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「動くから折れてない」は迷信

2014.2.11 カテゴリー|医療に関する迷信

 前回のブログで紹介した患者さんの様に、「関節が動くから折れていないと思った。」と言って、骨折をほっといてしばらくしてから受診する患者さんがけっこうたくさんいます。「動くから折れてない」という話は、全く根拠のないでたらめな迷信です。

 

 当院を受診する骨折の患者さんは、ほとんど全員、関節を動かすことができます。骨折をして関節を動かせない状態になるのは、太い骨がぼっきり折れて痛みが非常に強くて関節を動かせない場合か、骨折部で折れた骨が神経をはさんで神経麻痺を起してる場合かどちらかです。どちらも緊急手術が必要な重症な骨折です。救急車を呼んだほうがいいです。なので、「動くから折れていない」は不正解で、「動かないほどひどい骨折の場合は救急車を呼びましょう。」が正解です。んで、動くけど腫れや痛みがひどい場合は折れている可能性が高いので、なるべく早く整形外科を受診しましょう。

 

 「動くから折れていない」は迷信です。

痛みを我慢すると慢性痛になる(その2)

2014.2.10 カテゴリー|骨折・捻挫の治療

60代の女性

 歩いていて左足首をひねりました。強い痛みと、著しい腫れが出現しましたが、指や足首が動くので折れていないと自己判断して、安静のみで様子をみていました。10日くらいたってからやっと歩けるようになりましたが、その後いつまでたっても痛みがとれないので受傷から5週間後に当院を受診しました。

 受診時のレントゲンです。

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 外くるぶしの少し上が折れています。しかしすでに仮骨(骨をくっつける新しい骨)が出来ていて、骨はくっついています。

 

 骨がくっついているのに、なぜ痛みがとれないのでしょう。それは痛みをずっと我慢していたからです。痛みを我慢していると神経が異常に興奮してしまい、痛みの原因がなくなっても、痛みだけが残ってしまう状態になります。このような痛みを慢性痛と言います。慢性痛は治すのが非常に難しい痛みです。この方の場合、受傷してすぐにシーネで外固定すれば、すみやかに痛みが軽減し、3週間くらいシーネを巻いた後は、痛みなく歩くことができたと思います。痛みが出たらなるべく早く適切な治療をして痛みを取り除いてやることで痛みが慢性痛に変化することを予防しなければいけません。

 

 痛みは我慢してはいけません。我慢させてもいけません。

8歳の肘内障

2014.1.26 カテゴリー|骨折・捻挫の治療

 肘内障とは、幼稚園程度の年齢の子どもによく起こりますが、手を強く引っ張られたときに、腕がだらっとして、まるで「ひじが抜けた」状態になることをいいます。これは脱臼ではなく、ひじの関節の細い輪状の靭帯がずれた状態です。骨と骨とを輪のようにつないでいる靭帯が未発達なために起こるもので、靭帯が十分に発達する7才以降にはほとんど見られません。

 

 8歳の男の子がサッカー中に転倒して左手をついてから左肘が痛くて動かなくなったと受診しました。一緒についてきたお母さんは「6歳ごろまでは何度も肘が抜けているので、また肘が抜けたのではないか?」と心配していました。しかし、8歳になると靭帯が十分発達するので肘内障になることはめったにありません。受傷した時の様子などから、肘の骨折の可能性も高かったので、念のためにレントゲンを撮りましたが骨折は認めませんでした。ではやはり肘内障なのだろうと診断し、肘内障の整復動作をするとポキッという音とともに靭帯が整復され痛みも消えました。

 

yjimage[1].jpg  肘内障の整復法 手のひらを上に向けて肘を伸ばした状態で肘の内側の橈骨頭の部分を親指で押さえながら、肘をゆっくりと深く曲げて、手首を内側にひねるとポキッと音がして靭帯が整復されます。中には、何度整復操作をしても整復されない場合があります。その場合は1日だけ上腕から前腕までシーネ固定をすると、その間に自然と整復されます。

 

 

 整形外科医になって20年、肘内障の子供をたくさん整復してきましたが、8歳の子の肘内障を整復したのは初めてでした。体の成長は人それぞれなので、頭から決めつけないで柔軟に対応しなければいけないなぁとあらためて思いました。

