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2018.4.04 カテゴリー|湿潤療法
60歳男性
栗の木の剪定をしていて枝が落ちてきて、左手の甲を切りました。昔にケガしたときのもらった軟膏が家にあったのでそれを塗っていましたが、10日経っても良くなるどころかだんだんひどくなってきたので当院を受診しました。
受診時のキズの写真です。
キズの周りの皮膚が茶色く変色していて、キズの中には溶けたさとうのようなものが入っていました。
軟膏はイソジンシュガー(ユーパスタ)だと思われます。
イソジンシュガーは、消毒薬のイソジンと砂糖を混ぜた軟膏です。
砂糖は水をたくさん吸収するので、イソジンによる消毒して砂糖でキズを乾燥されることが目的の軟膏です。
湿潤療法とは真逆の考え方で作られている大昔からある軟膏のひとつです。
消毒も乾燥も、傷の治療にとっては邪魔でしかないので、創はどんどん深くなってしまいました。
イソジンシュガーをきれいに取り除くと、キズは皮膚潰瘍を形成していました。
ヘモスタパッド、プラスモイストDC、ハイドロコロイドなどを使って湿潤療法を行いました。
10日後にはきれいに治りました。
キズにイソジンシュガーとか使っちゃ絶対ダメだよ。
2018.3.08 カテゴリー|トリガーポイント入門
前回のブログで、痛みを我慢してから痛み止めを使っても、痛みが閾値より下にならないから痛みが取れないことを説明しました。
この痛みが取れない状態が長く続くと、だんだんと閾値が低くなっていきます。
その結果、普段は痛みを感じないような刺激でも痛みと感じるようになります。
この状態が慢性痛です。
慢性痛を治すにはどうしたらいいでしょう。
トリガーポイント注射などで一時的にでも痛みを消すことで、閾値が徐々に正常に戻っていきます。
また、慢性疼痛治療薬サインバルタには、下行抑制系の働きを改善することで閾値を正常に戻す作用があります。
痛みを我慢していると慢性痛になります。
慢性痛はなかなか治りません。
そうならないためには、痛みが出たらすぐに痛み止めを飲むことです。
それでも良くならなければトリガーポイント注射を受けましょう。
2018.3.08 カテゴリー|トリガーポイント入門
なぜ痛みは我慢しないほうがよいのかを患者さんに説明するとき、中枢感作とか下行抑制系とか難しい専門用語を使っても理解してもらうのは難しいと思います。
そこで、私は「痛みの閾値(しきいち)」を使ってなぜ痛みは我慢してはいけないのかを説明しています。
最初にメモ紙に横軸が時間、縦軸が痛みの強さを表すグラフを書きます。
痛みは時間とともに強くなっていきます。
しかし人間はすべての痛み刺激を痛みとして感じているわけではありません。
痛みには閾値(しきいち)があり、閾値より下の痛み刺激は痛みとして脳に伝わらないようになっているのです。
そうじゃないと痛み刺激のせいで脳がパンクしてしまうからです。
痛みを限界まで我慢してから痛み止めを使っても、痛みは閾値より下にならないので痛みは消えません。
逆に、痛みを我慢せず、痛くなったらすぐに痛み止めを使えば、痛みはすぐに閾値より下になるの痛みは消えます。
なので、痛みは我慢せず、痛くなったらすぐに痛み止め使ったほうが良く効くのです。
痛みを我慢し続けていると、慢性痛になってしまいます。
次回は痛みの閾値を使って慢性痛の仕組みについて説明します。
2018.3.05 カテゴリー|トリガーポイント注射
62歳の男性
2週間前に庭木の手入れをしてから右肩が痛くなり当院を受診しました。
画像所見と理学所見から五十肩(肩関節周囲炎)と診断し、肩峰下滑液包ブロックをして、ロキソニンを処方しました。
その後も2週間に1度くらい通院してもらって、トリガーポイント注射なども行いましたが、症状は悪化と改善を繰り返していました。
そうこうしてるうちに3ヶ月経ってしまいました。
すでに慢性痛になっていると診断し、サインバルタ20mg1カプセルを処方しました。
すると1回飲んだだけで痛みは嘘のように消えたそうです。
66歳の男性
2ヶ月前から両肩が痛くなり当院を受診しました。
画像所見と理学所見から五十肩(肩関節周囲炎)と診断しました。
この方は、肩の屈曲(腕を前から上に上げる動き)が右110度、左80度しかなく、ひどい肩関節拘縮もありました。
ストレッチのやり方を指導して、肩峰下滑液包ブロックをして、ロキソニンを処方しましたが2週間経ってもちっとも良くなりませんでした。
そこでロキソニンからサインバルタに変更しました。
1週間後、痛みはさっぱり変わらないけど副作用もなかったということで、サインバルタを2カプセルに増やしました。
2週間後、いくらかいいような気がするということなのでサインバルタを3カプセルに増やしました。
3週間後、バッチリ良くなったそうです。肩の屈曲も右140度、左130度に改善していました。
サインバルタは五十肩にもけっこう効くみたいです。
2018.2.16 カテゴリー|トリガーポイント注射
50代後半の女性
2週間前にお葬式に出てから両殿部と左下肢の痛みが出現して当院を受診しました。
特に朝起きたときや寝返りをしたときが痛いそうです。
10年前にも腰痛があり、別の整形外科を受診して、椎間板ヘルニアと診断されました。
その際に医師から「腰にヘルニアがある。爆弾を抱えているようなものなので、今後も気をつけてください。」と言われたそうです。
それで、そのヘルニア爆弾がまた爆発したのではと心配になり当院を受診したそうです。
「ヘルニアは腰痛と無関係です。痛みの原因はおしりの筋肉のこりです。朝起きたときに痛むのは寝ている間に筋肉が固まるからです。」
「ヘルニアがあるから爆弾を抱えているようなものだというのは、根拠のない呪いの言葉です。すぐに忘れてください。」
「筋肉のこりが原因なので、こっている筋肉に注射してこりをほぐせば良くなります。」
と説明して、下図の部位にトリガーポイント注射をして、リボトリールを処方しました。
しかし、「ヘルニアがあるから爆弾を抱えているようなものだ」というのは、今まで効いた中で一番ひどい呪いの言葉です。
そんなこと言われたら、不安で不安で仕方ないでしょう。
不安は痛みを悪化させ、希望は痛みを改善します。
不安を与えるような呪いの言葉を唱えることは、医者が一番やっちゃいけないことだと思います。