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「ヘルニア=爆弾」という呪いの言葉

2018.2.16 カテゴリー|トリガーポイント注射

 50代後半の女性

 2週間前にお葬式に出てから両殿部と左下肢の痛みが出現して当院を受診しました。

 特に朝起きたときや寝返りをしたときが痛いそうです。

 

 10年前にも腰痛があり、別の整形外科を受診して、椎間板ヘルニアと診断されました。

 その際に医師から「腰にヘルニアがある。爆弾を抱えているようなものなので、今後も気をつけてください。」と言われたそうです。

 それで、そのヘルニア爆弾がまた爆発したのではと心配になり当院を受診したそうです。

 

 「ヘルニアは腰痛と無関係です。痛みの原因はおしりの筋肉のこりです。朝起きたときに痛むのは寝ている間に筋肉が固まるからです。」

 「ヘルニアがあるから爆弾を抱えているようなものだというのは、根拠のない呪いの言葉です。すぐに忘れてください。」

 「筋肉のこりが原因なので、こっている筋肉に注射してこりをほぐせば良くなります。」

 

 と説明して、下図の部位にトリガーポイント注射をして、リボトリールを処方しました。

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 しかし、「ヘルニアがあるから爆弾を抱えているようなものだ」というのは、今まで効いた中で一番ひどい呪いの言葉です。

 そんなこと言われたら、不安で不安で仕方ないでしょう。

 不安は痛みを悪化させ、希望は痛みを改善します。

 不安を与えるような呪いの言葉を唱えることは、医者が一番やっちゃいけないことだと思います。

クスリとクスリがケンカする

2017.12.19 カテゴリー|トリガーポイント注射

 再三このブログで、「痛みは速やかに取ったほうがいいので、痛み止めは我慢せずにすぐに飲みましょう。」と訴えていますが、時には痛み止めの処方を躊躇するときがあります。

 それは他の病院からたくさん薬をもらっている時です。

 6種類以上飲んでいたら躊躇します。10種類以上飲んでいたら基本、当院からは薬の処方をせず、注射と湿布で治療をします。

 先日来院したおじいちゃんに「痛み止めを出したいけど、たくさん薬飲んでいるからなぁ」と言ったら、「んだな。あまりたくさん飲むとクスリとクスリがケンカすっかんな」と答えました。

 

 そうなんですよ、あまりたくさんクスリを飲むとクスリとクスリがケンカしていろんな副作用が出るんですよ。

 それで、その副作用を抑えるためにクスリが出て、またクスリとクスリがケンカするという悪循環です。

 整形外科でもやたらたくさんクスリ出す先生がいます。

 例えば、殿部から下肢の痛みとしびれの患者さんに対して、ロキソニン、トラムセット、サインバルタ、リリカ、メチコバール、ユベラN、オパルモン ムコスタ プリンペランと、知ってるクスリで全部だしてんじゃねぇの?と思うような処方をする先生がいます。

 

 私だったら、急性痛の場合、まずロキソニン(痛み止め)を出します。ロキソニンが効かなければロキソニンを止めて、トラムセット(弱オピオイド)を出します。

 慢性痛ならサインバルタ(慢性痛治療薬)を出して、症状と副作用を見ながら漸増をしていきます。

 寝ているときの痛みや、朝起きたときの痛みがあるときはリボトリール(抗てんかん薬)を追加します。

 リリカ(神経障害性疼痛治療薬)は、帯状疱疹後神経痛にはすごく良く効きますが、それ以外の痛みにはそれほど効かない印象です。

 メチコバール、ユベラN(ビタミン剤)とかオパルモン(弱い血管拡張薬)とか屁の役にも立たないクスリは出しません。

 ムコスタ(胃粘膜保護薬)は、ロキソニンの副作用である胃炎や胃潰瘍を防ぐために処方していましたが、ほとんど役に立ってないことがわかってきたので、最近はほとんどだしてません。

 プリンペラン(吐き気止め)はトラムセットの副作用である吐き気を抑えるためのクスリですが、吐き気は内服開始5日間くらいで落ち着くので最初の1週間しか処方しません。

 

 トリガーポイント注射などを併用して、なるべく少ない種類のクスリで痛みをコントロールをするのが整形外科医の腕の見せ所だと思っています。

 

 

おまけ

 先月、東京に住んでいる甥っ子が、風邪を引いて近所の内科にかかったら、最初から10種類もクスリを処方されました。

 そのお医者さん、馬鹿なのか、それとも金儲けに走っているのか、どちらにしろ患者にとっては厄災でしかありません。普段全然薬を飲んでない人がいきなり10種類も薬を飲んだら、体がおかしくなっちゃいますよ。

