、それほど痛くないことを知っています。だから「そんなに痛くない」と自信を持って説明できます。逆に、手の腱鞘炎(ばね指)の注射は非常に痛いので、そういう注射の時は「すごく痛い注射です。」と正直に説明しています。痛みの治療においては、医師と患者さんの間に信頼関係を築くことが最も大切です。だから嘘はつきません。しかし、この方のように最初から医者を嘘つき呼ばわりするような患者さんと信頼関係を気づくことはかなり難しいので、治療もうまくいきません。