2017.7.27 カテゴリー|トリガーポイント注射
50代の女性
10日前から左背部の痛みと左腕のしびれが出現して当院を受診しました。
話を聞いただけで肩甲骨周囲の筋痛症と診断できたので、触診をすると思った通り下図の部位にトリガーポイントを認めました。
この患者さんのお父さんが、当院でいつもトリガーポイント注射を受けているので、
「肩甲骨周囲の筋肉が攣ったための痛みとしびれです。注射をすれば良くなります。」
と言う説明にすぐに納得してくれたので、すかさずトリガーポイント注射を打ちました。
診察室に入って出るまで2分もかかっていないと思います。
初診料とあわせても自己負担は1510円です。
筋痛症について知る前だったら、症状を聞いて頚椎ヘルニアを疑いました。
10分以上かけて頚椎の理学所見と神経所見をとりレントゲンを撮ったでしょう。
レントゲンに異常がなければ、後日MRIをとったと思います。
MRIにも異常がなければ原因不明なので、ロキソニンとメチコバールと湿布を出して誤魔化すか、精神科に紹介していたでしょう。
MRIで頚椎ヘルニアが見つかったら、(本当は筋痛症だから症状と関係ないのに)手術を勧めていたでしょう。
診断がつくまで何日もかかるし、治療費も10倍以上かかったと思います。手術したらその数倍かかりますね。
時間とお金をかけても診断がつかなければ、あるいは誤診されていれば、治療もうまくいかず、患者さんにとっては踏んだり蹴ったりです。
もちろん、トリガーポイント注射を打っても良くならないこともあります。
経過を見る中で、レッドサイン(悪性腫瘍、感染症、骨折、内科的疾患)の可能性を疑った場合は、レントゲン検査や血液検査、MRIも必要になります。
でも、そういうケースはごく稀です。
筋痛症(MPS)を知っていると診察と診療は早く安くできます。
2017.7.19 カテゴリー|トリガーポイント注射
50代の女性
3ヶ月前に首を寝違えました。
その3日後くらいから左の首から背中から腕の痛みがひどくなり、近所の整形外科を受診しました。
MRIを撮って首に2カ所ヘルニアがあるといわれました。
痛いところに局所注射をするとその日だけは眠れるけど、週に1回しかしてくれないのでロキソニンと睡眠薬を飲んでいました。
痛みが取れないため、1ヶ月前に当院を受診しました。
長く続く痛みのため暗い表情で診察室に入ってきました。
下図のごとくトリガーポイントを認めました。
寝違えが原因の筋痛症で、ヘルニアは痛みと関係ないことを説明してトリガーポイント注射を行いました。
症状の経過や年齢からサインバルタの良い適応であると考え、サインバルタを処方しようとしましたが、
「以前に腰痛でかかった病院から、サインバルタやトラムセット、リリカなどが処方されたけど、すべて副作用がひどくて飲めなかった」
と言われたので、とりあえず、ロキソニンテープのみ処方し、痛みが取れなければ毎日注射に来てくださいと説明しました。
1回目の注射で少し良くなりましたが、その後はあまり良くならなかったようなので、睡眠薬を止めてリボトリールを出しましたが、良くなりませんでした。
やはりサインバルタの良い適応であると確信し、患者さんに次のように説明しました。
痛みは神経経路を伝って上行性に脳に伝えられますが、それとは別に下行抑制系という痛みを和らげる働きもつを神経径路もあります。
慢性痛の人は下行抑制系の働きが悪くなっているため、痛みに対して過敏になり少しの痛みをすごくつらく感じるようになります。
サインバルタはこの下行抑制系の働きを改善する作用があるので、いまの○○さんにはぴったりのお薬です。
神経に働く薬なので、吐き気や眠気などの副作用が出ますが、3日くらいで耐性ができて副作用が出なくなります。
副作用が出ても3日くらいは我慢して飲んでください、きっと良くなります。
サインバルタを飲んで、最初は頭がボーッとしたり、食欲が低下したりなどの副作用が出ましたが、1週間後には痛みが改善して、表情も明るくなり、それまでずっと休んでいた仕事に復帰できました。
サインバルタとハサミは使いようです。
ちなみに、日曜日は忙しくてこんな丁寧な説明できませんよ。
なるべく平日の空いている時間に受診してくださいね。
2017.7.14 カテゴリー|トリガーポイント注射
70代の男性
8年前、健康診断で、腹部レントゲンを診た健診医から
「腰の骨が変形しているから、そのうち腰が痛くなるでしょう。」
と言われました。
その3年後から、草刈りをすると腰が痛むようになりました。
先日当院を受診しました。
そのときのレントゲンです。
確かに変形しているし、曲がっています。
でも70歳にもなれば、ほとんどの人が腰の骨に多少の変形があります。
骨が変形が腰痛の原因ならば、70歳以上の人のほとんどが常に腰痛を訴えていなければいけないはずです。
でもそんなことはありません。
実際に、この患者さんも草刈りをした後以外は腰痛はありません。
草刈りで痛くなるのは腰の周りの筋肉です。骨じゃありません。
「腰の骨の変形は痛みとは関係ありません。草刈りをすると痛くなるのは腰の筋肉が疲れて硬くなるからです。草刈りをする前に痛み止めを飲んで、終わったら湿布を貼ってください。」
と説明しました。
健診医をしているのはたいてい内科が専門の先生です。
腰痛のことはたいして勉強もしてないでしょう。
よく知らないなら、余計なことを言って患者さんに呪いをかけないで欲しいです。
2017.7.04 カテゴリー|トリガーポイント注射
中学校3年生のバレー部員
3月はじめにバレーボールの練習中、着地したときに左膝をひねって受傷しました。
近くの整形外科で半月板損傷と診断され、ヒアルロン酸の注射を数回受けて良くならないため手術を勧められました。
4月中旬に当院を受診しました。
松葉杖をついて診察室に入ってきて、最後の大会が近いので手術はしたくない、と訴えました。
膝の裏を中心に大腿後面からふくらはぎにかけてトリガーポイントを認めました。
トリガーポイント注射を打ちながら
「痛みは半月板が原因でなく、筋肉を伸ばしたことが原因です。注射をすれば良くなります。松葉杖をついていると筋力が低下して、復帰に時間がかかるから、痛くない範囲で体重をかけて歩きましょう。」
と説明しました。
その後週2回程度通院してもらい。
1週間後にはサーブ練習ができるようになりました。
2週間後にはレシーブ練習ができるようになりました。
3週間後にはスパイクが打てるようになりました。
4週間後には修学旅行に参加しました。
6週間後にはレギュラーを取り返しました。
8週間後には市総体に出場し準優勝しました。
10週間後の県南大会には負けてしまいましたが、高校に行ってもバレーボールを続けると目を輝かしていました。
半月板損傷と診断されている痛みのほとんどが膝周辺の筋痛症だと思います。
なぜなら半月板には神経がないので切れていても痛みを感じないからです。
2017.6.06 カテゴリー|トリガーポイント注射
肩こりとか腰痛とか膝痛などの慢性痛の患者さんは、天気が悪くなる前に痛くなるとよく言います。
天気が悪くなる前に痛くなるのもトリガーポイントのせいです。
気圧が下がったり、気温が下がったりするとトリガーポイントの血の巡りが悪くなるため、痛くなるのです。
冷房のせいで痛くなるのも同じ理由です。
関節の変形や、神経の圧迫などの構造異常は気圧や気温の影響を受けません。
なので構造異常が慢性痛の原因だとする理論では、天気が悪くなると痛くなることに対する説明ができません。
慢性痛の原因はトリガーポイントなのです。