2013.6.28 カテゴリー|トリガーポイント注射
物理療法とは、電気治療や温熱治療、マッサージや指圧、牽引や超音波などの物理的な方法による理学療法の一種です。
一般的に、診療所のリハビリ室や接骨院などで行われている治療のことです。
筋筋膜性疼痛症候群(MPS)について知る前
肩こりや腰痛や関節痛が、骨や軟骨の変形が原因だと思っていたころ
私は、こう思っていました。
「骨や軟骨の変形が痛みの原因なら、物理療法しても良くなるはずがない!」
なので、そのころは患者の治療のために物理療法を処方することは、ほとんどありませんでした。
実際に、物理療法で痛みがとれる患者さんがいることも知っていました。
しかし、物理療法をいくらやっても、痛みの原因である骨や軟骨の変形が治るわけがないので、意味がないと思っていたのです。
温めたり、もんだり、刺激したりで良くなるのは、筋肉の血流だけです。
なので、物理療法は筋肉痛にしか効かないはずです。
筋筋膜性疼痛症候群について勉強してから、この考え方は180度変わりました。
痛みの原因は、骨や年骨の変形ではなく、筋肉に出来たシコリ(トリガーポイント)だと知ったのです。
それなら、物理療法で筋肉の血流を良くしてやれば、痛みが良くなるはずだ。なるほどねと。
それからは、以前よりは物理療法を処方することが多くなりました。
でも、トリガーポイント注射したほうが治りが早いからね。
他の整形外科の先生に比べればかなり少ないと思います。
というか、ほとんどの整形外科の先生は、痛みの原因は骨や軟骨の変形だと思っているのに、物理療法の処方をしまくっているんだよなぁ。
自分のやっていることに矛盾を感じないのかな?
関連ブログ
筋筋膜性疼痛症候群(MPS)とは?
2013.6.28 カテゴリー|トリガーポイント注射
30代女性
半年前に、体操をしていて、背中がグキッとなってから、左首から背中の痛みと、左手の痺れが出現しました。
2週間様子をみても、症状が改善しないため、当院を受診しました。
触診の結果、左棘下筋にトリガーポイントを認めました。
「体操した時に、背中の筋肉を痛めてしまい、それが治らないので、痛みやしびれが出ています。痛めた筋肉にトリガーポイント注射という注射をすれば、早く良くなりますよ。」
と説明しましたが、注射を希望しなかったため、ハイペン(痛み止め)とノイロビタン(ビタミンB)を処方して、
「お薬で痛みがとれなかったら注射を打ちに来てください」と説明して、帰しました。
しかし、薬を飲んでも、痛みがとれなかったため、当院ではなく某総合病院の整形外科を受診しました。
そこでMRIを行い、脊柱管狭窄症と診断されました。
「首の骨や軟骨が変形して神経を圧迫していることによる痛みとしびれです。手術するほどではないので薬で様子を見ましょう。」
と言われ、数週間で痛みはとれたそうです。
患者さん本人は、私の説明より某病院の整形外科医の説明のほうが納得がいったようです。
確かに、「筋肉が原因でしびれる」と説明されるより「神経が圧迫されてしびれる」と説明されたほうが理解しやすいとは思います。
しかし「神経が圧迫されてしびれる」という説明には矛盾がたくさんあります。
ひとつは、神経が骨や軟骨で物理的に圧迫されているせいでしびれているなら、その圧迫を手術などで物理的に取り除かなければ治らないはずです。
しかし、実際には手術することなく症状が改善しています。
また、この患者さんは体操をしてギクッとなってから痛みとしびれが出ています。体操くらいの軽い負荷で骨や軟骨が急に変形して神経を圧迫したというのでしょうか?
