2013.5.30 カテゴリー|その他の治療について
ばね指とは、手の指の腱鞘炎のことです。
手のひらの指の付け根のところには、指を曲げる腱(屈筋腱)が通るトンネルがあります。このトンネルを腱鞘と言います。
手を使いすぎたりすると、この腱鞘が炎症を起こして、硬く厚くなります。腱鞘が硬くなると、腱が通るトンネルが狭くなるので、引っかかるようになります。引っ掛かりが外れるときに、ばねの様に指が跳ねるので、ばね指とよばれています。強い痛みも伴います。
ばね指に対しては、ステロイドの腱鞘内注射が標準治療です。
腱鞘内注射を3回やってもよくならない時は、手術(腱鞘切開術)が行われます。
以前は、デカドロンというステロイドの注射を行っていました。しかし、デカドロンはばね指にあまり効果がなく、すぐに痛みが再発してしまい、結局ほとんどの患者さんに手術を行っていました。
10年くらい前から、ステロイドをケナコルトに変更しました。ケナコルトのばね指に対する効果は劇的でした。
注射をした患者さんの全員、翌日には痛みが消えます。引っ掛かりも1か月くらいで消えます。
半分くらいの患者さんは、半年くらい経つと再発しますが、もう一度注射すると、治ります。
その半分くらいの患者さんは、また半年後に再発しますが、3回目の注射をすると、ほとんどの患者さんで再発しなくなります。
ケナコルトを使う前は、ばね指の患者さんのほぼ全員を手術をしていました。
ケナコルトを使うようになってから、手術をした患者さんは数例程度です。
ばね指はケナコルトの腱鞘内注射で治ります。
2013.5.27 カテゴリー|その他の治療について
慶応大学病院放射線科教授 近藤誠先生の著書
「がん治療で殺されない七つの秘訣」を読みました。
http://www.amazon.co.jp/dp/4166609130
要約すると、以下のような内容です。
現在がんの標準治療として行われている外科手術や抗がん剤治療には、延命効果がなくむしろその侵襲と毒性のために死を早めてしまう。
がんは症状がなければ治療をせず、症状が出たら症状に合わせて放射線療法や鎮痛剤の投与を受けたほうが、長生きできる。
どうせ、症状がなければ治療をしないのだから、無症状の人ががん検診を受けてがんを見つけるのは無意味。
僕はがん治療に関しては専門外なので、近藤先生の理論が正しいかどうかわかりません。
だから、患者さんにがん治療は受けないほうがいいとか、がん検診は受けないほうがいいと勧めることはけっしてありません。
でも僕自信は近藤先生の理論を信じることにしました。
がんは老化現象のひとつです。もしがんになったら、それ受け入れてがんと共生する方法を選びたいと思います。
まあでも、うちの家系はみんな長命だし、タバコも吸ってないし、糖質制限もしてるし、加圧トレーニングもしているから100歳くらいまでは余裕で元気で生きられる気がしてるんだけどね。
2013.5.16 カテゴリー|その他の治療について
50代男性
3か月前から歩くと右足首の内側に痛みが出るようになりました。
2か月前に某総合病院の整形外科を受診しました。レントゲンを撮ってもらった結果
「骨には異常ないので、痛み止めで様子をみてください。」
と言われました。
痛み止めを飲んでも治らないため、先日、当院を受診しました。
内くるぶしの少し下に圧痛と腫脹を認めました。
腱鞘炎と診断し、圧痛部にステロイド注射をしたらすぐに良くなりました。
大病院ではほとんどの場合、初めて受診した患者さん(新患)は、若手の医師(研修医など)が担当しています。
なぜなら、部長クラスのベテラン医師はすでに大勢の患者さんを担当しているため、新患に手が回らないからです。
患者さんの病状を診断するうえで最も重要なものが経験です。
若手の医師には経験が不足しています。それを補うためレントゲンなどの画像所見に頼ります。
それで、画像所見に異常がないと診断がつけられないので
「痛み止めで様子をみてください」となります。
私を含めて、ほとんどの開業医は、大きな病院の部長や副部長を歴任したベテラン医師です。
診断技術においては、大病院の若手医師より優れています。
また、経験上、自分の限界がわかっているので、手に余ればしかるべき医療機関に紹介してくれます。
救急車を呼ぶほどの急病でなければ、最初は開業医にかかったほうがいいですよ。
2013.5.13 カテゴリー|その他の治療について
昨年12月にこのブログでゼムクリップを使った巻き爪治療を紹介しました。
https://nishibori-seikei.com/blog/2012/12/post-157.html
前回の症例より、さらにひどい巻爪の方にも同じ方法で治療して、うまく治ったので紹介します。
46歳女性
腰痛の治療のついでに、巻き爪について相談されましたので、以下の方法で治療しました。
① ヤスリを使って爪を少し薄くします。
② 事務用のクリップをニッパーで切り、曲がっている爪の間に挟み込みます。
(この時、クリップは爪の湾曲より2~3㎜長く切ります。)
③ 瞬間接着剤でクリップを爪に固定します。
クリップをはさめた状態
その後、月に1回通院してもらってクリップを交換しました。
3か月後、うまく治りました。
2013.5.07 カテゴリー|その他の治療について
リウマチ性多発筋痛症
リウマチ性多発筋痛症は、リウマチという名前が使われていますが、関節リウマチとは違う病気です。一般に50歳以上、とくに60歳以上の高齢者に起こる原因不明の病気で、体幹に近い部分の筋肉の痛みやこわばりが主な症状の慢性炎症性の疾患です。
http://health.goo.ne.jp/medical/search/10T20100.html
70代の女性
ある朝から首の痛みが出現し、次の日の朝には首が支えられないほどの激痛になったため、当院を受診しました。
レントゲン上は老化現象以外の異常はありませんでした。
37度弱の微熱を認めました。
高齢者・急激で激烈な首の痛み・微熱・血液検査でCRPの上昇
これらの症状がそろえば、リウマチ性多発筋痛症と診断できます。
しかし、当院には検査室がないため、血液検査の結果は早くても翌日の朝にならないとわかりません。
その結果を待っていたのでは、それまでの間、患者さんは激痛を我慢しなければいけません。
それではかわいそうなので、見切り発車的に、ステロイド(PSL10㎎)の内服を開始しました。
(実際CRPは6.11mg/dl(正常値0.2mg/dl以下)と上昇していました。)
ステロイドを飲み始めてすぐに痛みは改善していき、1週間後にはほとんど無くなり、CRPも正常値になりました。
以後は、症状とCRPの値をみながら、ゆっくりと少しずつステロイドの量を減らしていきました。