 

 ちなみに肘内障を整復すると今まで痛がっていた子供が一瞬で痛みが消えて笑顔になるので、ご両親にとても感謝されます。整形外科医としての幸せを感じる瞬間ですね。

やっぱりシーネは外させちゃダメだよ

2014.1.16 カテゴリー|骨折・捻挫の治療

13歳の男子中学生

昨年の11月末に壁を殴って右手の甲の骨を骨折しました。(第5中手骨頸部骨折)近所の整形外科を受診し、骨がずれていたので無麻酔で整復してもらい手の甲から小指までシーネ(添え木)で固定してもらいました。担当した医師から、「毎日、シーネを外して湿布を交換してください」と指導されたので、その通り毎日シーネを外していました。2週間後にレントゲンを撮ると、骨折がまたずれてしまっていました。担当医は「少しずれてしまいましたが、成長期なので自然と元に戻るでしょう・・・・もごもごもご」と歯切れの悪い説明をしたそうです。それで不安になり、インターネットで検索し、当院のブログを読んで、受診しました。

初診時のレントゲンです。第5中手骨が折れて曲がっています。このような骨折をボクサー骨折とよんでいます。

9994a.jpg

最初の担当医が言ったように、成長期の場合、成長にともない変形が矯正されるのである程度のずれは許容範囲内ですが、この子の場合、この状態だとグーを握ったときに、小指と人差し指が交差してしまい、うまくグーが握れませんでした。これでは日常生活に支障が残るので、再度整復することにしました。受傷から2週間以上たっているので、もう骨がくっついていて戻らない可能性もあり、その場合手術が必要になることを説明してから、骨折部に局所麻酔をして、テレビレントゲンで確認しながら整復しました。

整復後のレントゲンです。良くなっていますが全く元通りというところまでは戻りませんでした。

9994b.jpgしかし、小指と薬指は交差しなくなったので許容範囲内と診断し、このまま手首から中指薬指小指の先端までシーネ固定しました。もちろん「自分では絶対にはずさないように!」と説明を加えました。3週間シーネ固定して、仮骨(骨をくっつける新しい骨)の形成を認めたのでシーネを外しました。

再整復してから5週間後のレントゲンです。仮骨がしっかりと形成されています。

9994c.jpg

この時点で、関節の動きに異常を認めなかったので治療を終了としました。

 

以前にもブログに書きましたが、シーネを外して湿布を交換するという治療は、有害無益です。骨折の痛みや腫れをひかせるために湿布を貼るのでしょうが、シーネでしっかり固定すれば、骨折が動かなくなるので痛みは無くなるし、骨折部からの出血がおさまり腫れもひいてきます。シーネを外した時に骨がずれてしまうリスクを冒してまで、湿布を貼りかえる必要なんて全くありません。

 

関連ブログ

シーネは自分で外しちゃダメ

https://nishibori-seikei.com/blog/2013/02/post-186.html

痛みを我慢すると慢性痛になる!

2013.12.04 カテゴリー|骨折・捻挫の治療

40代の女性です。

1か月前にソファーの角に右足をぶつけました。

受傷後、すごく腫れて痛みも強かったのですが、ただの打撲だろうと考えて、痛みを我慢していました。

1か月経っても痛みがとれないため、当院を受診しました。

レントゲンを撮ると、第4中足骨頸部に骨折を認めました。

9949b.jpgしかし、転位もなく、新しい骨(仮骨)もできています。

要するにすでに治っています。

骨折が治っているのに痛みが残っているのは、受傷後ずっと痛みを我慢していたからです。

痛みを我慢すると、神経が異常に興奮してしまい、骨折や捻挫などのケガそのものが治っても、痛みが残ってしまうことがあります。

このような痛みを慢性痛と言います。慢性痛になってしまうと、治療がとても難しくなってしまいます。

この骨折の場合、受傷後数日以内に受診してもらって、骨折部を外固定して、痛み止めを飲んでもらえば、すみやかに痛みは消え、慢性痛になることはなかったと思います。

とくに、女性の足の骨折や捻挫は慢性痛になりやすいので要注意です!

 

痛いときは我慢せず、すぐに治療に来てください。

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