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2018.12.03 カテゴリー|骨折・捻挫の治療
サッカー部の中学生
部活中に転倒して受傷しました。
近くの整形外科を受診して、「右肘の骨が折れているから、肘の上から手首の先までシーネ(添え木)と包帯で固定する。腫れているから、毎日包帯を外して湿布を交換するように。」と説明され、シーネと三角巾で固定されて湿布を処方されました。
両親が、その説明に不安を覚えたため、翌日当院を受診しました。
レントゲン上、肘の内側に剥離骨折を認めました。
「湿布に腫れをひかせる効果なんかないから、湿布交換は意味がありません。むしろ、外したときに骨がずれる危険性があります。また、骨折の形態から手首を固定しても意味がないので、手首は動かせるようなシーネを作り直します。その分、手首や指をどんどん動かしてね。鉛筆を持ってもいいよ。三角巾していると肩を動かさないせいで肩や首に痛みが出るから三角巾でつるしちゃダメだよ。」と説明してシーネ固定しました。
骨折がずれてしまうリスクを冒してまで、シーネを外して湿布を交換する理由がよくわからない。
骨折したところが腫れるのは、骨折した骨から出血してその血液が皮膚の下や筋肉の中に溜まるからです。
湿布にその溜まった血液を減らす効果はありません。なので全く無意味です。
腫れをひかすためには、患部の血の巡りを良くすることが一番です。
指や手首をどんどん動かすと筋肉のポンプ作用で血の巡りが良くなります。
なので、シーネは必要十分な範囲でしっかり固定して、それ以外の部分はどんどん動かしてもらいます。
三角巾を使うと、肩だけじゃなく手首や指も使わなくなるので、やっぱり三角巾も使わないほうがいいです。
湿布には痛み止めとしての効果がありますが、骨折の痛みはシーネ固定をしっかりすれば無くなるので、やはり湿布を貼る意味はありません。
シーネを外して湿布を交換しても腫れは引かないし、骨がずれる可能性があるからやっちゃダメだよ。
2018.11.28 カテゴリー|トリガーポイント注射
車で1時間くらいかかるところから当院を受診した50代の男性。
3日前に運動をしてから、右脛の外側に痛みが出るようになりました。特に朝起きたときに痛みが強いようです。
右腓腹筋にトリガーポイントを見つけたので、「ただの筋肉痛です。」と説明してトリガーポイント注射を行いました。
痛みは改善しましたが、症状が消えなかったため不安になり近所の整形外科を受診しました。そこでMRIをとり、腰部脊柱管狭窄症と診断されリリカとサインバルタが処方されたそうです。それでまた不安になり当院を再受診しました。
「痛みは筋肉の緊張が原因なので、腰部脊柱管狭窄症は関係ありません。朝起きると痛いのは寝ている間に筋肉が固まるからです。たいして痛くないならリリカもサインバルタも飲まなくていいです。」と説明しました。
腰部脊柱管狭窄症というのは、腰の骨が変形して、神経の通り道である脊柱管が狭くなり、神経を圧迫して神経の血流が悪くなり、神経の行っている先に痛みやしびれが出る病気です。
脊柱管は立ったり歩いているときに狭くなり、かがんだり座ったりすると広くなります。なので、脊柱管狭窄症の人は、長く歩いていると痛みやしびれが出て、かがんで休むと楽になり、また歩くと痛みがしびれが出るのが特徴です。これを神経因性間欠跛行と言います。逆に言えば神経因性間欠跛行がなければ腰部脊柱管狭窄症はないのです。
これは腰部脊柱管狭窄症の世界的権威で私の師匠ある菊地臣一先生から直接教わったことなので間違いありません。私が研修医の頃は、患者さんの症状を見るために、患者さんと一緒に歩いたことが何度もあります。中にはなかなか症状が悪化せず5kmも一緒に歩いた患者さんもいました。その結果をふまえてこの患者さんは腰部脊柱管狭窄症ではなく糖尿病性神経障害と診断されました。
それで、最初の患者さんですが、朝起きた直後や、動き始めに痛みがあり、歩いているとだんだん痛みが無くなります。神経因性間欠跛行どころか症状が全く逆です。MRIの腰部脊柱管狭窄はただの画像所見で症状と無関係です。
だいたい、普通に考えて運動後に痛くなるのは筋肉でしょう。腰のMRIなんて撮る必要ないじゃん。医療費の無駄じゃん。