ちょっとありえないですよね。
さらに、神経の圧迫されているなら、手根管症候群や肘部管症候群などの他の絞扼性神経障害と同様に、痛みではなく運動麻痺と知覚麻痺が出るはずです。
しかし、この患者さんには痛みがあり、運動麻痺や知覚麻痺はありませんでした。
例えば、重い鞄をずっと持っていると、腕がしびれてきます。
これは筋肉が原因のしびれです。
この患者さんは体操の時に棘下筋を痛めてしまったために左手にしびれが出たのです。
だから、薬を飲んだだけで手術をしなくても自然と治ったのです。
首の骨や軟骨が変形して神経を圧迫してしびれいるという説明は、矛盾だらけなのです。
(首で、脊髄神経そのものが圧迫されている場合は、両手両足に麻痺としびれが出ます。これは頸椎症性脊髄症という病気で、手術をしなければ治りません。)
2013.6.27 カテゴリー|骨折・捻挫の治療
むち打ち症とは、自動車の追突事故などによって、頭部が鞭の動きのように前後に過度の屈伸をし、首の組織に損傷を生じたために起こる症状のことです。
頭痛・肩凝り・手足のしびれ・めまい・耳鳴りなどの症状が出ます。
医学的には「頸椎捻挫」と呼ばれることが多いようですが、私はこの病名は正しくないと思っています。
捻挫とは関節周囲の靭帯の損傷をいいます。
むち打ち症は靭帯の損傷ではありません。
むち打ち症は、事故の衝撃による、首の周りの筋肉の損傷です。
わかりやすく言えば、「筋肉痛」です。
難しく言うと、「急性外傷性筋筋膜性疼痛症候群」です。
要するに筋肉の損傷なので、診断書などには「頸部筋挫傷」と書いています。
筋肉痛なので、3日目くらいに痛みがひどくなりますが、ほとんど患者さんは1週間くらいで痛みは無くなります。
受傷直後の痛みが悪化する前に、あらかじめ痛み止めやビタミンB群を飲んでおくと、あまり悪化しないで済みます。
筋肉痛なので安静にしていても意味がありません。
なるべく普通に動かしていたほうが、筋肉の血の巡りがよくなって早く治ります。
だから、仕事を休む必要はありません。
仕事を休んで、じっとしていると、1日中、痛みのことを考えてしまいます。そうすると、痛みのことが頭から離れなくなり、よけい痛みがひどくなってしまいます。(痛みの悪循環)
筋肉の損傷がひどかった人や、事故の精神的なショックや被害者意識が原因で痛みの悪循環に陥ってしまった人は、1週間では治らず、治療の継続が必要になります。
その場合、理論的には、筋肉が損傷した部位に出来たトリガーポイントにトリガーポイント注射を打つのが一番効くはずですが、事故の被害者でトリガーポイント注射を受けてくれる人は、ほとんどいません。
その代わりに、温熱療法を行います。だいたい3か月くらいでほとんどの人は痛みが楽になります。
半年たってもよくならない場合は、症状固定(これ以上治療してもよくならない状態)と診断され、後遺症の申請をして、自賠責保険での治療が中止されます。
自賠責での治療が中止されると、みんないつの間にか痛みが良くなってしまうようです。
治療中は被害者意識があるので、良くならなかった痛みも、治療が終わると被害者意識が薄れて気にならなくなるのです。
痛みとはそういうものです。
関連ブログ
交通事故の治療に長期間通う人
https://nishibori-seikei.com/blog/2012/11/post-117.html
交通事故の痛みは治療を中止すると治る?
https://nishibori-seikei.com/blog/2013/04/post-215.html
交通事故に遭うと後から痛くなるは迷信
2013.6.27 カテゴリー|医療に関する迷信
40代の女性
追突事故に遭い、後頸部に重いような痛みが出現し、某総合病院を受診しました。
レントゲン上異常なく、「頸椎捻挫いわゆるムチウチ」と診断されました。
担当医に、湿布が欲しいと要望したら、
「湿布じゃ痛みはとれないよ!スースーするだけで、気休めにしかならない!」
と説明され、出してもらえなかったそうです。
湿布じゃ痛みがとれないって、あんた。
自分で使ったことないのかしら?
