2013.8.02 カテゴリー|骨折・捻挫の治療
70代の女性
2か月くらい前から自然と右臀部痛が出現しました。
某病院で腰のレントゲンを撮り、「腰部脊柱管狭窄症」と診断されました。
腰の注射と痛み止めの点滴とマッサージによる治療を受けていましたが良くならず、そのうち、右脚の付け根にも痛みが出るようになりました。
そこで、骨盤のレントゲンを撮ってもらい、「骨盤骨折」と診断されました。
「骨盤がひどく折れているから、痛くなる前に派手に転んだはずだ」
と言われました。
しかし、転んだ記憶が全くないため、当院を受診しました。
受診時のレントゲン写真です。
確かに、恥骨と坐骨に骨折があります。
わかりづらいと思うので折れているところに青丸を付けてみました。
恥骨と坐骨に骨折があり、すでに仮骨が出来ています。
この骨折は、転倒などの外傷が原因ではなく、骨粗しょう症で骨が弱くなっている人が、歩いているだけで折れてしまった骨折です。
このような骨折を脆弱性骨折といいます。
脆弱性骨折による痛みには、骨粗しょう症治療薬(PTH製剤)テリボンがよく効くので、テリボン皮下注射を行いました。
翌日、受診した時には「痛みがいくらか楽になった」と喜んでいました。
2013.7.26 カテゴリー|トリガーポイント注射
50代男性
追突事故にあい、強い後頸部痛が出現し、そのまま某総合病院の救急外来に搬送されました。
そこで、レントゲンを撮り、骨には異常がなく、頸椎カラー固定と痛み止めの内服で様子をみるように言われました。
しかし、あまりに痛みが強いので、その日のうちに当院を受診しました。
下図の部位に強い圧痛を認めました。
本人はあまり乗り気ではありませんでしたが、説得してトリガーポイント注射を打ちました。
注射の後、強い痛みは消えて頸椎カラーが外せるようになりました。
しかし、数日後に再診した際に、再度注射を勧めましたが、拒否されました。
前にも書きましたが、交通事故の被害者でトリガーポイント注射を受けてくれる人は、ほとんどいません。
この方の様に、実際に注射の効果を実感した人でも、拒否します。
おそらく、被害者意識が邪魔をして注射のような侵襲的な治療を受容できなくしているのでしょう。
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むち打ち症の治療
2013.7.08 カテゴリー|トリガーポイント注射
シンスプリントは、下腿内側に位置する脛骨の下方1/3に痛みが発生する症状です。骨折した時のような激しい痛みではなく、鈍痛なのが特徴です。脛骨過労性骨膜炎(けいこつかろうせいこつまくえん)ともいいます。
中学生の長距離ランナーがかかることが多いです。
一般的に、ランニングのやりすぎによる脛骨の骨膜の炎症と考えられていますが、私は炎症ではなく、骨膜やその上にある筋肉に出来たトリガーポイントが原因だと考えています。
実際にトリガーポイント注射をすると痛みが改善します。
シンスプリントはランニングのやりすぎが原因なので、本来は休ませるべきなのですが、長期間休ませて一時的に痛みが消えても、また走り出すと痛みが再発することが良くあります。長期間休ませたからといって治る保証はないのです。
それなら、トリガーポイント注射を打ちながら、トレーニングを続けさせてあげたほうがいいんじゃないかなと思っています。
2013.7.02 カテゴリー|トリガーポイント注射
オスグット病とは
脛骨結節(お皿の下の骨)が徐々に突出してきて、痛がります。時には、赤く腫れたり、熱を持ったりします。休んでいると痛みが無くなりますが、スポーツを始めると痛みが再発します。
発育期のスポーツ少年に起こりやすいのが特徴です。
http://www.joa.or.jp/jp/public/sick/condition/osgood_schlatter.html
急性のオスグット病は、筋肉の牽引力により、脛骨結節の骨端線が損傷されることが原因です。
2週間ほど安静にすれば、痛みがとれます。
痛いのに我慢して運動を続けていると、痛みが慢性化します。
私は、慢性化したオスグット病は膝蓋腱の筋筋膜性疼痛症候群(MPS)だと思っています。
実際に、慢性化したオスグット病の子供の膝蓋腱の圧痛部にトリガーポイント注射をしてあげると、痛みが改善します。
スポーツを続けていると3か月後くらいにまた痛くなりますが、再度トリガーポイント注射をしてあげればまたよくなります。
注射などせずに、半年くらいスポーツを休んで完全に治したほうがいい、という考え方もあると思います。
しかし、中学校の部活は実質2年しかありません。
半年も休んだら、一緒に入った仲間から大きく遅れを取ってしまい、取り戻すことが出来なくなってしまいます。
オスグットの痛みはほとんどの場合、部活を引退したら治るのだから、それまでの間は注射をしながら、みんなと一緒に部活を楽しんだほうがいいと、私は思います。
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筋筋膜性疼痛症候群(MPS)とは?
2013.6.27 カテゴリー|骨折・捻挫の治療
むち打ち症とは、自動車の追突事故などによって、頭部が鞭の動きのように前後に過度の屈伸をし、首の組織に損傷を生じたために起こる症状のことです。
頭痛・肩凝り・手足のしびれ・めまい・耳鳴りなどの症状が出ます。
医学的には「頸椎捻挫」と呼ばれることが多いようですが、私はこの病名は正しくないと思っています。
捻挫とは関節周囲の靭帯の損傷をいいます。
むち打ち症は靭帯の損傷ではありません。
むち打ち症は、事故の衝撃による、首の周りの筋肉の損傷です。
わかりやすく言えば、「筋肉痛」です。
難しく言うと、「急性外傷性筋筋膜性疼痛症候群」です。
要するに筋肉の損傷なので、診断書などには「頸部筋挫傷」と書いています。
筋肉痛なので、3日目くらいに痛みがひどくなりますが、ほとんど患者さんは1週間くらいで痛みは無くなります。
受傷直後の痛みが悪化する前に、あらかじめ痛み止めやビタミンB群を飲んでおくと、あまり悪化しないで済みます。
筋肉痛なので安静にしていても意味がありません。
なるべく普通に動かしていたほうが、筋肉の血の巡りがよくなって早く治ります。
だから、仕事を休む必要はありません。
仕事を休んで、じっとしていると、1日中、痛みのことを考えてしまいます。そうすると、痛みのことが頭から離れなくなり、よけい痛みがひどくなってしまいます。(痛みの悪循環)
筋肉の損傷がひどかった人や、事故の精神的なショックや被害者意識が原因で痛みの悪循環に陥ってしまった人は、1週間では治らず、治療の継続が必要になります。
その場合、理論的には、筋肉が損傷した部位に出来たトリガーポイントにトリガーポイント注射を打つのが一番効くはずですが、事故の被害者でトリガーポイント注射を受けてくれる人は、ほとんどいません。
その代わりに、温熱療法を行います。だいたい3か月くらいでほとんどの人は痛みが楽になります。
半年たってもよくならない場合は、症状固定(これ以上治療してもよくならない状態)と診断され、後遺症の申請をして、自賠責保険での治療が中止されます。
自賠責での治療が中止されると、みんないつの間にか痛みが良くなってしまうようです。
治療中は被害者意識があるので、良くならなかった痛みも、治療が終わると被害者意識が薄れて気にならなくなるのです。
痛みとはそういうものです。
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