なんでこんな無駄な検査をしちゃうかというと、慢性の筋肉痛があるということを知らないからです。筋肉痛は3日くらいで治ると思い込んでいるからでです。だから、骨や軟骨の構造的異常を探そうと無駄な検査をするのです。
でも、肩こりは慢性の筋肉痛だよね。みんな知ってるよね。同じことがおしりやあしにおきても不思議じゃないよね。何でわかんないかな、脳みそが硬くなってんだろうな。
2018.11.16 カテゴリー|その他の治療について
足のむくみで当院を受診する方がたまにいますが、足のむくみの原因は内科的な疾患のことが多いので、足がむくんだときはまず内科に行きましょう。
足がむくみの原因として、最初に考えられるのは肝臓や腎臓の病気です。
肝臓や腎臓が弱っていて、血液の中のアルブミンという物質が低下すると、血液の浸透圧が低下してむくみやすくなります。
また、心臓が弱って、心臓のポンプ機能が低下してもむくみやすくなります。
肝臓も腎臓も心臓も、ほっとくと命に関わることがあるので、足がむくんだらまず内科に行ってこれらの臓器が正常に機能しているか調べてもらってください。
整形外科の病気で足がむくむことはあまりありません。
膝や足首の関節炎で関節が腫れると足がむくむことがありますが、その場合は関節の痛みを伴います。
あと、高齢者の場合、運動不足による筋力低下でむくむことがありますが、これは治療法があるわけじゃなく、筋トレをするしかありません。
先日、80代のおじいちゃんが両足がむくんだと当院を受診しました。
話を聞くと、心臓と腎臓が悪くて内科に通院しています。
「むくみは心臓や腎臓が悪くなった可能性があるから、まず内科に行かなきゃダメだっぺよ」と説明したら
「だって、内科は混んでんだよ、先生だったらすぐ診てくれっと思ってよお」だって
まあ、確かにうちは日曜日以外はほとんど待ち時間ないけどね。
でも、専門外は診られないから、内科に行ってもらいました。
2018.10.29 カテゴリー|湿潤療法
4歳の男の子
何か(詳細不明)にはさんで右人差し指の爪が剥がれて当院を受診しました。
受診の状態、爪が剥がれて出血していました。ヘモスタパッドを当てました。
翌日の状態、出血は止まっていました。ヘモスタパッドを当てました。
受傷3日目の状態、うっすらと新しい爪が形成されて来ています。プラスモイストを当てました。
受傷6日目の状態、薄い爪が出来たので、治療を終了しました。
爪を剥がしても湿潤療法をすれば、すぐに爪が出来ますよ。
2018.10.26 カテゴリー|医療に関する迷信
上のグラフは、製薬会社からもらったインフルエンザについて書かれた小冊子に載っていたものです。私はこれを見て、「インフルエンザワクチンって、やっぱりたいして効かないんじゃね。」と思いました。
グラフは2015-16年度と2016-17年度のワクチン接種の有無別にみたインフルエンザの発症率を表しています。
2年間でワクチンの有効性を認めたのは、2015-16年度の0~9歳、20~39歳だけです。
2016-17年度ののワクチンは全世代に有効性を認めていませんし、2016-17年度のワクチンももっとも効かせたい高齢者には有効性を認めていません。インフルエンザにかかっても重症化しない若い人にだけ効いてもあまり意味ないよね。
インフルエンザワクチンは、そのシーズンに流行するであろうウイルスのタイプを予測して作られます。予測が外れたり、ウイルスに変異が生じたりすると、有効率が下がって効かなくなります。
2016-17年度は完全に予想を外したんでしょうね。2015-16年度は予想は当たったけど、ウイルスが変異して元々免疫力が高い若い人にしか効かなかったってことでしょうね。
私は10年前に開業するまでインフルエンザワクチンを受けたことはありませんでしたが、今までインフルエンザにかかったことが一度もありません。私以外にもそういう人はたくさんいると思います。
逆に、毎年きちんとワクチンをきちんと受けているのに毎年のようにインフルエンザにかかる人もいます。こういう人はインフルエンザウイルスに対する抗体が出来にくい体質なんでしょうね。
昨年度はインフルエンザワクチンの生産が遅れてワクチン不足にになり、血眼になってワクチンを打ってくれる医療機関を探していた人がたくさんいましたが、そんなに必死になるほどインフルエンザワクチンは効きませんよ。
インフルエンザワクチンは副作用もほとんどないし、若い人にはそれなりに効くから、受けといたほうがいいとは思いますけどね。