2012.10.03 カテゴリー|トリガーポイント注射
今回はトリガーポイント注射の危険性について考察します。
当院では約4年前から、加茂先生式のトリガーポイント注射を行っています。その間、重篤な合併症として、気胸が1例、迷走神経反射による失神が1例、発生しています。その他、軽い合併症として、注射後の一時的な神経麻痺が100件くらい発生しています。当院ではトリガーポイント注射をする際に、基本的に皮膚の消毒をしていませんが、感染症は1例も発生していません。
では、合併症の発生確率はどのくらいか計算してみました。先週(9月24日~30日)に当院でトリガーポイント注射を受けた患者さんはのべ123人、1人の患者さんに対して1~30カ所注射しました。注射カ所は、のべ551カ所、一人平均4.5カ所です。1年間を50週とすると、1年間で6,150人に対し27,550カ所に注射したことになり、4年間では、24,600人に対し110,200カ所の注射をしたことになります。
気胸や、失神などの重篤な合併症の発生率はそれぞれ11万分の1(0.0009%)です。神経麻痺の発生率は1,100分の1(0.09%)です。感染症の発生率は今のところ0%です。
トリガーポイント注射の危険性はゼロではありません。が、重篤な合併症を起こす危険性はかなり低い安全な治療といえます。
2012.10.01 カテゴリー|トリガーポイント注射
77歳の男性
60歳ごろから両ひざ痛があり、近くの整形外科で変形性膝関節症と診断され、治療を受けていました。ヒアルロン酸の関節内注射や、痛み止めの点滴、運動療法などの治療を受けていましたが、症状が改善しないため、知人の紹介で、当院を受診しました。
診察の結果、内側広筋と膝窩筋にトリガーポイントを認めたため、同部にトリガーポイント注射を行いました。
3日後に再診した時の患者さんの感想
「すごく良くなった。嘘みたいに楽になった。今までの注射とは効果が全然違う。妻にも歩き方がよくなったと褒められた。」
この患者さんの場合、レントゲンでは確かに老化による骨の変形(変形性膝関節症)を認めます。しかし、骨の変形と痛みは直接は関係ありません。実際、レントゲンで、ものすごい変形をみとめても、全然痛くない人もたくさんいますし、レントゲンやMRIでまったく異常がなくても、ものすごく痛がっている患者さんもいます。
痛みの原因は、筋肉に出来たトリガーポイントです。トリガーポイント注射をすることで、痛みを楽にすることができます。
2012.9.24 カテゴリー|トリガーポイント注射
68歳の男性
3年前から左膝に違和感があり、3か月前にひねってから、左膝の内側に痛みが出現しました。某総合病院の整形外科を受診して、レントゲンでは異常がなく、半月板損傷と診断され、痛み止めの内服薬と湿布を貰いましたが、痛みは良くなりませんでした。
半月板損傷http://www.joa.or.jp/jp/public/sick/condition/meniscal_tear.html
半月板とは膝の中にある軟骨です。この軟骨が切れると痛みが出ると考えられています。半月板は軟骨なのでレントゲンにはうつりませんので、診断のためにはMRI検査が必要です。
知人の紹介で、当院を受診しました。触診の結果、左ひざ内側に圧痛点を認めたので、圧痛点にトリガーポイント注射を行いました。1週間後には、痛みはほとんど消えていました。
半月板は膝の中にある軟骨なので、半月板損傷による痛みが、トリガーポイント注射で良くなるはずがありません。トリガーポイント注射が効いたということは、この患者さんは、半月板損傷ではなく、筋筋膜性疼痛症候群(MPS)だったのです。
筋筋膜性疼痛症候群(MPS) http://www.jmps.jp/
ここからは僕の勝手な想像ですが、この患者さんを診た某総合病院の整形外科医はMPSという病態があることを知らなかったのでしょう。レントゲンで、異常を認めなかったため、レントゲンにはうつらない半月板損傷だろうと診断したんだと思います。
2012.9.20 カテゴリー|トリガーポイント注射
ソフトボール部に所属している14歳の少女が、左膝痛で受診しました。1週間前から運動により悪化する左膝外側の痛みがあり、腸脛靭帯に圧痛があったので、腸脛靭帯炎と診断しました。
http://www.geocities.jp/junyoshida119/chiryoucyoukeizintai.html
1年前にも、同じ痛みがあり、別の整形外科で物理療法を受け、半年間運動を休んで良くなったそうです。腸脛靭帯炎は運動のやりすぎによる炎症なので、運動を休めば良くなります。また、半年くらい休めば自然と良くなるでしょう。しかし、すぐに新人戦もあるので、なるべく早く治してあげるために、圧痛点にトリガーポイント注射をしました。1週間後に再診してもらったときは、すっかり痛みがなくなっていたので、運動を許可しました。
中学校の部活動は、実質2年間しかありません。治療のために、また半年も休んだら、この少女の部活動の思い出は、同級生の半分になってしまいます。なるべく早く痛みをとってあげることも、整形外科医の大切な仕事の一つです。
トリガーポイント注射は、腸脛靭帯炎、シンスプリント、足底腱膜炎、オスグット病などのスポーツ障害にも有効です。
2012.9.04 カテゴリー|トリガーポイント注射
70代の男性
3か月前から、胡坐をかいていると両足底がしびれるようになりました。2週間ほど前から、痺れと痛みが悪化して、辛くなってきたため、当院を受診しました。しびれや痛みは、じっとしているほうが強く感じて、夕方に特にひどくなるそうです。合併症として、高血圧と狭心症と緑内障があります。
両足背動脈の拍動は良好でした。足底には圧痛点を認めず、両ヒラメ筋に強い圧痛点を認めました。
ヒラメ筋の筋筋膜性疼痛症候群(MPS)と診断して、圧痛点にトリガーポイント注射を行いました。
1週間後に受診した際には、痺れも痛みもかなり改善していました。
足底の痺れを訴えている高齢者はたくさんいます。そのほとんどは、ヒラメ筋などのふくらはぎや足底の筋肉のMPSが原因と思われます。この患者さんのように、症状が出てすぐにトリガーポイント注射などの治療をすれば、ほとんどの場合すぐに良くなります。しかし、足底の痺れで受診する高齢の患者さんは、すでに何年も痺れを我慢してから受診して来る人がほとんどです。何年も我慢すると、症状が慢性化してしまい、なかなか治すことが出来なくなります。
痛みやしびれは慢性化する前に、すみやかに消してしまうことが大切です。