2015.7.23 カテゴリー|骨折・捻挫の治療
20代の男性銀行員
フットサルをしていて転倒して受傷しました。救急病院に搬送され、手術を勧められましたが、銀行員で仕事は休めないし、奥さんが臨月で入院もできないということで、保存療法を希望して当院に紹介されました。
受診時のレントゲンです。
鎖骨遠位端骨折(タイプ2)です。鎖骨バンドと弾性包帯を使った保存療法を行いました。
整復後のレントゲンです。
2ミリくらいずれていますが、まあまあの位置に整復されています。鎖骨バンドと弾性包帯をワイシャツで隠して、翌日から銀行業務に復帰しました。痛くない範囲で肩や腕を動かしていいと説明しました。
2週間後のレントゲンです。
かなりいい形で整復されています。鎖骨バンドをきちんと着けていると、肩を動かしている間に自然と整復されていきます。骨折部が動かなくなったことを確認して、弾性包帯を外しました。
6週間後のレントゲンです。
きれいについたので鎖骨バンドも外しました。職場にも臨月の奥さんにも迷惑をあまりかけないですみました。
2015.7.08 カテゴリー|骨折・捻挫の治療
40代の男性
スポーツ中に転倒して右鎖骨を折りました。救急病院で鎖骨バンドで固定を受けてから、近所の整形外科医院で治療を受けました。ベテランの院長先生は「鎖骨バンドによる保存療法で何とか治るだろう」といっていたそうです。受傷から18日目にその医院を受診したときは院長が不在で、若い医師の診察を受けました。その若い医師はレントゲン写真を見るなり、「これは鎖骨遠位端骨折といってくっつきにくい骨折です。転位が大きいのですぐに手術を受けた方がいいです。」と言い出しました。患者さんはびっくりして不安になって、すぐにググって、翌日当院を受診しました。
受診時のレントゲンです。
鎖骨遠位端骨折じゃねぇし
普通の鎖骨骨折だし
すでに仮骨ができて骨がくっつきはじまっているし
このまま変形癒合しても鎖骨は元の形に戻るし
手術なんか全然必要ねぇし
と心の中で思ったことを、丁寧な言葉に変換して患者さんに説明しました。
この若い医師は大学病院から手伝いに来ていたそうです。大学病院では手術するような骨折しか治療しないからね。鎖骨骨折が手術しなくてもくっつくことや、多少ずれていても問題ないことを知らないんだろうね。
やっぱり医者は経験が大事だよね。
2015.6.01 カテゴリー|骨折・捻挫の治療
40代の女性
自転車で転倒してから左肩が痛くて動かせなくなり当院を受診しました。
レントゲン上、左肩関節脱臼骨折を認めました。
1%キシロカイン20を肩関節内に注射して、局所麻酔した後、テレビレントゲンを見ながら整復しました。
大結節が骨折しているため、外旋法ではなく、挙上法を行いました。腕をゼロポジションに上げてから骨頭を下から押すとストンと上腕骨骨頭が肩関節にはまりました。
骨折した骨も、元の位置に戻ったので、手術はしないで保存的に治療することにしました。
1週間は、肩を動かさないように「手つり」で固定しました。
1週間後には「手つり」もはずして、手を振り子のようにぶらぶらさせる運動(振り子運動)を始めてもらいました。
最初の6週間は、骨がずれてしまう可能性が高いので、自分の力で腕を上げる運動(自動挙上運動)は、絶対にしないように注意しました。
2015.4.03 カテゴリー|骨折・捻挫の治療
鎖骨遠位端骨折は鎖骨の末端部が折れた骨折です。47年前、Neer博士は論文で鎖骨遠位端骨折を、ほとんど転位がない安定型(Neer分類1型)と折れた鎖骨が上に跳ね上がる形で転位している不安定型(Neer分類2型)に分類しました。そして、安定型は保存療法で治療可能であるが、不安定型は手術をした方がよいとしました。
それ以後、不安定型の骨折に対しては手術が行われてきましたが、15年前に私が当時勤務していた保原中央病院の佐藤伸一先生が不安定型に対する保存療法を発明し、私が学会で発表しました。
1年半前、そのことについてこのブログに書きました。
https://nishibori-seikei.com/blog/2013/11/post-340.html
それ以後、鎖骨遠位端骨折と診断され手術を勧められ、ネットで調べて当院を受診した患者さんが8人いました。患者さんの住所は、東京都5名、神奈川県2名、長野県1名でした。
8名の患者さんのうち4名は、Neer博士が手術が必要とした不安定型ですが、残りの4名はそもそも手術する必要がない安定型でした。
なぜ、前医は手術する必要がない安定型の骨折に対して、手術を勧めたのでしょう?
多くの整形外科医は、手術の技術を磨くことには一生懸命ですが、保存療法は誰でもできる簡単な治療と馬鹿にして、きちんと勉強しません。だから保存療法に自信がなく、どちらか迷った場合は手術を勧めるようになるのです。
私は、他の医師が手術じゃないと治せないと言っている骨折や捻挫を、手術をしないで治すことに生き甲斐を感じているので、保存療法は得意です。
2015.1.06 カテゴリー|骨折・捻挫の治療
11歳のサッカー少年
学校で遊んでいて転んで床に右肩を強打して受傷しました。
受傷時のレントゲンです。矢印で刺した部分で上腕骨がぐにゃっと曲がっています。
痛みが強かったので、右上肢を「てつり」で固定しました。
1週間後には痛みがほとんどなくなったので、「てつり」を外し、自分の力で右腕をあげないように指導しました。(自動挙上禁止)
受傷後2週間でほとんど痛みがなくなり、レントゲン上も仮骨がみえたので、痛くない範囲で右腕を動かしていいと指導しました。(自動挙上許可)
受傷4週間後には、痛みは完全に良くなり、肩の動きの制限もなくなったので、転ばないように注意すればサッカーもしていいと許可して、治療を終了しました。
このように、こどもの骨折はバキッと折れずにぐにゃっと曲がります。こどもの場合4週間で治りますが、大人が同じ場所を骨折した場合、8週間以上かかります。