 風邪はウイルス性感染症なので、クスリでは治りません。風邪薬は、あくまでクスリの症状を緩和するためだけのものです。咳がひどければ咳止めを、痰がひどければ痰切りを、熱が高ければ解熱薬を、必要最小限処方すればいいのです。

 安静にして布団にくるまって体を温めて、免疫力をアップすることが一番の治療です。それが難しい人は、ネックウォーマーとホッカイロで喉を温めてください。それだけでウイルスの増殖をかなり抑えることができます。

クレストールは飲んではいけない

2017.11.15 カテゴリー|トリガーポイント注射

 40代の男性

 5年前から、首こり、肩こり、背中の張り、腰痛、左耳なりに悩んできました。

 整形外科を受診してストレイトネックと診断され体操の指導を受けてまじめにやったけど良くなりませんでした。

 また、耳鼻科で調べてもらいましたが耳鳴りの原因はわかりませんでした。

 先月、知人に勧められて当院を受診しました。

 下図の部位にトリガーポイントを認めたので、トリガーポイント注射を行いました。

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 また、既往歴を聞くと、高コレステロール血症があり5年くらい前からクレストールを内服しているということでした。

 「クレストールが筋肉の痛みの原因かもしれません。内科の先生に行ってクレストールを止めてもいいか相談してください。」

 と説明しました。

 

 1週間後、再診しました。

 「痛みも耳鳴りもだいぶ良くなった。クレストールは医者に相談せずに勝手に止めたけど、それからすごく調子がいい」

 トリガーポイント注射も効いたのだと思いますが、やっぱりクレストールの副作用だったのでしょう。

 

 昨日ブログで紹介した林先生も、講演会の中で

 「コレステロールは体の壊れた部分をなおす修理屋です。下げてはいけません!」

 と言ってました。

 全くその通りだと思います。

 人間の細胞を取り囲んでいる細胞膜はコレステロールが主成分です。

 筋肉が壊れたとき、コレステロールが足りないと修復されず痛みが残ってしまいます。

 歳をとったらあちこち壊れるんだから、歳とともにコレステロールが上がるのは当たり前です。

 

 スタチン系の抗コレステロール薬は全部、筋肉痛になるのですが、その中でもクレストール(ロスバスタチン)が一番ひどい印象です。

 中高年以上の人で、全身の痛みで苦しんでいるような人のお薬手帳を見るとクレストールを飲んでいることが非常に多いです。

 マジでクレストールを発売中止にして欲しいと思う、今日この頃です。

 

「気の持ちようだ」といわれた左下肢のしびれの患者さん

2017.11.07 カテゴリー|トリガーポイント注射

 10年前から左臀部から太もものしびれがありました。

 1年前に某整形外科を受診して、レントゲンやMRIの検査を受け「異常なし」と診断され、「気の持ちようだ」と言われました。

 治療は特になかったようです。

 1ヶ月くらい前から腰痛も出現して、当院を受診しました。

 下図の部位にトリガーポイント注射を打って、サインバルタを処方しました。

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 1回目の注射でだいぶ良くなりました。

 2回目の注射でかなり良くなり、表情も明るくなりました。

 

 このブログにも何度も書きましたが、慢性痛は「気の持ちよう」であることは間違いありません。

 でも「気の持ちよう」だから、何も治療せず自分で何とかしろというのは間違いです。

 トリガーポイント注射をして、適切な薬を処方して、一時的にでも痛みを取り、患者さんに希望を持たせるのが医者の仕事だと思います。

 

慢性痛は考え方が9割

2017.10.09 カテゴリー|トリガーポイント注射

「ゴルフは考え方が9割」という漫画があります。

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 これすごくためになる本です。

 「(ゴルフは球を飛ばす競技じゃなく、)いかに狙ったところに球を運ぶかという競技だもんな」

 「大切なのは常にチャンスを残すこと」

 「どきどきするショットは選ばない」

 など、ゴルフプレー中の考え方で参考になる言葉がたくさん散りばめられています。

 ゴルフの技術を向上させるのは大変でも、考え方を変えるのは今すぐにでもできます。

 だから、考え方を変えたほうがスコアアップが早いのです。

 

 で、「慢性痛も考え方が9割」だと思います。

 先週もブログで書いたように、希望は痛みを癒やし、絶望は痛みを悪化させます。

 「痛みは骨や軟骨の変形じゃなく、筋肉の緊張が原因だもんな」

 「大切なのは常に治療に希望をもつこと」

 「どきどきするようの余計な心配はしない」

 慢性痛の原因である筋肉の緊張をなくすのは大変でも、考え方は今すぐにでも変えられます。

 だから、考え方を変えたほうが痛みの改善が早いのです。

 

   

 

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