2013.2.04 カテゴリー|骨折・捻挫の治療
57歳男性
ソフトボール中にボールをぶつけて受傷しました。痛みと腫れが引かないため、3日後に当院を受診しました。
受診時のレントゲンで、上の写真のように、親指の末節骨がバラバラに折れてしまっています。
幸い、爪が剥がれていなかったので、手術はせず保存的に治療しました。
患部をぶつけないために、特殊なプラスチック(プライトン)を用いて指先を覆いました。
(プライトンは60度以上のお湯で温めると柔らかくなり、それ以下に冷すと硬くなる特性があります。)
大分くっつきました。痛みがなくなったのでプライトンを外しました。
3か月後のレントゲンです。
ちゃんとくっつきました。
末節骨骨折は爪が割れたり剥がれたりしていなければ、爪がギプスの代わりになるので、手術をしなくてもちゃんとくっつきます。
2013.1.25 カテゴリー|骨折・捻挫の治療
30歳男性
3か月前にフットサル中に左ふくらはぎに痛みが走り、某整形外科を受診しました。そこで「肉ばなれ」と診断され、2週間外固定を受け、その後湿布で治療を受けていました。
治療で、ふくらはぎの痛みはとれましたが、足首周辺の痛みがとれないため当院を受診しました。
上図のように腓腹筋にトリガーポイントを認めたため、腓腹筋の外傷後のMPS(筋筋膜性疼痛症候群)と診断し、トリガーポイント注射を行いました。
その後、通院してきませんでしたが、1月後に再度受診しました。
「最初よりよくなっているけど、まだ痛い」
というので、もう一度、トリガーポイント注射をしました。
その2週間後に再度受診しました。そして、
「最近、アキレス腱のところがへっこんでいることに気が付いた。」
というのです。
一瞬、冷や汗が流れました。
触ってみると確かに、アキレス腱が凹んでいます。
念のためエコーで確認してみました。
確かにアキレス腱が切れています。
上の写真ではわかりにくいので、線を入れてみました。
白い線で囲んであるところが踵の骨です。
青い線で囲んであるところがアキレス腱です。
アキレス腱がばっちり切れているのがわかると思います。
アキレス腱断裂を見逃していたことを正直に誤り、水戸協同病院に紹介して手術をしてもらいました。
前医の「肉ばなれ」という診断を鵜呑みにしてしまったこと。
筋肉ばかり触診して、アキレス腱をちゃんと触らなかったこと。
などが、アキレス腱断裂を見逃してしまった原因でしょう。
2012.12.04 カテゴリー|骨折・捻挫の治療
82歳女性
膠原病があり、某総合病院のリウマチ科に通院中で、ステロイドを内服中(PSL8㎎/day)のおばあちゃんです。同じ総合病院の整形外科で骨粗しょう症の治療も受けています。
7月末に、草むしりをしてから、右腰痛と右臀部痛が出現しました。上がその時のレントゲンです。第12胸椎から第2腰椎が、つぶれていて圧迫骨折になっています。でも、ここは骨硬化もしてて、古い圧迫骨折と思われました。新しい圧迫骨折は、はっきりしませんでしたが、痛がり方やステロイド内服中などから、圧迫骨折とそれに伴う筋筋膜性疼痛症候群と診断しました。
(圧迫骨折の痛みは、寝たり起きたりする時はすごく痛いけど、1度起きてしまえばあまい痛くなくなるという特徴があります)
「骨粗しょう症がひどい方は、骨折したばかりの時は、レントゲンでどこが折れているかわからないことが多いので、どこが新しい骨折かは、わかりませんが、おそらく圧迫骨折の痛みでしょう。圧痛部にトリガーポイント注射をして、2週間ほど、なるべく安静にしていれば、痛みがとれると思います。」と説明しました。
そして、予想通り、2週間後には痛みがかなり改善しました。
しかし、そのあと、某総合病院の整形外科を受診して際、再度腰椎のレントゲンを撮り、
「4年前のレントゲンと比べて変わっていないので、圧迫骨折ではなく、筋肉痛だ。」と言われたそうです。
それで、しばらく当院には通院しませんでした。
11月末ごろから、また痛みがひどくなり、当院を受診しました。下がその時のレントゲンです。
7月のレントゲンに比べて、第5腰椎がつぶれていて、骨硬化像を示しています。
わかりにくいので、第5腰椎だけクローズアップすると下のようになります。
12月のレントゲン