というか、「痛みとは何か?」について、何もわかってないようです。
整形外科医としてマジで恥ずかしいよ。
追突による後頸部の痛みの原因は、事故の衝撃で、首の周りの筋肉が損傷されるからです。
わかりやすく言えば、「筋肉痛」です。
難しく言うと、「急性外傷性筋筋膜性疼痛症候群」です。
筋肉痛なので、ほとんどの場合2~3日後に痛みが悪化して、そのあと1週間くらいで自然と治ります。
現在処方されているシップには、痛み止め(NSAID)が配合されています。
この痛み止めが皮膚から筋肉に移行して、筋肉の痛みを改善します。
また、湿布にはスース―する成分(メントールなど)やビリビリする成分(カプサイシン)なども配合されています。
これらの成分には筋肉の血流を改善させる効果があり、やはり筋肉の痛みを改善します。
もし、これらの成分が全く効果が無いモノだったとして、湿布が気休めにしかならないモノだったとしても、それでも湿布には痛みをとる効果があります。
なぜなら、湿布にもプラセボ効果があるからです。
「湿布を貼ったから、これで痛みがよくなるはずだ。」という安心感が、痛みを改善させます。
私も、肩こりや腰痛がある時はすぐに湿布を貼ります。
貼れば大抵すぐに痛みが楽になります。
それでも治らない時はトリガーポイント注射を打ってもらえば、治ります。
関連ブログ
筋筋膜性疼痛症候群(MPS)とは?
https://nishibori-seikei.com/blog/2013/05/mps.html
プラセボ効果とは?
2013.6.25 カテゴリー|トリガーポイント注射
60代の男性
ゴルフが大好きなおじさんです。
また、体力づくりとダイエットのため、毎日ウォーキングを6㎞していました。
6年前、ゴルフ中に急に右臀部に激痛が出現しました。
テレビでトリガーポイント注射の特集を見て、当院を受診しました。
右臀部にトリガーポイントを認めたため、トリガーポイント注射をして、すぐに良くなりました。
1年半くらい前に、左臀部にも痛みが出現しました。トリガーポイント注射を2回打った後、治療に来なくなりました。
半年後に、再び、当院を受診しました。
前回受診した後、知人の勧めもあり某総合病院整形外科を受診し、そこで腰部脊柱管狭窄症と診断され、手術を受けたそうです。
手術後、痛みは改善し、一時ゴルフもできるようになりましたが、田植えの準備を手伝った後から、再び右臀部痛が出現しました。
手術医の診察を受けましたが、骨には問題がないと言われ、痛み止めと湿布を貰ったが、全然よくならなかったようです。
トリガーポイント注射を行い、一度はゴルフができるところまで回復しましたが、2か月後にまた痛みが悪化して、それ以後、再び治療に来なくなりました。
風のうわさで聞くところでは、
その後、あちこちの病院を受診して、様々な治療を受けたようですが、症状はよくならなかったようです。
そして、先月、某大学病院で2度目の手術を受けたそうです。
でも、手術後もあまり痛みはとれていないそうです。
この方の様に、腰の手術を何度も受けてもよくならない患者さんをMOB(multiply operated back)と呼びます。
MOBの患者さんは他にもたくさんいます。
なぜ、何度も手術をしても治らないのでしょう。
それは、そもそも必要のない手術をしているからです。
この患者さんは、ゴルフやウォーキングのやりすぎによる筋筋膜性疼痛症候群(MPS)でした。
トリガーポイント注射で症状が改善していたことからも、それは明らかです。
腰部脊柱管狭窄症ではなかったのです。
手術による儀式的効果と手術時の全身麻酔による筋弛緩効果で一時的に症状は改善しても、その効果が切れると再び痛くなってしまいます。
むしろ、不必要な手術を受けたことにより筋肉が損傷され、MPSは手術以前より悪化してしまいます。
痛みが悪化したのは、前回の手術が不完全だったからだろうと誤診され、また手術をうけます。
すると、MPSはさらに悪化して、どんどん悪くなっていきます。
これがMOBの正体です。
この患者さんも、ドクターショッピング(紹介状もなく勝手に複数の医師の診察を受けること)をせずに、ずっとトリガーポイント注射を続けていれば、今でもゴルフを続けていられた可能性があるのではないかと思います。
関連ブログ
筋筋膜性疼痛症候群(MPS)とは?