7月の腰痛は、第5腰椎圧迫骨折が原因だったのだろうと推測できます。今回の腰痛も、おそらく、正常に見える第3腰椎か第4腰椎が圧迫骨折を起こしているのだろうと思われます。某総合病院の診断より、僕の診断のほうが正しかったのです。
ひどい骨粗しょう症のある方は、草むしりをしたくらいでも、あるいは何もしなくても、腰椎圧迫骨折を起こすことがあります。
また、そういう方の、圧迫骨折は受傷直後にはレントゲンに写らないこともよくあります。
圧迫骨折の痛みは、「寝たり起きたりする時にすごく痛いけど、起きてしまえばあまり痛くない」という特徴があります。
2012.11.12 カテゴリー|骨折・捻挫の治療
9歳の少女
学校の鉄棒からおちて受傷しました。救急病院を受診して、骨折しているので三角巾固定され、整形外科を受診するように言われ、2日後に当院を受診しました。
上が、初診時のレントゲンです。上腕骨が上から6cm位のところで折れていて少し曲がっています。このままくっつけば、問題ないので、整復や手術をせず、このまま保存的に治療しました。三角巾はつっていると首が痛くなるのではずして、ストッキネットとスポンジで自作したスリングで固定しました。
10日後に再診した際、痛みはなく、レントゲン上も転位を認めなかったので、スリングを外して、右腕を自然に垂らしてもらい、自動拳上(自分の力で右腕を上げること)のみ禁止しました。また、自宅で振り子運動をするように指導しました。
振り子運動http://www.4050kata.net/ch4/iron.htm
5週間後のレントゲンで仮骨が十分に形成されていたので、自動拳上も許可しました。
7週間後のレントゲンで、骨癒合が十分であり、動きの制限もないことを確認し、治療を終了としました。
上腕骨に近位部骨折では、脱力して重力に逆らわずに腕を垂らしている状態が、骨折部に一番負担がかかりません。逆に、自分の力で腕を上げようとすると、てこの原理で骨折部に強い力が加わり、骨がずれてしまいます。なので、上腕骨骨折の治療においては、骨がつくまで腕を自分で上げないようにしてもらうことが大切です。そのかわり、力を抜いた状態でいられれば、ギプスや三角巾などで腕を長期間固定する必要はありません。
2012.10.01 カテゴリー|骨折・捻挫の治療
12歳の女の子
地元のドッジボールチームのエースとして活躍していました。1か月くらい前から、投げるとき右上腕に痛みを感じていました。7月のある日、ドッジボールを投げたときにバキッという音がして、腕が動かなくなりました。当日、当院を受診しました。レントゲン上、上腕骨骨幹部の骨折を認めました。投球骨折です。投球骨折は野球選手に多く、ドッジボール選手の投球骨折は非常に珍しいです。
転位が大きかったので、手術が必要と判断しました。当院では対応不可能なので、水戸医療センター病院に紹介しました。3日後に水戸医療センターで経皮的鋼線固定術をうけ、その3日後には退院して、当院に再紹介されました。下の写真が、手術後の写真です。すごく上手な手術をしてもらえたと思います。
経過は良好で、手術後2週でギプスを外し、手術後4週で仮骨が出来たことを確認して、鋼線を抜去しました。
鋼線を抜去した直後は、肘はほとんど動きませんでしたが、リハビリはせず、自宅のお風呂で自分で動かす練習をするように指導しました。4週間後にはほぼ元通り動くようになりました。(子供の場合、乱暴なリハビリをすると、骨化性筋炎になり、かえって重篤な後遺症を残すことがあります。)
実は、僕も大学時代に投球骨折になっています。当時、野球部に所属していましたが、運動音痴のため、完全に戦力外でした。でも、少しはチームに貢献したいと思い、毎日バッティングピッチャーをしていました。多いときには300球くらい投げていました。そのうち、上腕に痛みがでたので、大学病院の整形外科を受診しましたが、異常なしといわれたので、そのままバッティングピッチャーを続けていました。ある日、バキッという音とともに上腕骨が折れました。すぐに大学病院の救急外来を受診して、整復操作を受けました。整復操作を受けたときの痛さといったら、「なんでも白状するから許してください」と思うほどでした。1時間近く整復操作を受けても結局整復できなかったため、そのまま入院しました。1晩入院したら、自然と整復されたため、手術はせず、機能的装具で治療を受け、3週間後には退院しました。